「真夏でも旧車に乗りたい!」着るクーラーは灼熱地獄を一変させるか? 猛暑日に確かめてみた

気温が40度に迫る真夏でもクーラーのない旧車を快適に乗りたい! そう思った筆者は今話題の水冷服を試してみることにしました。果たしてその結果は……?
「夏は暑いもの」とは昔から言われる定番の文句です。ただ、地球温暖化によるものなのか、都市化によるものなのかは定かではないものの、都市部では7~8月になると40度に迫る気温になることも最近では珍しいことではなくなりました。
この時期は、日中に屋外を少し歩くだけでも汗でビッショリ。カンカン照りの太陽に晒されているだけでも頭がボーっとしてきて気分が悪くなります。高温多湿の環境に長時間いると体温調整がうまく機能しなくなり、体内に熱がこもった状態となる、いわゆる熱中症になることがあります。とはいえ、熱中症をあまく見ては禁物で、ときに命を落とすことにもつながるので、大変危険です。
「真夏でも旧車に乗りたい!」着るクーラーは灼熱地獄を一変させ…の画像はこちら >>水冷服「アイスマンPRO-X」を身につけた状態でクーラーのない旧車を運転。窓を開けていると走行風が入るので水冷服との相乗効果で暑さによる不快感はかなり抑えられる(山崎 龍撮影)。
こうなると、仕事や買い物などの移動はエアコンの効いたクルマを使いたくなるのが人情でしょう。今やカーエアコンは自動車の必須装備と言っても過言ではありませんが、すべてのクルマに備わっているわけではありません。
軽トラなど商用車の廉価グレード、競技を前提にしたスポーツモデル、1980年代以前に製造された旧車、排気量50ccのミニカーなどには、依然としてエアコンのない車両が存在します。
かくいう筆者(山崎 龍:乗り物系ライター)が所有する1967年型アルファロメオ「1300GTジュニア」も、半世紀以上前のクルマであるため、エアコンやクーラーの類いはついていません。このクルマを手に入れた頃は、まだ若かったこともあり真夏でも窓を全開にして乗っていれば平気でしたが、アラフィフになった現在では体力的にしんどくなり、ここ数年は7~8月になるとアルファロメオは車庫で冬眠ならぬ“夏眠”させています。
しかし、古いクルマですからコンディションの維持を考えれば夏場でも定期的に乗ってあげたいところ。そこで最近話題の水冷服を手に入れて試してみることにしました。購入したのは山真製鋸の「アイスマンPRO-X」です。
「アイスマンPRO-X」に限らず水冷服の仕組みはおおむねどの製品も同じで、ベストの背部に凍らせたチャージボトルをセットしたら、そこに水を注ぎ入れ、専用バッテリーのスイッチをON。通電してポンプが駆動すると、ベストに仕込んだ樹脂製チューブの中を冷水が循環し、チューブが接した部分から身体を冷やすというものです。
電動ファンにより服と身体の間に風を循環させて涼しくする空冷服とは異なり、ハーネスなどを着用しても冷却効果が損なわることはありません。加えて、電動ファンなどないため、振動や騒音などが発生しないことも水冷服のメリットになります。
冷却効果はチャージボトルのサイズや製品の種類、外気温によっても違いがあるのでしょうが、筆者が購入した「アイスマンPRO-X」の場合は、セットに備わる標準のチャージボトル5.0(容量約1リットル)を使用して2~3時間程度。裏技として保冷剤を併用した場合は、30分程度効果を延長させることも可能です。バッテリーは満充電しておけば連続モードで12時間使用できるので、これについては保ち時間を気にする必要はないでしょう。
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筆者が購入した山真製鋸の「アイスマンPRO-X」。冷却持続時間は少なくなるが、クルマを運転する場合はオプションで用意される薄型のチャージボトル3.0(容量約600ml)を使用したほうが良いかもしれない(山崎 龍撮影)。
実際に水冷服を使った筆者の第一声は、「涼しい」ではなく「冷たい」というもの。凍らせたチャージボトルが背中に当たるので、そこでまず清涼感を感じますし、樹脂製チューブが仕込まれた脇の下や胸部も冷たくて気持ち良さ抜群です。
ただし、弱点としては、チューブの中を冷却水が通るので結露が生じることでしょう。服がびしょびしょに濡れるというほどではありませんが、チューブの通り道が湿っぽくなることは避けられません。あとは水や氷を含めると重量は2kgほどになりますので、人によっては身につけた際に重さを感じる可能性もあります。
では、気温36度の猛暑日の中、水冷服を着た状態で愛車のアルファロメオに乗ってみたらどうでしょうか。運転席に座ってまず違和感を覚えたのはチャージボトルが入ることで生じる背中の出っ張りです。
たとえるなら、荷物の少ないリュックサックを背負った状態で座席に座るようなものなので、いつものシートポジションのままだと、どうしても前屈みの姿勢になってしまいます。バックレストを少し倒せば問題ないのかもしれませんが、筆者の「1300GTジュニア」は運転席のバックレストの調整ダイヤルが壊れているので、少々窮屈な姿勢のまま運転することになりました。
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筆者が所有する1967年型アルファロメオ「1300GTジュニア」。この時代のアルファロメオは旧車にありがちな夏場のオーバーヒートとは無縁だが、クーラーを備えていないため、真夏に乗るにはなかなか辛い(山崎 龍撮影)。
水冷ベストを装着し、窓を全開にした状態で1時間ほどドライブしてみましたが、運転姿勢が窮屈なのを除けば、暑さによる不快感はかなり抑えられました。しかし、走行中は風が入ってくることによる相乗効果で暑さによる不快さは抑えられるものの、信号待ちで停車すると、ベストを着ていない部分は当たり前ですがやはり暑く、エアコンを完全に代替できるわけではありません。
とはいえ、水冷ベストを着ていない状況よりははるかにマシ。水冷服があるからといって、真夏の日中にエアコンのないクルマで積極的に出かけようとまではならないものの、どうしても乗らなければならないシチュエーションでは積極的に活用できるかも、とは思いました。

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