自民党総裁選が、連日メディアを賑(にぎ)わせている。本来、政治資金改革や政策論争の場であるべき総裁選が、世代交代をアピールする場にすり替えられた。実際、次期総裁は小泉進次郎、小林鷹之という40代同士の一騎打ちになりそうだ。
なぜ無名の小林鷹之が登場したのか。私は、「高市早苗潰し」だと考えている。候補者のなかで唯一、緩和策を掲げる高市早苗は、財務省にとって危険な存在だ。総裁選に最初に名乗りをあげた青山繁晴氏と合流すれば、総裁の座を射止めるかもしれない。ただこの2人は、タカ派だ。その保守票を奪うために、財務省は小林鷹之を推したのではないか。同時に小林鷹之は、原発の新増設を容認する政策も掲げる。原発利権に群がる政治家にとっても、都合がいい。
一方、小泉進次郎の財政政策は未知数だ。原発についても、父親の影響で全廃を言い出しかねない。だから、とりあえず小林をメインで推進する。もしかすると国民人気のある小泉が勝つかもしれないが、そうなっても、大きな問題は生じない。
なぜなら次期総裁は政治資金問題をうやむやにし、10月の総選挙で自民党が勝利するための茶番劇に主演する「ワンポイント・リリーフ」に過ぎないからだ。自民党は、たっぷりと茶番劇を見せるために、選挙期間も過去最長の15日間に設定した。
ただ、そうした自民党や財務省の思惑通りに事態が進むとは限らない。進次郎の父親である小泉純一郎も、2001年の総裁選の際には、泡沫候補だった。しかし、総理・総裁に就任すると、強力なリーダーシップを発揮して、長期政権を築いた。人事権を握る総理・総裁は、やる気になれば、相当なことができる。若い総裁が、長老たちを「抵抗勢力」と切り捨てることができるか。それが今後の焦点だ。(経済アナリスト・森永 卓郎)