イタリア海軍が誇る世界屈指の現役ベテラン船が2024年8月25日、来日しました。めったに太平洋には顔を見せないイタリア海軍の帆船、じつは「世界で最も美しい船」「海の女王」などと呼ばれているそうです。
イタリア海軍の練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」が2024年8月25日午後、東京国際クルーズターミナルに接岸しました。王政時代のイタリアで誕生した同船は現役のイタリア軍艦のなかでは最古参。もちろん日本に寄港するのは初めてです。
ちなみに3日前の22日には、同海軍の空母「カヴール」とフリゲート艦「アルピーノ」も海上自衛隊横須賀基地に入港しており、新旧両方のイタリア艦が日本で観察できるという、またとないチャンスになっています。
「世界で最も美しい軍艦」東京に来た! 寄港いつまで? 無料で…の画像はこちら >>海上自衛隊の音楽隊(手前)が演奏するなか、東京国際クルーズターミナルに接岸したイタリアの練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」(深水千翔撮影)。
「アメリゴ・ヴェスプッチ」は、第2次世界大戦が始まる前、いわゆるムッソリーニ政権期の1931年6月に、イタリア王立海軍(当時)の練習艦として就役しました。
横浜・みなとみらい地区に保存されている日本の帆船、初代「日本丸」が竣工したのは1930年3月なので、ちょうど同年代ということになります。間近で見ると両船共に今や貴重なリベット打ちで接合されているのわかるでしょう。しかし「日本丸」は1984年に退役し保存船となった一方、「アメリゴ・ヴェスプッチ」はイタリア海軍を代表する船として今も現役で使われ続けています。
イタリア海軍も、自軍を象徴する船として長く使い続けることを見越して、2000年以降に近代化改装を行い、ディーゼル発電機と電気モーターを組み合わせた電気推進システムを搭載。マストへのLED照明や衛星通信システムの導入など、現代の航海に必要な最新の技術を取り入れるなどしています。
「アメリゴ・ヴェスプッチ」を象徴するデザインとしては、黒い船体に描かれた2本の白い帯です。これは戦列艦の砲列甲板をイメージしたもので、船首には名称の由来となった著名な探検家アメリゴ・ヴェスプッチをかたどった金メッキブロンズ像を配置しているほか、純金箔で覆われた木製の船首フリーズと船尾のアラベスクが船を彩っています。18世紀から19世紀にかけて活躍した戦列艦を参考にした優雅で荘厳なデザインから、「世界で最も美しい船」「海の女王」と紹介されたりもします。
通常、「アメリゴ・ヴェスプッチ」はリヴォルノ海軍兵学校の1年生やフランチェスコ・モロシーニ海軍学校の学生などの訓練に使われているため、航行する海域は主に地中海や北ヨーロッパ、大西洋に限られていますが、今回はなんと20か月にわたる世界一周航海を行っており、その途次に来日したという形です。
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東京国際クルーズターミナルに接岸したイタリアの練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」(深水千翔撮影)。
同船は8月30日まで東京国際クルーズターミナルに留まります。同ターミナルでは「ヴィラッジオ・イタリア」と称してイタリア海軍軍楽隊による音楽演奏やイタリア海軍の潜水艦を描いた映画『コマンダンテ』の上映といったイベントも開かれます。
なお、同ターミナルは8月25日の午前中までドイツ海軍のフリゲート「バーデン=ヴュルテンベルク」と補給艦「フランクフルト・アム・マイン」が接岸していましたが、練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」と入れ替わるように出港しています。