北朝鮮の監視以外にも! ドイツ艦隊はるばる来日のワケ 驚きの「日独伊」共同訓練その中身

ドイツ軍艦が3年ぶりに東京港に寄港しました。ただ、前回と違うのは大型補給艦が加わり、艦隊を組んで来航したこと。しかも、このあと日本近海で5か国による一大共同訓練も予定されているそうです。
ドイツ海軍のフリゲート「バーデン=ヴュルテンベルク」と補給艦「フランクフルト・アム・マイン」の2隻が2024年8月20日朝、東京港へ入り東京国際クルーズターミナルに接岸しました。
ドイツ海軍艦艇の東京寄港はフリゲート「バイエルン」以来3年ぶり。同日開かれた歓迎式典で在日ドイツ大使館のペトラ・ジグムント次期大使は、このたびの来日に際し、日本とドイツだけでなくイタリア、フランス、アメリカの5か国艦船が集結して多国間演習を行う予定であることを明らかにしました。
北朝鮮の監視以外にも! ドイツ艦隊はるばる来日のワケ 驚きの…の画像はこちら >>東京港に姿を見せたドイツ海軍のフリゲート艦「バーデン=ヴュルテンベルク」(深水千翔撮影)。
ジグムント次期大使は、式典時のあいさつで自衛隊とドイツ軍が物資などを融通する「物品役務相互提供協定(ACSA)」についても言及し、「両国の協力をさらに強化するもの」と評価。「ルールに基づく国際秩序を維持するためには、日本との協力はこれまで以上に重要だ。同時にインド太平洋地域における私たちの関与は、欧州における安全保障のコミットメントの高まりに組み込まれている」と話しました。
ドイツ大使館の担当者は「バーデン=ヴュルテンベルク」と「フランクフルト・アム・マイン」の来日は、ドイツ海軍が行うインド太平洋方面派遣「IPD24」の一環で、「親善訪問」と「各国との合同演習」、そして「北朝鮮への制裁監視」という3つの目的があると説明しています。
「フランクフルト・アム・マイン」は今年(2024年)5月にヴィルヘルムスハーフェンを出港。一方の「バーデン=ヴュルテンベルク」はUNFIL(国連レバノン暫定軍)の海上任務部隊として、昨年10月から今年4月まで東地中海で行動しており、スペインのロタ海軍基地でIPD24に向けた準備を行った後、大西洋で「フランクフルト・アム・マイン」と合流。この2隻で「インド太平洋派遣部隊」を編成し、はるばる極東まで来ました。
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フリゲート艦「バーデン=ヴュルテンベルク」の甲板に整列した乗組員(深水千翔撮影)。
「ドイツ海軍の日本における新たなプレゼンスは、我々の安全保障政策における関係の継続的な拡大の一環だ。相互運用性を強化するため海上自衛隊との合同演習を実施しているほか、ドイツ、日本、フランス、アメリカ、イタリアの艦船が参加する多国間演習も予定している」(ジグムント次期大使)
国連安保理決議により禁止されている北朝鮮籍船の瀬取り(洋上での船舶間の物資の積替え)を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動は、海自横須賀基地に寄港していたカナダ海軍フリゲート「バンクーバー」やニュージーランド海軍の補給艦「アオテアロア」なども実施しており、これにヨーロッパから遠征してきたドイツ艦隊も加わることになります。
ジグムント次期大使は「ドイツは平和的紛争解決や国際法順守の原則などが欧州だけでなく、インド太平洋地域でも維持されることに強い関心を持っている」と述べつつ、「ドイツのフリゲート艦は国連の対北朝鮮制裁の海上監視に参加している。北朝鮮の核ミサイル開発に対する国連制裁を順守することの中心にあるのは、国際的なルールを守ること。朝鮮半島の情勢は日本だけでなく、他国でも懸念されている」と瀬取り監視の意義について強調しました。
また、ドイツ第2艦隊司令官のアクセル・シュルツ准将は「この地域におけるドイツ海軍のコミットメントを可視化することによってルールに基づく国際秩序を強化し、そして同盟・同志国との絆を深めるとともに信頼に基づく協働を行うことで、あらゆる可能性が考慮される国際的な対立を事前に防ぐのが我々のミッションだ」と述べました。
さらに「ドイツと日本は約1万1000海里(約2万400km)離れているものの、海上自衛隊とドイツ海軍は緊密な連携をし続けている。ハワイ沖で行われたRIMPAC(環太平洋合同演習)では護衛艦「はぐろ」を私たちの艦隊に迎えており、演習を通じて多くの知己を得ることができた。また、私たちが東京で皆様とお会いしているあいだ、練習艦「かしま」と「しまかぜ」がドイツ本国に向けて航行しており、ヤン・カーク海軍総監も練習艦隊の出迎えを楽しみにしている」と両国の交流について触れました。
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東京国際クルーズターミナルの岸壁に整列したドイツ海軍将兵(深水千翔撮影)。
日独伊仏米の5か国による多国間演習は日本の周辺海域で行われる計画で、それに合わせて「バーデン=ヴュルテンベルク」と「フランクフルト・アム・マイン」は25日午前に出港する予定です。なお、22日にはイタリア海軍の空母「カブール」とフリゲート「アルピーノ」が海自横須賀基地に寄港していることから、これらイタリア艦と共同訓練を行うと見てよいでしょう。
なお、前出のドイツ艦2隻と入れ替わりで25日から東京国際クルーズターミナルに寄港するのは、2隻が太平洋上で追い越したイタリア海軍の練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」です。

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