[社説]国、安和事故で県へ要請 安全確保へ協議深めよ

名護市の安和桟橋で起きた死傷事故を巡り、沖縄防衛局が県に対し、安全対策を講じるよう要請した。
辺野古の埋め立て用土砂が運搬される桟橋の出入り口で6月、車道に出たダンプカーが民間警備会社の男性と、抗議活動中の女性を巻き込んだ事故が発生。この事故で男性は死亡、女性は重傷を負ったのである。
新基地建設に関する交通死亡事故は初めてだ。あってはならないことであり、付近の安全策の見直しを急がなければならない。
防衛局は今回、事故原因について「警備員の制止を聞かず、車道上に出た」として市民側に問題があったとの見解を示した上で、道路管理者の県に対し出入り口へのガードレールの設置などを求めた。
これに対し市民団体側は「一方的に責任を押し付けるものだ」と反論している。
ガードレールの設置について県はこれまで「歩行者の横断を制限する」として設置を認めていない。
尊い命が失われたという事実は重い。二度と事故が起きないよう、運搬作業を止めた状態で、県と防衛局が安全策についてしっかりと話し合う必要がある。
事故から1カ月半。防衛局は同桟橋と、同じく辺野古への埋め立て用土砂を運搬する本部町の本部港塩川地区での作業を中断している。
一方、警備の在り方や作業の安全管理についてはいまだに「精査中」とする。
これまでどのような安全策が取られてきたのか。なぜ事故が起きたのか。県に対策を押し付けず事業の責任者として検証すべきだ。
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安和桟橋では2018年12月から抗議が続く。市民が桟橋の出入り口でデモ行進することで、ダンプカーの出入りを遅らせ、工事の進捗(しんちょく)を遅らせるという手法を取ってきた。
しかし、ダンプカーの労働者団体からは、現場ではこれまでと異なり一度にダンプが2台出るなど「無理な運行があった。事故は起こるべくして起きた」との指摘もある。
新基地建設を巡っては、今月から大浦湾側の軟弱地盤の改良工事が本格化する予定だ。
作業を急ぐため、土砂の運搬効率を優先させるような前のめりの対応が取られていたとしたら問題だ。
防衛局は、少なくとも抜本的な安全策が確立されるまで、作業を再開させるべきではない。
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安和桟橋と本部港塩川地区に限らず、辺野古のキャンプ・シュワブゲート前でも抗議の市民と警備員の衝突は続いている。
平和的なデモや座り込みなどの集会は市民の権利である。抗議活動を「妨害行為」と見なして敵視したり、規制しようとしたりするほど現場の緊張は高まる。
抗議が続く背景には、県民の納得や理解もないままに建設を強行する国の姿勢があることを忘れてはならない。
このまま強行すれば、事故は再び起きる恐れがある。拙速に進めるのではなく県と真摯(しんし)に向き合うべきだ。

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