男性職員は職場で育てた野菜の苗を無断で持ち出し、自らを「生産者」として、JA(農協)に出荷・販売していた。
神戸市教育委員会は8日、勤務する「市立神出自然教育園」から野菜の苗を盗み、販売していたとして、会計年度任用職員の男性(67)を懲戒免職処分にした。
男性職員は今年2月以降、園で栽培したトマト、キャベツ、トウモロコシ、唐辛子の苗をポットのまま持ち帰り、近所の農産物直売所で販売。さらに自宅から持ち込んだ小松菜とチンゲンサイ、サラダ菜の種を園で育て、約2カ月後、成長した苗のポットをJAに出荷。直売スペースに並べ、販売していた。同園では農産物の栽培や収穫、料理体験などができる。
4月、園で植物の手入れをしていた別の職員が、明らかに多くの苗が栽培されていることを不審に思った。そこで苗のポットの土の部分に糸を入れて目印にし、出荷先を追跡。地元のJAで販売されている複数の種類の野菜の苗を確認したところ、生産者の欄に男性職員の名前が記載してあり、不正が発覚した。
「最初に気づいた職員は元野菜担当で男性職員の前任者だったためおかしいと思った。男性職員はもともと自宅でも農業をしていて、収穫した野菜をJAで販売していた。ただ自宅で野菜を育てるには量に限界があることから、職場で育てた苗を販売しようと思い付いたそうです」(市教委教職員人事課担当者)
本人も市の聞き取り調査に対し、「収入目的だった」と認めている。
■自身が生産者となり農協に「出荷」
男性職員は同僚職員に種まき、水やりの作業などを手伝わせ、私的に施設を使用。自身が種を持ち込み、育てたもの、園から持ち出した苗を含め、すべて生産者として偽り、出荷・販売していた。市は少なくともトマトの21株分3115円相当が販売されたことは確認したが、全部は把握できていない。
「栽培の過程でダメになる苗もあり、そういった場合に備え、差し替えられる苗を予備として保管しています。男性職員は本来なら使われないまま、余ることが多い予備の苗を持ち帰っていました。余れば廃棄処分になるので、黙って持って帰ってもバレないだろうという判断だったようです」(教職員人事課担当者)
人気野菜の苗とはいえ、そこまでして「小銭」を稼ぎたかったのか。