エルニーニョ監視速報 冬にかけてラニーニャ現象発生の可能性

エルニーニョ監視速報 冬にかけてラニーニャ現象発生の可能性の画像はこちら >>
気象庁は、今日9日「エルニーニョ監視速報」を発表しました。それによると、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態になっているとみられます。今後、冬にかけて平常の状態が続く可能性もありますが(40%)、ラニーニャ現象が発生する可能性の方がより高くなっているとのことです(60%)。
7月の実況
7月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は-0.1℃で、6月の-0.2℃からわずかに上昇し、基準値に近い値でした。太平洋赤道域の海面水温は西部で平年より高く、東部で平年より低くなりました。太平洋赤道域の海洋表層の水温は、中部から東部で平年より低くなりました。太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は平年より活発で、中部太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)は平年より強くなりました。このように、ラニーニャ現象時の特徴を示す指標が一部で見られますが、総合的にはエルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態であると考えられます。
今後の見通し
実況では、太平洋赤道域の中部から東部に海洋表層の冷水が見られます。大気海洋結合モデルは、太平洋赤道域の西部から中部で貿易風が強まるとともに、中部から東部の冷水がさらに強まり、冬にかけてエルニーニョ監視海域の海面水温が基準値に近い値か基準値より低い値で推移すると予測しています。以上から、今後、冬にかけて平常の状態が続く可能性もありますが(40%)、ラニーニャ現象が発生する可能性の方がより高くなっています(60%)。
西太平洋熱帯域及びインド洋熱帯域の状況
【西太平洋熱帯域】7月の西太平洋熱帯域の海面水温は、基準値より高い値でした。今後、冬にかけて基準値より高い値か基準値に近い値で推移すると予測されます。【インド洋熱帯域】7月のインド洋熱帯域の海面水温は、基準値より高い値でした。今後、秋の間に基準値に近づき、冬には基準値に近い値で推移すると予測されます。
ラニーニャ現象とは?

上記にもまとめた通り、秋にかけて平常の状態が続くよりも、「ラニーニャ現象」が発生する可能性の方が高くなっています(60%)。「ラニーニャ現象」が発生するのは、太平洋赤道域です。このあたりは貿易風と呼ばれる東風が吹いているため、通常、暖かい海水は西側のインドネシア付近に吹き寄せられる一方、東側の南米沖では、海の深い所から冷たい海水が湧き上がっています。ただ、何らかの原因で東風が強まると、西側の暖かい海水が厚く蓄積するとともに、東側に湧き上がる冷たい海水の勢いが強まり、南米沖の海面水温が通常より低くなります。このように、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より低くなり、その状態が1年程度続く現象を「ラニーニャ現象」と呼びます。「ラニーニャ(La Nia)」とは、スペイン語で女の子という意味で、「神の子キリスト」を意味する「エルニーニョ」の反対現象ということから名づけられました。「ラニーニャ現象」は海で起こる現象ですが、発生すると大気にも影響を及ぼし、世界各地で気圧配置などがいつもとは違った状態になります。雨や雪の降りやすい場所や、風の吹き方、気温などが変わってくるのです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする