ホンダ「シビック」のMT専用グレード「RS」に試乗! 通常版と何が違う?

ホンダは2024年秋に「シビック」のマイナーチェンジを実施する。注目はマニュアルトランスミッション(MT)専用グレード「RS」の登場だ。RSと普通のシビックは何が違うのか。このご時世にMT専用グレードを買う意味とは? 通常版とRSを乗り比べて考えた。

RSの内外装はシャープさマシマシ!

新型RSのエクステリアは通常版に比べてシャープさが増している。具体的には、通常版ではメッキ加飾だったヘッドライトリング、ドアのサッシュやモールディング、ドアミラー、シャークフィンアンテナ、エキゾーストパイプ、アルミホイールとナットなどをブラックアウト。かなり精悍な印象だ。

「爽快フェイス」と呼ばれるスリーク形状なフロント部は、先端のエッジを立たせることで、より鋭い顔つきの「ニュー爽快フェイス」に。フロントグリルとリアハッチにはレッドのRSエンブレムを装着する。全体としてはアンダーステートメントながら、クルマ好きにはグッとくる迫力を醸し出している。

インテリアは基本的に現行と共通だが、エアコンルーバーにレッドの縁取りを施し、さりげなく差別化を図っている。よく見ると、現行シビックのMTのシフトノブがほぼ球形だったのに対して、RSのそれは操作がしやすい楕円形に変わっている。

RS→現行MT→RSの順で乗ってみた

試乗の舞台は伊豆にある「自転車の国サイクルスポーツセンター」。1周5kmのワインディングコースを3周ずつ、RS→現行MT→RSの順に乗って違いを確認した。RSが装着するタイヤはスポーティーなグッドイヤー「イーグルF1」。エンジンは1.5L直列4気筒ターボ(スペックは非公表)で現行型と同じだった。

まずはRS。握りやすい形状のシフトノブで1速、2速、3速とシフトアップしながら右コーナーの登り坂を過ぎ、いよいよ次のコーナー手前でアクセルを戻し、ブレーキングを入れつつ初めてのシフトダウンを敢行する。クラッチを踏むや否や「ブォンッ!」と回転が上がり、3速から2速へのダウンがスムーズかつ一瞬で決まる。次のコーナーに向かってシフトアップと加速、そして減速しながらクラッチを切ると、その瞬間にまたもや「ブォン!」と回転合わせをしてくれるではないか。そのタイミングに合わせてダウンシフトしてクラッチをつなぐ。まさにヒール&トゥのような回転合わせを自動で行ってくれる「レブマッチシステム」。すばらしい。

次に乗った現行MTモデルで同じコーナーを通過してみると、シフトダウンがうまく決まらず、ギクシャクしてしまう。実は筆者は3速から2速へのダウンが苦手。ヒール&トゥも上手にできないので、ダブルクラッチで乗り切ることに。一度のシフトダウンで2回クラッチを踏むことになるので時間がかかるし、左足が疲れる。自分がこんなに下手だったとは……。

再びRSに乗り、今度はスポーツモードを試してみる。すると、シングルマスの軽量フライホイールを採用したことよって、エンジン回転とアクセルの踏み具合がピタリとマッチしていること(説明によるとマッチング度は30%アップ)、アクセルオフ時のエンジン回転落ちが鋭くなったこと(同50%アップ)などがわかるようになってくる。ブレーキング時の確実な剛性感(インチアップによるブレーキサイズ大径化)が足裏に伝わってくるものよい。

レブマッチシステムによるシフトのアップ&ダウンがスムーズに行えるという楽しさは、剛性が上がったサスペンションとスパッと切れるハンドリングの速さ・正確性によって、ハイスピードのワインディングのみならず、例えば街中の曲がり角でも感じられるはずだ。RSの完成度の高さを確信できた試乗だった。

まあ、個人的には、こうしたスポーツ走行を楽しめるシビックとしては、もう少しサイズが小さなものが理想だ。とはいえ、アメリカではコンパクトなスポーティーモデルとしてたくさん売れているのだから、問題ないのだけれど。

試乗会では、純正アクセサリーのフロントバンパーガーニッシュとウイングタイプのテールゲートスポイラーを装着したRSを見ることができた。このスポイラー、2023年の「東京オートサロン」で展示したコンセプトモデルに装着したところ、来場者に好評だったため、それを基に新開発したのだという。見るとウイングの裏側にはギザギザの出っ張りが。これにより、日常の速度域でも効果が体感できる“実効空力”が実現できたとのことだ。「タイプR」に少しでも近づきたいというオーナーにはぴったりの装備だろう。

あとは、まだ発表されていないRSの価格が気になるところ。タイプRが500万円をわずかに切り、現行ガソリンMTの上級モデルが約359万円であることを考えると、その間の400万円ちょっと、というあたりか。発売が楽しみだ。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら

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