在宅看取りの後悔ゼロを目指して。介護従事者が知っておきたい現状

在宅看取りとは、病院や施設ではなく、自宅で最期を迎えることを指します。近年、高齢化社会の進展とともに、在宅看取りへの関心が高まっています。しかし、実際の在宅死亡率は依然として低く、多くの課題が残されています。
厚生労働省の人口動態統計によると、2022年の死亡場所の内訳は以下の通りです。
この数字からわかるように、日本では依然として病院での看取りが主流となっています。しかし、在宅医療の需要は着実に増加しています。厚生労働省の社会医療診療行為別統計によると、2019年の訪問診療件数は795,316件/月、往診件数は141,541件/月に達しています。
この傾向は、高齢者本人の希望とも一致しています。介護保健施設の入所者を対象とした調査では、自施設や自宅での看取り・療養を希望する人が一定数いることが分かっています。
これらのデータは、在宅看取りへのニーズと同時に、その実現に向けた課題も示しています。介護従事者として、これらの現状を理解し、適切なサポートを提供することが求められています。
在宅看取りを選択する理由は様々ですが、主なメリットとデメリットを理解することが重要です。
メリット
デメリット
これらのメリットとデメリットを十分に理解した上で、本人と家族の状況に応じて在宅看取りを選択することが重要です。介護従事者は、これらの点を踏まえて適切な助言と支援を提供する必要があります。

メリットデメリットを理解した上で支援をする必要がある
在宅看取りを選択する際、家族が抱える不安や課題は多岐にわたります。介護従事者として、これらの不安や課題を理解し、適切なサポートを提供することが重要です。
医療面の不安
介護負担に関する不安
経済的な不安
心理的な不安
社会的な課題
これらの不安や課題に対して、介護従事者は以下のような支援を提供することが求められます。
在宅看取りに関する家族の不安と課題は、個々の状況によって異なります。それぞれの家族の状況に応じたきめ細かなサポートを提供し、後悔のない在宅看取りの実現を支援することが重要です。
在宅看取りの要となる在宅医の選定は非常に重要です。選定の際には、24時間対応が可能であるか、在宅看取りの経験が豊富であるか、本人・家族とのコミュニケーションが良好であるか、そして他の医療機関や介護サービスとの連携体制が整っているかを考慮しましょう。
訪問看護も在宅看取りにおいて重要な役割を果たします。訪問看護ステーションを選択する際は、24時間対応が可能であるか、看取りの経験が豊富であるか、医療処置の対応範囲はどの程度か、そして緊急時の対応体制はどうなっているかを確認することが大切です。
ケアマネージャーは、医療・介護サービスを調整する重要な役割を担います。ケアマネージャーを選ぶ際は、在宅看取りの経験や知識が豊富であるか、多職種連携のコーディネート能力があるか、そして家族の希望を十分に聞き取り、反映できるかを確認しましょう。
また、状況に応じて、訪問介護(ホームヘルパー)、訪問入浴、短期入所生活介護(ショートステイ)、通所介護(デイサービス)、福祉用具貸与・購入などのサービスの利用を検討しましょう。
これらのサービスを利用する際は、本人の状態や家族の状況に応じて、柔軟にサービスを組み合わせることが大切です。医療・介護サービス提供者間の情報共有を徹底し、家族の負担軽減と本人のQOL向上のバランスを考慮することも忘れてはいけません。

家族の負担軽減と本人のQOL向上のバランスを考えることが重要
在宅看取りを円滑に進めるためには、家族間での適切な役割分担と円滑な意思疎通が不可欠です。介護従事者は、家族をサポートする際にいくつかの重要な点に注意を払う必要があります。
まず、定期的な家族会議の開催が重要です。これらの会議では、本人の意思の確認と共有、現在の状況と今後の見通し、各家族メンバーの役割と負担、医療・介護サービスの利用状況と今後の方針、そして経済的な問題や今後の対応について話し合うことが大切です。
次に、主介護者の決定と支援体制の構築が必要です。主介護者の役割と責任を明確にし、サブ介護者の設定と役割分担を行います。遠方の家族も含めた支援体制を構築し、レスパイトケアを計画的に利用することで、主介護者の負担を軽減することができます。
重要な決定を行う際のプロセスを事前に確立しておくことも大切です。誰が最終決定権を持つか、どのような場合に家族会議を開くか、意見が分かれた場合の調整方法、本人の意思を尊重するための仕組みなどを決めておきましょう。
最後に、家族間での心理的サポートの重要性を認識し、実践することが大切です。互いの気持ちを理解し尊重する姿勢を持ち、定期的な声かけや感謝の表現を行います。ストレス解消法を共有し、必要に応じて専門家のカウンセリングを利用することも効果的です。
介護従事者は、これらの点を踏まえて家族をサポートし、円滑な在宅看取りの実現を支援することが求められます。特に、家族間の意見の相違や葛藤が生じた際には、中立的な立場から適切なアドバイスを提供し、家族の和を保つ役割を果たすことが重要です。
適切な在宅環境の整備と必要な医療機器・介護用品の準備も重要です。
居室の整備
衛生環境の整備
必要な医療機器の準備
介護用品の準備
緊急時対応の準備
コミュニケーション支援ツール
家族に対して、これらの環境整備や機器・用品の準備について、適切なアドバイスを提供することが求められます。また、定期的に環境や機器の状態を確認し、必要に応じて調整や更新を行うことが重要です。

福祉用具についてのアドバイスをすることも重要
在宅看取りの過程では、様々な後悔が生じる可能性があります。主な後悔の種類としては、医療面、ケアの質、時間の使い方、家族関係、経済面、そして意思決定に関するものが挙げられます。
医療面では症状管理の不十分さや治療法の選択に関する迷いが、ケアの質では介護の十分さや本人の希望への対応が後悔の原因となることがあります。
時間の使い方に関しては、一緒に過ごす時間の不足や最期の言葉を聞き逃したことなどが後悔につながります。家族関係では、協力体制の不十分さや意見の相違が問題となることがあるほか、経済面では費用の使い方や経済的負担に関する判断が後悔の種となる可能性があります。
意思決定に関しては、本人の意思の尊重や重要な決定の適切さについて後悔が生じることも。これらの後悔の根本的な原因には、知識不足、コミュニケーション不足、準備不足、そして家族間の調整の難しさなどが挙げられるでしょう。
在宅看取りにおける後悔を最小限に抑えるためには、介護従事者が家族に対して以下の3つの心構えを持つよう指導することが重要です。
1. 「完璧」を求めすぎない
在宅看取りにおいて、すべてを完璧に行うことは不可能です。むしろ、「できる範囲で最善を尽くす」という心構えが大切です。
2. オープンなコミュニケーションを心がける
家族間、そして医療・介護専門家との間で、常にオープンなコミュニケーションを保つことが重要です。
3. 「今」を大切にする
先のことばかり考えるのではなく、「今」この瞬間を大切にする心構えが重要です。
これらの心構えを持つことで、在宅看取りの過程で生じる後悔を軽減し、より充実した看取りの時間を過ごすことができます。
介護従事者も、家族がこれらの心構えを実践できるよう、継続的なサポートと励ましを提供することが重要です。
在宅看取りは決して容易なプロセスではありませんが、適切な準備と心構えがあれば、後悔の少ない、充実した看取りの時間を過ごすことができます。介護従事者は、これらの知識と経験を活かし、家族に寄り添いながら、最善の在宅看取りのサポートを提供することが重要です。

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