いよいよ7月27日、登録の審議が行われる見通しの“佐渡島の金山”。登録実現を信じ、地元では観光受け入れ体制の整備へ着々と準備が進んでいます。
悲願達成に向け、運命の世界遺産委員会開幕を控えた7月15日。
構成資産の一つ、相川鶴子金銀山のお膝元・佐渡市相川地区では新たな宿泊施設のオープニングセレモニーが開かれていました。
開業したのは「NIPPONIA佐渡相川金山町」。
【記者リポート】
「入口、腰をかがめながら入ると客室になっています。梁や土壁が歴史・趣を感じさせるここは、もともと窯元の蔵だった場所です」
古民家などを改修したその客室は梁や土壁など、もともとの建物を生かし、地域の昔ながらの生活を感じられるつくりとなっています。
運営するのは相川地区の住民などでつくるまちづくり会社「相川車座」です。
【相川車座 雨宮隆三 社長】
「時代の変遷と共に繁華街が移ってきた。ここに客室も分散させることで街を楽しんでほしい、街ごと楽しんでほしいというのが僕らの狙い」
施設は地域に点在する4棟の空き家を活用したいわゆる“分散型ホテル”で、どの棟もそれぞれ地域の生活に溶け込んだ雰囲気を味わえるのが特徴です。
佐渡金山の世界遺産登録を見据えながら、金山だけではない相川地区の街の魅力を知ってほしいとの思いが込められています。
【相川車座 雨宮隆三 社長】
「400年前に金山が発見されて、5万人~10万人もの人が住み、培われてきた歴史・文化芸能。これを100年先も続くように、一つ一つつないでいくような、そんな街づくりを続けていきたい」
一方、観光の受け入れをめぐっては懸念も。
佐渡市は島内の年間の宿泊者数について、去年の延べ32万2000人から世界遺産に登録された場合、今年は2割増え、38万6000人になると試算しています。
数字上は現状の宿泊施設の数で賄えるとしますが…
【観光客】
「宿を取るのが大変だった」
【観光客】
「レンタルバイクも借りられなかった。(より)借りにくくなっちゃうのでは。世界遺産になっちゃうと」
島内では新型コロナウイルス禍で大型ホテルの廃業もあり、すでにハイシーズンでは宿のほか、レンタカーなど二次交通も不足の声が聞かれます。
一方、観光客が減る冬の時期などを考えると、大型の宿泊施設を新たに整備することは容易ではありません。
こうした中、市内では客室数は多くなくとも特色を持ち、質の高いサービスを売りにする施設をつくる動きが活発になっていて、観光関係者はそうして客の満足度を上げることが口コミの広がりやリピータの増加による持続可能な観光地につながると歓迎します。
【佐渡観光旅館連盟 本間東三夫 会長】
「活発。新しい民泊施設もどんどんできて変わっているし、新しい店もできている。若い人たちがどんどんパワーを出してやっているのでいいのでは」
また、二次交通をめぐっては、一般のドライバーが観光客などを乗せるライドシェアの実証調査が26日にスタート。
さらに佐渡市は佐渡汽船の両津港ターミナルと相川地区の佐渡金山のガイダンス施設を結ぶライナーバスの運行を夏の期間限定で始めたほか、佐渡金山など相川地区の観光施設を回る無料の周遊バスを運行しています。
【佐渡観光旅館連盟 本間東三夫 会長】
「もうしっかりと準備は整っている。期待度は高いし、世界遺産になってほしいという気持ち」
【相川車座 雨宮隆三 社長】
「もちろん期待をしている。世界遺産になるのは、この地域にとっての希望」
悲願達成を信じ…世界遺産登録に向け、地元の準備は着々と進んでいます。