その女性は、母親の後を追うようにインタビュールームに入ってきた。伏し目がちで、どこか自信のなさそうな顔をしていた。カメラを向けると、彼女は鍵をかけたはずの一つ一つの記憶を呼び覚ましながら淡々と、時折涙を流しながら語り始めた。
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おととし7月、三重県内に住んでいた当時高校3年生だったAさんは、同級生の男子生徒と交際を始めた。当初は優しく、面白かった彼が豹変していったのは、交際1か月が経過した頃だった。
彼の高圧的な口調や態度が増え、彼女は次第に恐怖を覚えるようになっていったという。しかし、その頃には彼による精神的な支配が始まり、彼女は「NO」と言えなくなっていた。そして、性の支配が始まっていった。
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交際1か月後の真夏の8月。「1か月記念」と称したデート中に、自宅近くのグラウンドの公衆トイレでいきなり服を脱がされ、性的暴行を受けた。同意のない中での突然の性行為、Aさんは3日間出血が止まらず、腹部や局部の痛みが続いたという。
しかし、そこから男子生徒の性的暴行は日増しにエスカレートしていった。
学校の空き教室でも性行為を強要された。またある時は、通学路にある公園の公衆トイレでも無理やり服を脱がされた。犬の散歩をする人の視線もあったが、それ以上に怖くて抗う勇気がなくなっていた。彼の実家でも体を強要された。そこには同級生の男女も集まり、見世物にされた。正確な回数は記憶していないが、記憶のあるものだけで行為は4か月間で20回以上に及んだ。
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「別れたい」と告げると謝り、「別れるなら死ぬぞ」と逆に脅してくる。「今度こそ改心してくれるはず」と信じて交際を続けても、優しいのは最初だけで態度はすぐに元に戻った。関係はずるずると続き、Aさんが初めて被害を母親に打ち明けたのは、木々が色づいた11月下旬だった。
それまでは「心配をかけたくない」と、自身の身に起きていたことを母親に告げなかったAさん。しかし「別れたい」と相手に告げた翌日、男子生徒が自宅に押し掛けてきたことをきっかけに重い口を開いたという。
母親は「性被害に遭う前は笑顔が絶えない、何事にも積極的だった娘は、いつしか無表情で、無気力になっていた」と振り返った。
相手は同級生で、学校内で起きていること。両親は「いじめ重大事態」として扱って欲しいと学校へ働きかけたが「生徒間のトラブルではなく、男女間のトラブル」と、学校ではなく警察が主体的に調査すべきではないかと回答してきた。
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藁にも縋る思いで警察に被害を訴えても「交際していたのだから、性行為は合意していたのでは?」「警察ではなく、学校側が主体的に対応すべきではないか?」と、回答してきたという。
内容からすれば「不同意性交罪」にあたるが、この法律が施行されたのは去年7月。おととしのこの件は、時期的に適応外になる。また、夫婦間ではなくカップル間の行為だったため、DV防止法も適応外になるという。
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男子生徒の両親にも謝罪を求めたが、「付き合っていたのなら合意のうえでは?」と取り合わなかったという。「私たちはどこに被害を訴えればいいのですか?」親子は涙を流しながら、悔しさを滲ませた。
結局、男子生徒は一時的に自宅謹慎の処分を受けたが、それ以上の追及はなく、相手側からの謝罪もなかった。一方で、女性は成績も悪くなり不登校になったが、卒業後は大学へ進学した。しかし、彼女の心の傷は今なお癒えない。ふとした時に、あの時の出来事が鮮明に蘇ってくるという。
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性的被害を受けるまで、二人で一緒に下校したり、花火大会に出かけたりする程度の関係が一変した。交際はしていたが、性行為に同意はなかったという。両親は「いじめ重大事態」として扱って欲しいと、学校側と協議しているが、事態は遅々として進んでいない。客観的なメンバーによる第三者委員会を設置して、公正な判断を求めているが、未だ納得のいく回答を得られていないという。事態が進展せず、Aさんの心も回復しないまま、時間だけが経過している。
取材:CBCテレビ報道部 大石邦彦