「普通の人」が買う意味は? 日産「オーラ NISMO」の改良モデルが登場

日産自動車の「NISMO」と聞くと、サーキットや峠などで攻めの走りを楽しむ上級者のためのクルマといったような印象がある。「普通の人」が乗る意味、選ぶ意味はあるのだろうか? 「オーラ NISMO」マイナーチェンジモデルの事前取材で日産に話を聞いてきた。

オーラNISMOってどんなクルマ?

日産は7月18日、「ノート オーラ」をベースとする高性能バージョン「ノート オーラ NISMO」を発売した。2021年登場のオーラNISMOにマイナーチェンジを実施した改良モデルだ。主な変更点は以下の通り。

オーラNISMO初の四輪駆動(4WD)グレード「NISMO tuned e-POWER 4WD」を追加
「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」をオプション設定
オプションのレカロ(RECARO)シートにパワーリクライニング機能(電動で角度が調整できる)を追加
運転席の標準シートにパワーシートを標準装備

改良の目玉は4WDの追加だ。背景には降雪地帯に住む顧客からの要望があるものの、単純に「需要があるから追加した」わけではないというのが日産の説明だ。

NISMOはベース車両より「ワンランク上の走り」を提供するというのが基本路線。速さや軽快さなどを追求するなら、4WDよりも軽い2WD(110kgも差がある)でNISMOを作ったほうがいい。それでも4WD追加に踏み切ったのは、クルマの後ろ(リア)に積むモーターを活用し、4WDならではの速さ、気持ちよさを実現できると判断したためだ。

「普通の人」にはオーバースペック?

こういう話を聞いていると、「自分のクルマでサーキットに行く機会がない(行こうとも思っていない)自分には、NISMOは必要ないですよね」と思ってしまいそうになるが、そうでもないという。

マイナーチェンジ前のデータによると、オーラNISMOの累計販売台数は2.1万台。オーラ全体に占めるNISMOの割合は18%だ。つまり、オーラを買う人の10人に2人くらいはNISMOを選んでいるということになる。意外に多い印象だ。4WDの登場により、今後は雪国でもオーラNISMOが増えていくだろう。

「NISMO購入者のほとんどが日常的にサーキットや峠などに行っているわけではありません。当然ですが、行かない人の方が多いんです」というのが日産広報の言葉。ベース車両よりも「ちょっといいモノがほしい」という人の中で、「上質方向」を好む人が「AUTECH」、モータースポーツ由来のイメージやワンランク上の走りを望む人が「NISMO」を選ぶという感じらしい。ドアミラーカバーなどの赤が「かわいい」ということで、NISMOとは何ぞやなどということを気にせず購入していく女性客もいるそうだ。

クルマに詳しくない人やモータースポーツに特に興味がない人が、ベース車両に30万円くらい上乗せしてNISMOを選ぶのは「もったいない」のでは? そんな質問もしてみたのだが、「必ずしもそんなことはない」と日産の人たちは口をそろえる。

特に4WDは、強力なリアモーターの恩恵もあり、普通の道路をルールに沿った速度域で走っていたとしても、ちょっとしたカーブや車線変更の際に「クルマが思い通りに走ることからくる、無意識の気持ちよさ」が感じられるとのこと。オーラNISMOに5年くらい乗るとして、しかも日常的に運転するとした場合、運転するたびに「無意識の気持ちよさ」が積みあがっていくのだとすれば、30万円くらいの価格差は最終的に(気持ち的に)元が取れるかも? そんな気もしてくる。

NISMOだからといって乗り心地が「ガチガチ」なわけではないし、「e-POWER」を搭載するオーラのよさ(例えば車内の静粛性)がNISMOになることで犠牲になっているわけでもない。普通に乗っていればオーラNISMOは「上質なコンパクトカー」だ。スポーツカーのイメージが好きな人はオプションで「レカロ」のシートを付ければいいし、そうではなくて、基本的には上質な小型車として乗りたいならば、レカロにお金をかけない代わりに「BOSE」のオーディオを取り付けるという手もある。

「フェアレディZ」や「GT-R」のNISMOとは少しキャラが違って、オーラのNISMOはけっこう間口が広そう。これなら、普通の人でも選びやすいのではないだろうか。

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