小池百合子都知事(71)による2期8年続いた都政への評価が問われる東京都知事選の投開票が7月7日に控えている。いま何かと話題の「晴海フラッグ」も、東京五輪の選手村跡地を小池都知事が「レガシー(遺産)」としてマンションに整備したものだ。
住宅を必要とするファミリー層向けに販売されたはずのマンションだったが、実際は業者による転売や、個人の投資用として取得を目指す動きが激化。最高倍率266倍の住戸も出現し、“マネーゲーム”の舞台となったことで都民から強い関心の目が向けられている。不動産ジャーナリストの榊淳司氏は、晴海フラッグ人気の過熱ぶりと実態との乖離を指摘する。
「晴海フラッグは周辺相場より3割も安い価格で販売されたことで人気が沸騰しました。しかし、買う方にとっては当初6000万円で売りに出されたものが9000万円で販売されているのですから、これからその値段で欲しいという人がいるかどうか……。実際、いまのところ晴海フラッグの転売に成功したという話はあまり聞こえてきません。成約件数は10件もあるのかなと思いますね。
儲かったと大きい声で言う人もいますけれど、『今買わなきゃ損ですよ!』と煽って買わせるのが不動産業界の常ですからね。思ったように買い手がつかない状況に、転売目的で買った人は内心焦っているのではないでしょうか」
また、榊氏は晴海フラッグ内に建設中で、来年10月から入居開始予定の2棟のタワーマンション「SKY DUO」の売れ行きも鈍いと推測する。
「2棟合わせて約1500戸が販売されていますが、第2期の販売は当初5月の予定だったものが7月、10月と後ろ倒しになりました。これは不動産業界的には、想定通りの問い合わせ数や事前申込数が売主側にきてないってことの証なんですよ。もしかしたら、ここにきて新築人気も陰り始めてきているのかもしれません」
榊氏はこれから数年後に起こるかもしれないマンションバブル終焉後の未来を危惧しているという。
「晴海フラッグの欠点はアクセスが悪すぎること。マンションの玄関を出てから大江戸線の駅のホームに立つまで実際は30分ほど掛かります。今後暮らし始める人が増えてくれば、そういった負の面から手放すのを考える人も出てくることでしょう。
いまは話題性があるからまだ良いんです。怖いのはこれから5年後、10年後、ブームが去り、誰も晴海フラッグの名前を口にしなくなった頃に、不人気物件の象徴のようになってしまう可能性です。中古物件として売りに出しても晴海フラッグ内の約4000戸の分譲マンションと競合するわけですから、どんどん値段を下げざるをえないでしょう。抽選に当たった購入者が不幸になる、そんな未来が来ないといいですが……」
晴海フラッグが建つ元都有地は、東京五輪終了後に都が不動産会社に売却した。小池都知事が残した晴海フラッグが負の「レガシー」にならないことを願うばかりだ。