マジで激レアになってしまった「新宿発の小田急」バスに乗る 毎年6月だけ運行の「最長路線」 今年は周辺も激変!?

小田急バスが毎年6月のみ、そのうちの週1回のみ運行する最長の一般路線「よみうりランド線」に乗車。本当の意味でレアになってしまった“名物路線”に、今年も多くのバスファンが集まりました。
小田急バスは東京都内の小田急線各駅からバス路線を展開しています。それは小田急線の大ターミナルである新宿駅も同じ……と思いきや、新宿駅を発着する小田急バスはわずか3系統しかなく、ますますレアな存在になっています。
というのも、毎日運行されていた新宿駅西口―武蔵境駅の「宿44」が2024年3月に廃止され、定期で運行されるのは、新宿駅西口―吉祥寺駅に短縮された「宿44」が日曜日に1往復走るのみとなったからです。他2つの系統は、ごくわずかしか運行されない激レア系統です。
そのうちのひとつで、かつ小田急バスの一般路線で最長となる「新宿駅西口~よみうりランド系統」が“今年も”運行されています。本稿では便宜上、「よみうりランド線」と紹介します。
マジで激レアになってしまった「新宿発の小田急」バスに乗る 毎…の画像はこちら >>新宿駅西口35番のりばに到着するよみうりランド行き。いすゞの中型バス・エルガミオが使用されていた(水野二千翔撮影)。
よみうりランド線は新宿駅西口から甲州街道を西進して調布を経由し、よみうりランドの正面入園口まで結びます。運行距離は約23km。所要時間は1時間10分で、都市を走る路線バスとしてはなかなかのロングランとなり、乗りごたえがありそうです。
また、「毎年6月の日曜日に1日1往復だけ」運行されることも、よみうりランド線に興味をそそられるポイントです。
よみうりランドは東京都稲城市と神奈川県川崎市にまたがる丘陵地に開かれた遊園地。アトラクションが充実し、夏にはプールがオープン。また、プロ野球・読売ジャイアンツの二軍本拠地球場も設置されています。京王相模原線の京王よみうりランドからゴンドラ「スカイシャトル」に乗り換えるのが、よみうりランドへの一般的なアクセス方法で、新宿からの所要時間は、よみうりランド公式サイトによれば概ね30~35分程度と案内されています。
所要時間だけ比較すればよみうりランドへのアクセスには向いていないよみうりランド線。では、どのような人たちが乗車し、どのような沿線風景が見られるのでしょうか。新宿駅西口からよみうりランドまで、実際に乗車して確かめてみました。
取材日は朝からあいにくの雨。梅雨時らしい蒸し暑さを感じながら、よみうりランド線が発車する小田急ハルク前の新宿駅西口35番のりばに向かいました。9時発に間に合うよう、余裕をみて30分前に到着したにもかかわらず、すでに乗車を待つ人たちが10数人、列をなしています。発車の直前には30人近くが並び、よみうりランド線の関心の高さが見て取れました。
幅広い年齢層の人たちがバスを待つなかで、小学生~中学生ぐらいの少年の姿もチラホラ。多くの人たちがカメラを持っていました。乗車する人たちのほとんどが乗りものファン、バスファンなのは明らかで、よみうりランド線のバスが入線する前から、新宿駅西口ロータリーを行き来する京王バスや都営バスなどの撮影に励んでいました。
ただ、新宿駅西口は再開発が進み、小田急百貨店がこの1年で解体され、東口のルミネまで見通せるほど大きな空が広がっています。35番のりばに通じる歩行者デッキも解体されています。年1回、ここに集まるファンであれば、この変貌ぶりに驚いたのではないでしょうか。
やがてのりばにバスが入線。待っていた人たちが乗車するとあっという間に満員に。座席はもちろんすべて埋まり、立席スペースもぎゅうぎゅうとなって身動きが取りづらい状況です。
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よみうりランド線の側面行先表示器(水野二千翔撮影)。
定刻9時に発車するとバスは新宿駅西口ロータリーを南下したあと、甲州街道へ。バスタ新宿から高速バスに乗るとよく通る区間ですが、車高の低い路線バスから見る車窓は新鮮に感じられます。
よみうりランド線は笹塚二丁目までの停留所で乗降扱いをします。でも、運転席の横にまで立席の乗客がいては、途中の停留所から乗りたくても乗れない状態といえるでしょう。車内からは、満員のバスを見て目を白黒させている人たちも見受けられました。
笹塚二丁目から調布までの約13kmは、千歳烏山駅北口や仙川といった停留所がありますが、よみうりランド線のバスはノンストップで駆け抜けます。下高井戸付近では杉並区のコミュニティバス「すぎ丸」が停車する姿が見え、千歳烏山駅付近を過ぎると、新宿駅で見かけたきりだった関東バスの車両が出現。京王バスも再び姿を見せます。東京西部の足を担う路線バス各社の車両を見ると、西へ向かっていることを実感します。
出発から30分以上がたち、当初のやや興奮気味で賑やかさがあった車内が落ち着き始めたころ、東京23区を抜けて多摩地区に入ります。よみうりランド行きはバスが発着する調布駅北口のロータリーには入らず、旧甲州街道上に設けられた「調布」に停車。その後左折し、多摩川を渡る鶴川街道へと入ります。
5分ほど走ると車窓には多摩川の広々とした河川敷が現れました。さらに左手にはよみうりランドの観覧車も見え隠れ。遠くまで来たものだと実感できます。
よみうりランド線しか発着しない矢野口駅東を過ぎればゴールまであと一息。京王よみうりランド駅を過ぎると急な登り坂やカーブが続き、立席の乗客は最後の力を振り絞って踏ん張っていないといけません。
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甲州街道の仙川三差路を通過する、よみうりランドからの折り返しの新宿駅西口行き。画面左端の道は旧甲州街道で、よみうりランド行きはこちらを走行(水野二千翔撮影)。
ここ「ランド坂」はかつて、急なヘアピンカーブで高低差を克服していましたが、2021年に新しいループトンネル経由で付け替えられ、旧道があった急峻な谷はまるごと埋め立てられました。2024年現在は、丘の上までほぼ埋め立てられ、新たにできた用地に新球場の建設などが進んでおり、一大造成地の様相です。
そして終点・よみうりランド3番のりばに到着。この日は定刻から5分ほど遅れ、乗車時間は1時間15分となりました。
混雑はラッシュ並みですが長時間乗車ができ、心ゆくまでバス乗車を楽しめるよみうりランド線。2024年の乗車チャンスは、残りは6月30日の1回のみです。

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