6月12日、世界経済フォーラムが、男女平等の実現度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」を発表しました。日本は146か国中「118位」。この順位はG7で最下位です。日本の男女格差の解消は、まだまだ道半ばです。そんな中、名古屋のホストクラブで多くの指名を受ける人気「女性ホスト」に密着。なぜ、男性の仕事と思われているホストを選んだのか? ジェンダーレスの時代に、自分らしさを突き詰める生き方に迫りました。
人気ホストは“女性” 「女の子が好き」 ジェンダーレスの時代…の画像はこちら >>
名古屋市中区栄のホストクラブ「youth(ユース)」で働く一葉漣さんは、トップ5に入る人気ホストです。黒いスーツ姿にショートカットで接客する一葉さんの性別は「女性」。一葉さんは、女性が好きな女性、いわゆる「レズビアン」です。
(ホスト 一葉漣さん)「女の子が好きで、キラキラした世界に憧れていた。この年齢まで普通に仕事をしてきて、今だったら、ジェンダーレスの時代だから『いけるかもしれない』と思って働き始めた」
店が開くのは夜8時ですが、この日、一葉さんが現れたのは昼の2時。入念にメイクをし、髪の毛をセットします。
(ホスト 一葉漣さん)「あまり女の子のメイクと変わらないですよ。(ポイントは)ラメを使わないのと、シャドウは彫りを深く見せるように入れる。声も元々低いし、整形したことはない」
セットが終わった一葉さんは、店の外でプロの演出家とTikTokの撮影です。動画は、ほとんど毎回、数十万~100万回以上再生されているとのこと。続いて、室内でライブ配信も。一つ一つのコメントに丁寧に対応していきます。
営業前には、若手ホストにシャンパンコールの指導。お客さんの楽しませ方を伝え、コール練習には毎日1時間かけています。
CBC
迎えた開店時間。円陣を組んで営業スタートです。訪れた客に聞くと、一葉さんが女性であることに偏見はないといいます。
(客 20代)「めっちゃ、かっこいい!(一葉さんが)かっこいいと思って、自分も髪を切った」
(客 30代)「言われないと(女性だと)分からなかった。すごくすてきな方」
女性である一葉さんを指名で、店に来る人も。一葉さんに「友人とイチゴ狩りに出かけた話」から「安い化粧品の話」、さらに「生理の大変さ」まで、いろいろなことを話します。
(一葉さん指名で来店した客)「その時の出来事とかをしゃべって、メンケア(メンタルケア)みたいな。人としていいなと沼っていった」
指名した女性の恋愛対象は男性。しかし、一葉さんの人間性にひかれて、店に通うようになったのだとか。
営業終了後も一葉さんは、お礼や次の誘いの電話、LINEなど、長い時間をかけてお客さんに連絡を送ります。
店での売り上げ順位は33人中5位と常にトップランカーですが、一葉さんはそれでも満足できないと話します。
(ホスト 一葉漣さん)「目指すのは、どこまでいってもナンバーワン。看板だったり、トラックだったり、名古屋全体を僕で埋め尽くせるくらい、全部の1番になりたい」
CBC
小学生の時、初めて好きになったのは「女の子」。その後、男性と交際したこともありましたが、女性しか愛せない自分に気付いたといいます。
(ホスト 一葉漣さん)「元々生まれてからずっと女だと思って生きていたので、性同一性障害ではなくて。女だけど女の子が好き」
一葉さんがホストを選んだ理由は、キラキラした世界が好きで、目立つことが好きだから。元々憧れがあり、女性相手に接客したいと思い、ホストを目指しました。
(ホスト 一葉漣さん)「僕の中ではめちゃくちゃ普通だが、世間一般的にみたら普通じゃないというのは理解している。時代がジェンダーレスになって、最後のチャンスとして26歳から始めた」
店が閉まった後は、同僚のホストと打ち上げです。仲間のホストたちは、今では女性の一葉さんを自然に受け入れていますが、最初は違ったそうです。
(ホスト 一葉漣さん)「最初は『女ホストなんて認めないぞ』という感じだった」
(同僚ホスト)「今は違うけど、最初はそう思っていた」
(同僚ホスト)「売れなくて辞めると思っていた。女の子だけど、僕ら男と同じくらいの熱量。おとこ気を持ってやっている」
今では、同僚も客も、違和感なく一葉さんを受け入れています。
(ホスト 一葉漣さん)「男性の仕事のホストという職業に、生物学的に女性である人が1人入っているのは、イレギュラーなのは分かっている。分かっているが、僕のやる気や結果で認めてもらえたらいいなと思っている。中途半端な気持ちでやっていない」
何が普通かは「人それぞれ」…一葉さんはきょうも、全力で相手を楽しませています。
CBCテレビ「チャント!」6月12日放送より