県議選は玉城デニー知事を支える与党が改選前から4議席減らして20議席となり、少数与党に転落した。2014年に翁長雄志県政が誕生して以降、「オール沖縄」勢力が過半数を割り込むのは初めてだ。
対する野党・中立は28議席に伸ばした。自民党派閥の「裏金問題」という逆風の中、16年ぶりに多数派に返り咲いたのである。
14年の知事選で翁長氏が自公の推す現職に10万票の大差をつけて当選した時、私たちは社説で「住民意識の変化という見えない地殻変動が起きた」と書いた。
当時、その翁長氏が沖縄のあるべき姿として繰り返した言葉の一つに「誇りある豊かさ」があった。今回の県議選の結果も、沖縄の民意に大きな地殻変動が起きていることを示すものなのだろうか。
オール沖縄は「基地は革新」「経済は保守」でいがみ合ってきた保革が翁長氏の下「腹八分」でまとまった組織だ。それは政府の強硬姿勢に対し、保革で挑むというかつてない挑戦でもあり、「誇りある豊かさ」はその先にある社会の姿だった。
しかし、翁長氏が亡くなった後、保守系議員や企業が離れ、オール沖縄は事実上革新系の集合体となった。岩盤支持層と保守・無党派層の二重構造だった基盤はもはや崩れている。
県内政治を見ると知事選では翁長、玉城県政の流れをつくってきたものの、市長選では負け越している。かつてのオール沖縄時代の終焉(しゅうえん)を意味すると言わざるを得ない。
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オール沖縄は、辺野古新基地建設阻止を「一丁目一番地」として結集した組織だ。
その辺野古を巡っては今年に入り政府が代執行で工事を強行し、県民には諦め感も広がっている。
そうした中で今回の県議選で辺野古は争点にならなかった。
一方、足元の暮らしは物価高の影響を受け厳しくなるばかりだ。1人当たりの所得が全国一低い県内では、全国的な賃上げの恩恵もほとんど得られておらず、有権者が求めたのは生活防衛だった。
沖縄の基地負担の軽減を全国に発信する玉城知事の姿勢は、支持層からの評価を受けている。半面、所得向上など県民生活に関わる政策の成果は見えにくい。
玉城県政は今回、土壇場になって給食費「無償化」支援を打ち出したものの、調整不足として一部の自治体から批判を浴びた。
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日々の暮らしをどのように維持していくかが前面にせり上がった選挙だった。
玉城県政は生活防衛を重視する有権者の声に十分に応えられず、それが与野党の逆転を生んだ。
ただ、基地負担はますます増えている。基地由来の有機フッ素化合物(PFAS)の汚染問題などが県民の暮らしを脅かし、急速な「軍事要塞(ようさい)化」への懸念も高まっている。
誇りある豊かさをどう実現するのか。
与野党は生活防衛と基地負担軽減の二つを一対の施策として対応すべきだ。