デイサービスとは、要支援・要介護状態にある利用者の方が可能な限り生活自宅において自立した生活を送ることができるよう、またご家族の負担を軽減できるように支援することを目的として、日常生活に必要な機能訓練や介助を行う介護保険サービスです。体操や陶芸、生け花などのアクティビティも用意されており、利用者が楽しく他人と関係を築ける場ともなっています。
そんな魅力あるサービスだからこそ、「要介護認定は受けていないけれど、サービス利用は可能なのか?」「健康でもデイサービスに通えるの?」など、関心を抱かれる方も少なくはないのではないでしょうか。
結論としては「一定条件を満たせば健康な方もデイサービスは利用可能」です。本記事では、デイサービスのそもそもの機能や健康な方の利用条件、代替サービス等について詳しく解説していきます。
デイサービスとは通所介護とも呼ばれる、要介護認定を受けた方が日中に通う介護サービスです。入浴、食事、排せつ等の介護を行うほか、日常生活に必要な機能の向上・維持を目的とした訓練を行います。また、体操や陶芸、生け花、脳トレなどのアクティビティを行い、職員や他の利用者と関わりを持つこともできます。
デイサービスの主な目的は、利用者の自立支援と社会参加、ご家族の介護負担軽減です。施設での日中の活動や交流を通して、ご本人の心身の健康維持・向上を図ることができます。また、ご家族にとっては介護から一時的に解放される時間ができ、心身のリフレッシュにつながります。【健康な人もデイサービスに通える?】対象者と介護認定なしで利…の画像はこちら >>
デイサービスに通うことには、高齢者にとって多くのメリットがあります。
【1. 社会参加の機会の確保】
デイサービスに通うことで、高齢者は家に閉じこもることなく、外出する機会を得られます。他の利用者や職員との交流を通して、社会とのつながりを維持することができるのです。孤独感の解消や、生活のメリハリにもつながります。
【2.専門的なケアの提供】
デイサービスには、介護福祉士や看護師など専門知識を持ったスタッフが配置されています。利用者の心身の状態に合わせて、適切な介護サービスを提供してくれます。また、定期的に健康チェックを行い、異変があれば早期発見・対応もできます。
【3.家族の介護負担の軽減】
高齢者を自宅で介護している家族にとって、デイサービスは大きな助けになります。利用者がデイサービスに通っている間は、家族が自分の時間を持つことができます。休息を取ったり、仕事に専念したりできるのです。家族の心身の負担を軽減し、介護の継続につなげられます。
【4.認知症進行の予防】
デイサービスでは、レクリエーションや脳トレなど、認知症予防に効果的なプログラムを提供しています。利用者は楽しみながら、認知機能の維持・向上を図ることができます。また、他者との交流は認知症の進行を遅らせる効果もあると言われています。
【5.栄養バランスの取れた食事の提供】
一人暮らしの高齢者の場合、食事の用意が難しく、栄養が偏りがちです。デイサービスでは、管理栄養士が監修した栄養バランスの取れた食事が提供されます。おいしく、健康的な食事を取ることができるのです。
【6.生活リズムの維持】
デイサービスに通うことで、規則的な生活リズムを維持できます。決まった時間に起床し、食事を取り、活動するという一日の流れができるのです。生活リズムの乱れは、心身の健康に悪影響を与えるため、規則正しい生活は大切です。
2022年度の介護サービスの年間累計受給者数6,585万7,700人のうち、デイサービスを含む居宅サービスの受給者数は4,046万人であり、全体の61.4%を占めています(出典:令和4年度介護給付費等実態統計)。さらに、居宅サービスの中でも訪問通所サービスの利用者が多く、その中でもデイサービスの利用者数は訪問通所サービス全体の40.7%を占めています。
なお、居宅サービス受給者の要介護度を見ると、要介護1が最も多く26.6%、次いで要介護2が22.9%。施設に入居するほどではないが、介護支援は必要である方の利用が目立ちます。
居宅サービス受給者数(要介護度別)
また、2021年の全国デイサービス協会の調査では、デイサービスの平均的な利用者像は、要介護度2.4、認知症自立度Ⅱb、85.5歳という結果でした。
このように、デイサービスにはさまざまなメリットがあるものの、基本的に要介護認定や要支援認定を受けた方が利用するサービスであり、健康な高齢者が利用できるケースは限られています。
それでもなお、家族の負担減少や介護予防のために、デイサービスの利用を希望されるケースもあります。そのような場合、デイサービスを利用いただくことは可能なのでしょうか。
結論としては、デイサービスを利用するためには原則要介護認定または要支援認定を受ける必要があります。
しかし、認定を受けていない方でも、以下のケースにおいては一部のデイサービスを利用できる場合があります。
1つ目は、「基本チェックリスト」で一定の基準に該当し、介護予防・日常生活支援総合事業の対象となった場合です。基本チェックリストとは、65歳以上の高齢者を対象とした質問票で、日常生活動作や認知機能、社会参加の状況などを確認するものです。このチェックリストの結果により、要支援・要介護状態になるおそれがあると判断された方が事業対象者となります。
2つ目は、自治体の介護予防事業の対象者である場合です。各自治体では、要介護状態になることを予防するための様々な事業を実施しており、その対象者に認められた方は、デイサービスを利用できる場合があります。
しかし、これらの条件に該当する場合でも、デイサービスの利用には一定の制限があることに注意が必要です。事業対象者や介護予防事業の対象者は、サービスの利用回数や時間に上限が設けられていることもあります。
また、デイサービスは本来、介護が必要な方を対象としたサービスです。健康な方が利用する場合は、デイサービスの本来の目的と合致しない可能性もあります。利用を検討する際は、自身の状態に合ったサービスかどうかを見極めることが大切だと言えます。
デイサービスに通えない場合も、以下のような代替サービスを利用していただくことができます。
民間のフィットネスクラブを活用するのもおすすめです。
近年、フィットネスクラブではユーザーの高齢化が進んでいます。
例えば、スポーツクラブ事業を運営する株式会社ルネサンスの公表によると、2024年3月時点でのフィットネスクラブ会員は50歳以上が6割弱を占めているとのことです。高齢者の健康意識の高まりが、この傾向を後押ししているのでしょう。
ルネサンスのフィットネス会員年齢構成
フィットネスクラブでは、高齢者の身体的特性を考慮したさまざまなプログラムが用意されています。
例えば、プールを活用した「水中運動」は、水の浮力と抵抗を利用することで、関節への負担を軽減しながら効果的に体を動かすことができます。
体力に自信のない方でも安心して取り組むことができるため、高齢者に特に人気のプログラムの一つです。
また、ヨガは呼吸法や瞑想、ゆったりとしたポーズを中心に行うため、心身のリラクゼーションに最適です。
柔軟性の向上やストレス解消に効果があり、高齢者の健康維持に大きく貢献します。
シニア向け筋力トレーニングでは、高齢者の体力レベルに合わせた機器を使用し、ゆっくりとした動作で筋力アップを図ります。
筋力の維持・向上は、転倒防止や日常生活動作の改善につながるため、高齢者にとって非常に重要です。
フィットネスクラブを利用するには、入会金や月会費などの費用がかかりますが、長期的に見れば、健康維持と介護予防に寄与する投資と言えるでしょう。
定期的な運動習慣は、体力づくりだけでなく、生活リズムの安定や社会参加の機会にもつながります。
施設選びのポイントは、自宅からのアクセスの良さ、専門スタッフの在籍、高齢者向けプログラムの充実度などです。体験利用や見学を活用し、自分に合った施設を探すことが大切です。
内閣府の発表した「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」によると、60歳以上の高齢者のグループ活動参加は年々増加しています。また、今後の参加意向について「参加したい」と回答した者が 54.1%となっているなど、高齢者の社会参加のニーズは高いと思われます。
60歳以上高齢者のグループ活動
そこで注目したいのが、地域の老人クラブやサロンなどのグループ活動です。
老人クラブは、地域の高齢者が自主的に集まり、健康づくりや社会参加、生きがいづくりを目的とした活動を行う団体です。2021年3月時点の老人クラブ会員数は約556万人、クラブ数は8万8,233団体でした(出典:全国老人クラブ連合会)。
全国老人クラブ連合会の調査によると、メンバーの構成比率は平均80歳以上が25.6人、70歳代31.3人、70歳未満9.8人。年間会費1,500円以下で参加できることが多いようです。
老人クラブは、高齢者の健康維持と社会参加を促進するために、さまざまな活動を行っています。
例えば、近所の公園に集まってラジオ体操や太極拳、グラウンドゴルフなど、高齢者でも無理なく取り組めて身体機能の維持・向上に寄与する運動を実施しています。
また、老人クラブでは、地域の清掃活動や子育て支援、防犯パトロールなど、高齢者の知識や経験を生かしたボランティア活動も行われています。
これらの活動を通じて、高齢者は地域社会に貢献し、自身の存在価値を実感することができます。
さらに、子どもや若者との交流会やイベントを開催し、世代を超えたつながりを育むことで、高齢者の心身の健康にもプラスの効果があります。
一方、地域のサロン活動は、社会福祉協議会や自治会、NPOなどが主催する、高齢者の交流の場です。
サロン活動では、体操教室やお茶会、講座などのプログラムが用意されており、高齢者が気軽に参加できる環境が整えられています。
サロン活動の特徴は、身近な地域で開催されるため、高齢者が参加しやすいことです。
また、参加費が無料または低額に設定されているため、経済的な負担が少なく、多くの高齢者が参加できます。
サロン活動は、介護予防だけでなく、仲間づくりや情報交換の場としても機能しています。
高齢者同士が交流を深めることで、社会的孤立を防ぎ、精神的な健康の維持にもつながります。
老人クラブやサロン活動は、介護保険のサービスとは異なりますが、高齢者の社会参加や生きがいづくり、介護予防に大きな役割を果たしています。
これらの活動は、高齢者が地域社会とのつながりを維持し、自身の能力を発揮できる機会を提供しています。
また、定期的な参加により、高齢者の心身の健康状態を把握することができ、必要に応じて適切な支援につなげることができます。
高齢者一人一人が自分に合った活動を見つけ、積極的に参加することが、充実した老後を送るために重要です。
デイサービスは介護保険サービスのひとつであるため、健康な方の利用は制限がありますが、民間のフィットネスクラブや老人クラブ、地域のサロン活動など、介護認定なしでも利用できる代替サービスが存在します。
フィットネスクラブでは、高齢者の身体的特性に合わせたプログラムが提供され、専門スタッフのサポートを受けながら安全に運動に取り組むことができます。
また、老人クラブやサロン活動は、高齢者同士の交流の場でもあります。これらの活動に参加することで、高齢者は社会とのつながりを維持し、孤独感の解消や心身の健康増進につなげることができるのです。
ただし、高齢者自身が主体的に活動を選び、積極的に参加することが大切です。
受け身ではなく、自ら情報を収集し、興味のある活動に参加する姿勢が求められます。
また、体調や気分に合わせて、無理のない範囲で活動に取り組むことも重要です。
自分のペースで、楽しみながら参加することが、継続的な活動につながります。