創作物などで人型ロボットやサイボーグ、筋肉モリモリマッチョマンがよく打つガトリングガンのひとつが、M134「ミニガン」です。なぜあれほど大きいのに「ミニ」なのでしょうか。
創作物に出てくる人型ロボットやサイボーグ、筋肉モリモリマッチョマンがよく、腰だめで撃っているガトリングガン。それらはおそらく、M134という機関銃がモデルです。この機関銃、愛称を「ミニガン」といいますが、明らかに凶悪な見た目と発射速度を誇るこの銃がなぜ、かわいらしくも「ミニ」なのでしょうか。
ドでかいのに愛称「ミニガン」ってなぜ? シュワちゃんもぶっ放…の画像はこちら >>ヘリコプターに搭載された「ミニガン」(画像:アメリカ海兵隊)。
「ミニガン」はアメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)が開発したもの。19世紀に登場したガトリング砲を祖先に持つ、複数の銃身が電動で回転して弾を発射する形式の機関銃です。なぜ「ミニ」という名前なのかは、同機関銃を開発する以前に作られた“機関砲”に理由があります。
第二次世界大戦後、高速化する軍用機に対応するため、発射速度の速い機関砲が求められていました。そこで、GEが開発し、1959年から登場したのが19世紀のガトリングガン砲を参考にした20mm機関砲であるM61「バルカン」でした。
この機関砲は、それまでの20mm機関砲が毎分520~540発だったのに対し、かつてのガトリングガン砲のように複数の銃身を持ち、それを電動で回転させて撃つという方法で、毎分6000~6500発という驚異的な発射速度を実現しました。
「バルカン」は20mmの機関砲弾を使っていましたが、これをダウンサイズして、当時北大西洋条約機構(NATO)など、いわゆる西側陣営で使われていた、7.62×51mm NATO弾を使えるようにした“機関銃”が「ミニガン」でした。航空機に搭載される機関砲に比べれば確かに「ミニ」ではありますが、人が持っていると大きいというわけです。
「ミニガン」開発の経緯は1960年代にさかのぼります。当時アメリカが軍事介入を始めていたベトナムで使うことが想定されていました。
同地では、低空を低速で飛行するヘリコプターなどが、地上から待ち伏せなどで狙い撃ちされることがありました。そこで、機体に搭載された機関銃で機銃掃射を行う必要があるのですが、ジャングルで視界が悪く脅威の視認が困難なため、広範囲かつ必要以上に弾丸を撃ち込みがちでした。
すると、当初使われていたM1919機関銃などでは銃身がすぐに加熱してしまいました。そうした問題を解決するために、ヘリコプターや輸送機に搭載されるようになったのが、1963年から生産を開始したM134「ミニガン」だったのです。
その後、M134「ミニガン」は航空機搭載型のほか、車両用、艦艇用、特殊部隊仕様など様々なタイプが登場し、2024年現在まで使用されている機関銃となっています。
ちなみに、その重量は通常モデルで39kg、軽量モデル19kgです。軽量モデルならばどうにか腰だめで撃てそうですが、この数値は本体重量だけであり、実際は弾薬や発電装置の重りなども追加されるため、100kgは超えるといわれています。サイボーグでもない限り、創作物のように気軽に持ち歩いて撃つことは困難です。
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舟艇搭載の火器として使用される「ミニガン」(画像:アメリカ海軍)。
実は、本当に歩兵が持ち運んで、腰だめや伏せ撃ちができるようなガトリングガンを作ろうと、XM214「マイクロガン」の開発が試みられたときもありました。しかし、そこまで重さが軽減できなかったのと、反動が強すぎるという理由で中止となりました。