本紙1面「ブリブリ打線」(5日)の見出しに笑ってしまった。きっかけは前日の巨人・阿部監督のインタビュー記事。なかなか点が取れない打線に対して、5月29日の試合前に監督が「みんな、もっとブリブリ振っていこうぜ」と伝えていたという。この内容が掲載された夜の試合で、巨人は球団タイ記録の9連打を含めて18得点。私はドームで観戦しながら「紙面をつくる人は流れがハマって記者冥利(みょうり)に尽きるだろうな」と思った。
しみじみした理由はまだある。プロ野球選手の別の意味での凄(すご)さだ。選手名鑑では推定年俸まで記載されている。各球団の主力はちょっとでも打てなくなったりすると「年俸分働けよ」という声も飛んでくる。公衆の面前でプレーする宿命と言えばそれまでだが全部ガラス張りの毎日って凄い。
これを他ジャンルでも導入するとどうなる? たとえば「萩生田光一2728」とか「二階俊博3526」とか。例の裏金問題の不記載額(万円)である。野球選手の年俸みたいにメディアはしばらく記載してみては。本人たちは時が経(た)てば国民は忘れると思っているフシがあるからだ。
先日も「政治資金問題で倫理審査を議決された自民の44人、出席意向はゼロ」(読売新聞オンライン)というニュースがあった。これでは解明が進まない。ワイドショーでは「いつまで裏金問題をやっているのか」と言うコメンテーターもいるようだが、それは「いつまでも明らかにしないから」だ。解明しようとする側がしつこいみたいな言説にはうんざり。
そもそも自分の裏金問題をクリアに説明できない人たちになぜ国の予算を任せられるのか。疑問だ。不記載額は忘れずにいたい。記載しておきたい。地元支持者からは「不記載分働けよ」と声が飛んでくるかもしれないが。(時事芸人)