ヨットによる単独無寄港・無補給の世界一周を目指し、昨年10月22日に兵庫県西宮市から出航した同市の24歳会社員・木村啓嗣(ひろつぐ)さんが8日、ゴールに設定した和歌山県沖の紀伊水道に到着。日本人最年少記録を約30年ぶりに更新した。9日に兵庫・新西宮ヨットハーバーで仲間からの出迎えを受けた。
木村さんは2022年にも挑んだが、機械の故障などで断念。今回が2度目の挑戦となった。日焼けで赤くなった顔に満面の笑みを浮かべ「無事世界一周回ってここまで戻ってこられたことを、非常にうれしく思います。応援してくれた皆さん、本当にありがとうございます」と感謝した。これまでの日本記録は海洋冒険家の白石康次郎さんが1994年に達成した26歳10か月。当時、世界最年少でもあったこの記録を、木村さんは約2年1か月更新した。
22年に83歳で世界最高齢となる単独無寄港の太平洋横断に成功した、海洋冒険家の堀江謙一さんも駆けつけた。大阪湾を出発して、また大阪湾へ帰ってくるノンストップの世界一周。堀江さんは「出発点が目的地ですから、最初から行かなくてよかったんじゃないかと言われそうなバカバカしい航海ですが、そのバカバカしい航海をよく頑張られて見事達成されまして、おめでとうございます」と、冗談を交えて出迎えた。また日本最年少記録を更新したことにも触れ「木村さんのこれからの役目は、世界最年長記録の無寄港世界一周。これを目標に頑張っていただきたいと思っております」とユーモアたっぷりに偉業をたたえた。
木村さんは大分県日出町出身。大分県立別府翔青高校時代はヨット部で国体に出場するなど活躍。卒業後は海上自衛官を経て総合リサイクル会社「浜田」に就職し、同社社長らの支援で世界一周に挑戦した。2度目の今回は、出航してから太平洋を南下。南米大陸最南端のホーン岬(チリ)や南アフリカの喜望峰、オーストラリア沖を通過するコースを、積み込んだ保存食を頼りに一度も上陸せず航行した。到着した8日夜は久しぶりに揺れないベッドで熟睡。「今朝は寝坊しました」と苦笑いを浮かべた。今は「会いたい人とご飯が食べられる、行きたい時にトイレに行ける日常的なことをしたいですね」と笑った。
冒険の日々は、自身の交流サイト(SNS)「インスタグラム」で発信し続けた。「赤道の海水をゲット。僕の唯一のお土産」(47日目)「イルカが並走してくれました」(104日目)などと海上生活を楽しむ様子を投稿。出迎えた母・妃佐美さんは「1日2回更新されるインスタやストーリを見ていました。何も上がらない時は長男に電話してもらっていました。連絡がないと心配で。無事に帰ってきてくれてうれしいですし、ホッとしました」と笑顔。姉の咲貴さんも「安心しました」とほほ笑んだ。