名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑 第5回 30年間で約300点描いた! モネが『睡蓮』で表現したかったこと

なぜ西洋画にはヌードが多いの? ピカソって本当に絵がうまい?……そんな絵画の疑問、ありませんか? 名画がなぜ名画なのかよくわからない、という人も多いでしょう。1年に300件以上の美術展に足を運んでレビューを発信する著者が「名画のひみつ」を解き明かし、おもしろくてためになる絵画の知識を解説する『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)より、一部を再編集してご紹介します。

今回の名画は『睡蓮』。
30年間で約300点 『睡蓮』で表現したかったこと
“印象派”という絵画のスタイルを作り上げ、その代表的な画家として知られるのが、クロード・モネです。

モネといえば、睡蓮の絵を思い出す人も多いでしょう。モチーフとなったのは、日本から取り寄せて自宅の池で育てていた睡蓮。約30年間に描かれた作品は200点とも300点とも言われていますが、『睡蓮』には間違いなく、モネの技術のすべてが表れています。

とはいえ、花そのものに興味があって描いたのではありません。モネは、時間や天気などでどんどん変わっていく“光”というものを、そのように描いたらよいかを研究していました。水面に浮かぶ睡蓮は光の反映を描く格好の口実にもなりました。いつでも観察でき、描きたいと思ったときにすぐ描けるので、自宅の池にある睡蓮をモデルにしたのです。

ほかにも、同じテーマを異なる時間帯で描いた作品があり、モネにとって“光”がとても大切だったことがわかります。
モネの集大成的な『睡蓮』連作
オランジュリー美術館内には「モネルーム」があり、8点の連作『睡蓮』が展示されています。楕円形の部屋の壁沿いに横長の大きな作品が展示され、ガラス天井からの自然光で観察できます。
モネの作品を多く持つパリの二つの美術館
フランスのパリには、モネの作品をたくさん所蔵している美術館が二つあります。ひとつは「モネルーム」のあるオランジュリー美術館。もう一つが、世界最大級のモネコレクションを持つマルモッタン・モネ美術館です。モネの次男からの寄贈などにより、睡蓮やそのほかの多くの作品が観られます。
【豆知識】
モネは晩年、白内障という病気で視力が悪くなってしまいました。ですが、亡くなる直前まで鉛筆を握り、目が見えない中でもたくさんの絵を描きました。それらは、現代アートのような抽象的な作品です。
モネ本人から譲り受けた作品
大原美術館の作品収集を担当していた児島虎次郎が、フランスにあるモネの家に行き、モネ本人から直接譲ってもらったという作品です。

日本一の西洋画の美術館でモネを
離れて観るのと近くで観るのとでは大きく印象の異なる、モネの革新性がわかる貴重な作品です。

晩年に描かれた抽象画的な作品
水面に垂れ下がる柳をモチーフとした6点の作品のうちの一つ。『睡蓮』シリーズの中でも重厚で抽象的な画風となっています。

初期に描かれた写実的な作品
水面に浮かぶ睡蓮からクローズアップして描いたシリーズの中でも初期の作品。

次回のテーマは「ゴッホも真似た! 西洋で“ジャポニスム”が盛り上がった本当の理由」です。お楽しみに!

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『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)著者:青い日記帳 監修:川瀬佑介

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青い日記帳 監修:川瀬佑介 【著者:青い日記帳】Tak(たけ)の愛称でブログ「青い日記帳」を主宰。1年に300以上の展覧会に足を運んでレビューを行うほか、美術の本質を見極めながら、広くて深くてしなやかな美術鑑賞法発信。「敷居の高かった美術鑑賞が身近になった」「絵の見方がわかるようになった」などと好評を得ている。著書に『いちばんやさしい美術鑑賞 』『 失われたアートの謎を 解く』(ともに筑摩書房)、『カフェのある美術館』(世界文化社)、『美術展の手帖』(小学館)、『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)がある。 【監修:川瀬佑介】国立西洋美術館主任研究員。専門は17世紀を中心とするスペイン・イタリア美術史。企画した展覧会に『カラヴァッジョ』展、『スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた』展など、著書に『マンガで教養 はじめての洋絵画』(朝日新聞出版)などがある。 この著者の記事一覧はこちら

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