[社説]中学給食無償化へ 国主導の支援につなげ

県が、中学生の給食費無償化に向けての支援策を発表した。
本来なら国が責任を持って取り組むべき課題だが、それを待ってはいられないという判断だろう。子育て家庭が幅広く利用できるよう、全国一律の施策につなげたい。
支援は2025年度からで、対象は公立の中学校。市町村が学校給食費を無償化した場合、必要経費の半額に当たる約10億円を県が補助する。
県内41市町村中、現在、無償化を実施しているのは17市町村、一部補助が18市町村、補助なしが6町村となっている。
保護者の負担感には、ばらつきがある。
玉城デニー知事は22年の知事選で、「学校給食の無償化」を公約に掲げた。無償化に向けた今回の取り組みを「子育て世帯の経済的負担を軽減することは未来への投資」と強調する。
ただ、県の動きを評価する声がある一方、半分を負担することになる市町村からは「唐突だ」との声ももれる。
自治体の財政状況によって格差が広がらないか、懸念してのことだろう。
県は今後、市町村への説明会を予定している。
自治体による支援を後押しするという性格の事業でもある。市町村の話に耳を傾けた上で、丁寧な合意形成が求められる。
物価高が家計を直撃する中、給食が「命綱」となっている子どももいる。その危機感を共有し、議論を進めてもらいたい。
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限られた財源の中で中学生を先行することについては、「進学や部活動などで教育費の負担が大きい」ためだとする。
県が昨年、児童生徒の保護者を対象に実施した学校給食実態調査によると、特に中学生のいる家庭で給食費以外にも進学ための費用などが負担となっているという結果が出た。
この調査では、回答者の約4割が給食費の負担を「非常に感じる」あるいは「感じる」と答えている。さらに1割強が「支払いが滞った」経験を持っていた。
負担感を抱いている保護者の割合は、小学校と中学校で大差はない。
県内の給食費の平均月額は、小学生が4023円、中学生が4534円。
小学校を含めると、給食費の無償化には計58億円が必要となる。
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給食費を巡っては、東京23区で無償化が実施されるなど、全国で無償にしたり軽減したりする動きが広がっている。自治体の踏み込んだ対策が示すのは、国の子育てに関する経済支援の弱さである。
政府が昨年末に閣議決定した「こども大綱」は、無償化に向けた課題の整理に取り組むとしているが、動きは鈍い。
学校給食は教育活動の一環と位置付けられる。無償化は、心身の健全な発達を目指す「食の権利」の保障でもある。
やはり必要なのは、地域間格差を広げない国主導の取り組みだ。

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