なぜ西洋画にはヌードが多いの? ピカソって本当に絵がうまい?……そんな絵画の疑問、ありませんか? 名画がなぜ名画なのかよくわからない、という人も多いでしょう。1年に300件以上の美術展に足を運んでレビューを発信する著者が「名画のひみつ」を解き明かし、おもしろくてためになる絵画の知識を解説する『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)より、一部を再編集してご紹介します。
今回の名画は『ぶらんこ』。
貴族の生活をのぞき見! フラゴナール『ぶらんこ』
緑豊かな庭で、ブランコに乗って遊ぶ女性とブランコを押す男性の楽しそうな様子。きれいな絵です。
この作品は、ロココ絵画を代表する絵として知られます。ロココとは、18世紀フランス宮廷から始まった美術のスタイル。建物やインテリア、服装などで華やかな装飾のものが作られ、絵画では自由きままな表現で描かれました。
貴族の注文によって描かれたこの作品。よく見ると、画面左下にも男性の姿があります。彼はどうやら、風でめくれたドレスから見える女性の足をこっそり眺めているよう。じつは男性は絵の注文主である男爵で、女性は彼の恋人。この絵はなんと、ちょっとエッチな大人の恋愛の様子を描いているのです。
作者のジャン・オノレ・フラゴナールは、当時の大人の恋愛の様子を多く描き、貴族に大人気でした。現在では、絵の内容はともかく、筆致や構図などの完成度が高く、とても美しい絵として評価されています。
大人の恋愛を素敵な雰囲気で描いた
若いうちにコンクールで入賞するなど、才能に恵まれたフラゴナールの代表作。服装や庭園の様子など、ロココ美術の特徴が表れています。
鍵をかけた部屋で二人っきり!
扉に鍵をかけた瞬間を描いたこの作品は、明るいところと暗いところを描くことで、ドラマチックな雰囲気に。
【豆知識】
『ぶらんこ』の二人は、どうやら秘密の恋をしていたようです。というのも、画面左端のキューピッドの彫刻が、唇に指をあて「しー、内緒だよ」というようなポーズをとっているからです。
次回のテーマは「30年間で約300点描いた! モネが『睡蓮』で表現したかったこと」です。お楽しみに!
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『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)著者:青い日記帳 監修:川瀬佑介
「モナ・リザの絵はなぜあんなに有名なの?」「ピカソって本当に絵がうまい?」――そんな“絵画の疑問”、ありませんか? 国内外の美術展の詳細なレビューで圧倒的な支持を誇る著者が、 『モナ・リザ』からバンクシーまで、「名画がなぜ名画と呼ばれるのか」を解き明かす。絵画にまつわるおもしろくてためになる知識を解説する同書は、 AMAZONで好評発売中です。
青い日記帳 監修:川瀬佑介 【著者:青い日記帳】Tak(たけ)の愛称でブログ「青い日記帳」を主宰。1年に300以上の展覧会に足を運んでレビューを行うほか、美術の本質を見極めながら、広くて深くてしなやかな美術鑑賞法発信。「敷居の高かった美術鑑賞が身近になった」「絵の見方がわかるようになった」などと好評を得ている。著書に『いちばんやさしい美術鑑賞 』『 失われたアートの謎を 解く』(ともに筑摩書房)、『カフェのある美術館』(世界文化社)、『美術展の手帖』(小学館)、『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)がある。 【監修:川瀬佑介】国立西洋美術館主任研究員。専門は17世紀を中心とするスペイン・イタリア美術史。企画した展覧会に『カラヴァッジョ』展、『スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた』展など、著書に『マンガで教養 はじめての洋絵画』(朝日新聞出版)などがある。 この著者の記事一覧はこちら