足立区は28日、メディア発表会で「マイナスイメージを払拭していく」と高らかに宣言した。これまで「治安が悪い」というイメージが先行していた足立区。ゲスト登壇した、お笑いコンビ マシンガンズの滝沢秀一さんは「ボクが若い頃、足立区で石を投げればヤンキーに当たると言われていました」と苦笑いで当時を振り返るが―――。
現在は治安も回復しているのだろうか? そして今後、どのような方法でイメージの回復に努めていくのだろうか?
○■ワースト1位は過去の話
JR常磐線 北千住駅から徒歩1分にある東京電機大学(東京千住キャンパス)で開催されたメディア発表会。その冒頭、足立区 シティプロモーション課長の栗木希氏は「今日はこれだけでも覚えて帰ってください。世間からは治安が悪いと言われている足立区ですが、それは過去の話なんです」と切り出す。
「確かに足立区の刑法犯認知件数は、平成13年のピーク時には16,843件ありました。その数の多さで23区中のワースト1位を4年連続で記録した時代もあります。ただ令和3年には3,212件とピークから8割も減少しました。それに伴って『足立区は治安が良い』とイメージする区民の割合も59.5%(令和5年度)まで上昇しています」(栗木課長)
足立区では平成22年にシティプロモーション課を立ち上げ、ポジティブなイメージの創出に努めてきた。近藤区長は「大学誘致を成功させたことで足立区に変化が起きた」と常々口にしているという。
「千住には大学が5校あるほか、花畑エリアにも文教大学が入りました。学生さんたちのおかげで街に活気が出ています。江北エリアには悲願だった大学病院も誘致できました」と栗木課長。今後も各地でスポーツ施設、複合型商業施設、大型マンションがオープンを予定しており、「足立区はいま100年に1度の変化が起きています」とアピールする。
しかし区外に住む人たちが抱く足立区のイメージは、依然として改善しない。令和5年度のイメージ調査でも、足立区の治安について59.8%の人が「悪い」と回答している。
「その理由について尋ねると『なんとなく』や『メディアの情報で見た』などの回答が大多数を占めました。ちなみに足立区民は59.5%が『治安が良い』と回答しているのも事実です。このギャップを埋めていかなければなりません。区外からイメージが悪い状況を放置すると、自分の住む街に誇りを持てない区民や事業者が流出する恐れがあり、果ては街の活気や魅力が失われることにつながります」と栗木課長。
そこで今回、イメージを改善すべく大規模なプロモーションを仕掛けていく。その旗印となるキーワードは「ワケあり区、足立区。」に定めた。
栗木課長は「世間のイメージを逆手にとりました。足立区で何かをするにはワケがある、といった形で私たちの街の『先進性』や『プラスの魅力』を積極的に発信していきます」と意気込む。
ポスターも複数のパターンを制作した。北千住駅構内の乗り換え通路、東武線電車内のドア横広告、トレインビジョンなどに展開し、インターネットの特設サイトでも足立区の良さをPRしていくという。
足立区では、こうしたプロモーション施策により(区制100周年を迎える)令和14年度までに、足立区に良好なイメージを抱く近郊在住者の割合を現在の約20%から50%まで上昇させたい考えだ。
栗木課長は「ぜひ、区外の皆さんにも足立区のリアルを知っていただきたい。古い情報を新しい情報にアップデートしてもらうべく、区でも皆様に積極的に働きかけを行ってまいります」とまとめた。
○■足立区をPRしていく
このあと足立区で3歳から22歳までを過ごしたマシンガンズの滝沢秀一さんがゲストとして登壇し、栗木課長とトークセッションを行った。滝沢さんは「よく『足立区で育ちました』って言うと心配してくる人がいます。昔の足立区にも良いところはたくさんあった。今後はそういう側面が広く世間に知られていくと良いですね」と話す。
ここで栗木課長は、治安対策の取り組みが進んでいるアメリカの事例をピックアップ。ニューヨーク市では、軽微な犯罪を取り締まることが治安につながる、という『割れ窓理論』の考えが一般化しているとし、これにならって足立区でもビューティフル・ウィンドウズ運動を広めていると紹介した。
すると、お笑い芸人をやりながらゴミ清掃員としても働いている滝沢さんは「よく分かります。治安の悪い地域は一般的にゴミ集積所も汚い。放置自転車、落書き、不法投棄などの対策をしていくことも大事だと思います」と応じる。
また、若い頃は北千住の飲み屋でアルバイトをしていた、古い街には素敵な老舗のお店がたくさんある、と滝沢さん。コンビがTHE SECOND ~漫才トーナメント~(2023年)で準優勝したことにちなんで「足立区は23区の中のTHE SECONDだと思うんです。マシンガンズが世間から『漫才の世界にこんなオジサンたちがいたんだ』と再認識してもらえたように、改めて、足立区にある老舗の飲み屋などにも注目してほしい」。
このあとも大先輩であるビートたけしが、生まれ育った足立区をときどきネタにしていることを引き合いに出して「ボクたちも全国区のテレビに出られたときは、マシンガンズのネタとして、何か足立区のことを言えたら良いですね」と話すなど、足立区をPRするアイデアは尽きないようだった。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら