【千葉魂】 苦しみの先に見た光景 高部、支援の気持ち力に 千葉ロッテ

久しぶりの場所だった。高部瑛斗外野手が5月24日のホークス戦でお立ち台に上がった。本拠地ZOZOマリンスタジアムでのヒーローインタビューは2022年9月12日ファイターズ戦以来。遠い記憶の向こう。忘れかけていた場所だった。
「ちょっと不思議な感じがしました」。ヒーローを終えてロッカーに戻ってきた高部はポツリとつぶやいた。お立ち台の上で脳裏に浮かんだのはここまで支えてくれた人たちの顔だった。
「ボクがけがで苦しんでいるときに支えてくれた家族やスタッフにいいところを見せたいという一心でやってる。そういう人たちに喜んでもらいたい」と高部。一昨年は44盗塁で盗塁王を獲得。ゴールデングラブ賞を受賞するなど華やかなシーズンを過ごしたが昨年は開幕前に右肩を痛め、1軍未出場で1年を終えた。3月に右肩を肉離れ。4月にも右肩を痛めるとなかなか状態が上向くことなく復帰と離脱を繰り返した1年だった。8月に胸郭出口症候群と診断されると9月1日に群馬県館林市の病院にて第一肋骨切除術を行い、新たな1年で再起をかけた。
リハビリの日々を高部は「果てしなく長く感じた。何回、もういいやと諦めそうになったか。兆しが見えたと思ったら、悪くなる。また兆しが見えたと思ったら悪くなる。その繰り返しでした」と話す。暗いトンネルの中を歩くような毎日を耐え、抜け出すことができたのは支えてくれた存在がいたから。「トレーナーの皆さまが本当に支えてくださった。毎日、病院についてきてくれましたし、なにかいい方法はないかといろいろと調べたり模索してくれた。家族もいつも励ましてくれた。そんな人たちがいるのに自分が諦めてはいけない。そういう思いでした」と振り返る。
1軍昇格が決まった時、2軍のみんなが喜んでくれた。サブロー2軍監督からは「もう、帰ってくるなよ」と送り出された。リハビリに付き合ってくれたトレーナー陣も自分のことのようにうれしそうにしてくれた。「周りのみなさんの笑顔が忘れられない。自分が活躍することでもっと喜んでもらいたいと思った」と誓った。
今、背番号「38」が躍動している。5月22日のライオンズ戦(ベルーナドーム)では3安打猛打賞の固め打ち。守っても自慢の脚力を存分に生かし、中堅手として幾度となくヒット性の当たりをアウトにした。
苦しい日々に、支えてくれた人たちがいた。だから何度も心が折れそうになりながらも一歩ずつ前に進んだ。時には後退した時もあった。しかし、諦めなかった。すると光が差し、長いトンネルの出口が見えた。素晴らしい光景が広がっていた。高部は野球ができる喜びを知っている。苦しい日々を乗り越えて、支えてくれた人、応援してくれる人の気持ちと一緒にグラウンドを舞っている。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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