今回は「企業の『生理休暇』」について考えます。
去年8月に行った民間の調査によると、社会人の女性で生理休暇を取得したことのある人の割合は12.8%にとどまるとのことです。
実際に「取りづらい」とはどういう状況なのかというと、これは私の実体験も含めてですが女性であっても男性と変わらない重責を担う仕事に従事していて、業務では常に緊張を感じている状態なのにも関わらず、一か月の三分の一近くを腹痛や貧血の症状で働くのは本当に辛いことなのですが、生理休暇を取るために男性の上司にそれを伝えるのは生理周期が知られるようで嫌な思いをしたり、上司によっては「あの人は平気なのに、あなたはダメなの?」と思われるのではないかという不安があります。生理休暇は、労働基準法で定められているにも関わらず、生理休暇があったとしても会社によっては勤務上は無給の扱いになっていたりもします。
そこで、会社の課題を考える議論の中で生理休暇が議題に上がり、すぐさま導入した会社が都内にあることを知って話をお聞きました。ITの広告会社の、株式会社アドフレックス・コミュニケーションズです。生理休暇を導入したいきさつを、代表取締役の桑畑治彦さんはこう話します。
桑畑さん
改革プロジェクトみたいな、男女を交えて今の会社の課題って何みたいな事を議論する場がありまして。その中で男女の違いって何なんだろうねっていう議論があって、ある社員が「子宮があるかないかだ」という話があって。そうすると、それが半月ぐらいとか一週間、二週間とか女性は苦しい中で働いているからちょっとフェアじゃないねというような話があって。そういう意味だと生理休暇って世の中にあるなかでも、無給の会社が多い中では、そこを有給にして月に一回取れるようにしていこうという話でまず始めて。
男女間をフェアにするために「有給」として生理休暇を取れるようにしたということです。
さらにこのアドフレックスでは、生理休暇を始めたことで、女性の生理痛を疑似体験できる「生理痛体験研修」を実施しようという話になったそうです。これはお腹の部分に特殊な装置を付けて痛みを疑似的に体感するものなんですが、研修を受けた男性社員の西村大輔さんに感想を聞きました。
西村さん
私これまで4社くらい経験しているんですけれども、どの会社でもそこまで生理休暇や生理痛にフォーカスしたような会社はなかったので、どんな感じなんだろうというのが率直な感想でした。実際に研修をしてみて、生理痛の疑似体験ということで、まぁかなりやっぱり痛くてですね。この痛みに耐えながら仕事するっていうのはとてもじゃないけれど無理だなと思いました。
こうした研修も経て、アドフレックスの生理休暇がさらに充実したものになっていったそうです。再び、桑畑さんです。
桑畑さん
生理痛も一日っていう単位ではなくて「時間有休っていう形で1時間単位で取れるような形にしていこうよ」みたいな、割と柔軟さを持てるようになりましたし、男性もそれに対しても理解できるようになってきたっていうところはやっぱりありましたね。
時間単位で有給の生理休暇を取れるようにしたことで、しんどさを感じた時に例えばほんの一時間だけでも横になり休むこともできます。これは仕事のパフォーマンスの向上につながりますよね。アドフレックスは80人規模の会社ならではのスピード感と柔軟性で、こうして生理休暇の制度が整いました。
一方、当事者の女性にもいい効果が現れているようです。「生理痛体験研修」にも参加した瀧口はるかさんは、こうした研修や職場の風土のおかげで、社内で生理についてオープンに話しやすくなったと言います。
瀧口さん
やっぱり役職が違ったりとかする、部署が違う人とかと話すのって、なかなかプライベートな部分かなと思ってたんですけれども、研修があってから、年齢が違う、役職が違う女性の方ともフランクに話すことができるようになったなっていうのは、同じ女性のでも色々個人差があって自分だけの感覚になっちゃいけないなというのは改めて思った実感であったと思います。
加えて、代表の桑畑さんに教えてもらったのですが、生理休暇を充実させたアドフレックスでは、女性の離職率が減ったというのがデータとして明らかに出ているそうです。併せて、産休・育休から戻る社員も増えているとのことでした。
きょうは、アドフレックスの実例をご紹介しましたが、例えば他にも衛生用品メーカーのユニ・チャームが企業向けに行う「生理研修」などもあり、講義方式で生理の基礎知識を学んだり、職種に合った生理ケアの知識などをこれまで数百の企業に広めてきたそうです。すべての企業において、女性が生理休暇を取っても違和感のない社会になる事を願います。