ダイキンはこのほど、エアコンの効果的な節電方法と具体的な節電効果の検証結果を発表した。
節電を意識したエアコンの適切な使用が求められる中、同社が2023年7月に実施した「エアコンの節電に関する実態調査」では、約6割がエアコンの節電方法を誤解している結果に。そこで今回、節電方法として誤解されやすい4つのケースについて、効果的な節電方法と具体的な節電効果を検証。さらに、蒸し暑い夏の睡眠時、エアコンの使い方として迷いがちな「切タイマー運転」と「つけっぱなし運転」についても、暑さ指数「WBGT」の観点から検証が実施された。
○検証1.エアコン冷房の風量設定は「弱」と「自動」でどちらが節電?
エアコン冷房の風量設定「弱」と「自動」それぞれで、日中11時間(8:00~19:00)つけっぱなしにして消費電力量を計測し、1ヵ月あたりの電気料金の違いを調査したところ、風量「弱」が3.85kWh、「自動」が2.79kWhとなり、風量「自動」の方が消費電力量が約3割少ないという結果になった。1か月換算では、風量「自動」は「水平」と比べて電気代が約990円少なくなる。吹出口からの気流が弱い風量「弱」の方が節電につながりそうに思えるが、今回の調査では、風量「自動」の方が節電につながる結果となった。
このような結果になる理由は、風量「弱」にすると、室内機の中にある冷たくなった熱交換器を通過する空気の量が減り、部屋の中を涼しくするのに時間がかかるからだという。そのため、風量「自動」に比べて風量「弱」の方が、圧縮機の運転にかかる負荷が増加し、より多くの電気を使ってしまうことになる。
○検証2.エアコン冷房の風向設定は「ななめ下」と「水平」でどちらが節電?
エアコン冷房の風向設定「ななめ下」と「水平」それぞれで、日中11時間(8:00~19:00)つけっぱなしにして消費電力量を計測し、1ヵ月あたりの電気料金の違いを調査した結果、「ななめ下」が3.76kWh、「水平」が2.77kWhとなり、風向「水平」の方が消費電力量が約3割少ないという結果になった。1か月換算では風向「水平」は「ななめ下」と比べて電気代が約930円少なくなる。人がいる場所に冷たい風を直接送る「ななめ下」の方が節電につながりそうに思えるが、今回の調査では、風向「水平」の方が節電につながる結果となった。
このような結果になる理由は、冷たい空気は重く、床付近にたまる性質があるからだという。風向を「ななめ下」にすると床付近に冷たい空気がたまる一方で、天井付近には暖気がたまる。一般的なエアコンは、高い位置にある室内機内部の温度センサーで室温を判断する。天井に暖気がたまっていると、床付近が十分涼しくなっていても、エアコンはさらに部屋を涼しくしようと必要以上に運転してしまう。風向を「水平」にすると、冷たい風が天井付近から床方向に自然に下りていくので、余計な電力消費を抑えながら、部屋全体を涼しくすることができる。
○設定温度を「1℃下げる」のと、風量設定を「強」にするのとでは、どちらが節電?
エアコン冷房を使っていても暑く感じることがある真夏の日中(13時~15時)、設定温度を1℃下げるのと、風量設定を「強」にするのとでは、どちらが節電になるのか、消費電力量を計測し、電気料金の違いを調査した。
エアコンの冷房を使っていても暑さを感じる時、設定温度を下げるのが一般的だが、実は、風量を「強」にすることでも涼しさを感じることができると判明。設定温度を1℃下げた場合と風量を「強」にした場合の消費電力量を比較した結果、設定温度を「1℃下げる」と1.13kWh、風量「強」にすると0.52kWhとなり、風量「強」は、設定温度を「1℃下げる」場合と比べて消費電力量が約半分になった。
このような結果になる理由は、設定温度を下げたとき、エアコンは室内の空気中からより多くの熱を集めるため、圧縮機の運転を強めるからだという。一方で、風量を「強」にすると室内機のファンの音が大きくなり、電気をたくさん使っているように感じるが、ファンが使う電力は、圧縮機が消費する電力と比べるとわずか。人の体感温度は、室温だけでなく、湿度や気流によっても変化する。室温を下げる代わりに風量を強くすることで体感温度が下がり、涼しく感じられる。
○SNSで話題の室外機に濡れタオルは、「あり」と「なし」でどちらが節電?
近年SNSで話題となっている、エアコンの室外機の上に濡れタオルを設置すると節電になるという噂を検証した。室外機の上の濡れタオル「あり」と「なし」それぞれで、日中11時間(8:00~19:00)つけっぱなしにして消費電力量を計測し、1ヵ月あたりの電気料金の違いを調査した結果、消費電力量は濡れタオル「あり」が3.87kWh、「なし」が2.77kWhとなり、濡れタオル「なし」は消費電力量が約3割少ないという結果に。1か月換算では、濡れタオル「なし」は「あり」と比べて電気代が約1,020円少なくなると判明した。
このような結果になる理由は、濡れタオルが室外機側面の吸込口や吹出口の一部に垂れ下がり、空気の通り道をふさいでしまったためと考えられる。エアコンは、室外機の吸込口や吹出口の空気の流れを妨げられると運転効率が落ち、その分余計に電力を使ってしまう。室外機の上に置いたタオルが乾いて室外機側面に大きく垂れ下がると、吸込口や吹出口のより多くの範囲をふさいでしまい、さらに効率が低下してしまうので、注意が必要だという。
エアコンは、室外機周辺の空気の温度や、室外機の側面や背面にある熱交換器の温度が下がれば、効率的な運転につながる。そのため、室外機に日陰を作ったり、室外機周辺に打ち水をしたりすると節電効果が期待できる。
○夏の睡眠時のエアコンは、「切タイマー運転」と「つけっぱなし運転」どちらがおすすめ?
夏場の睡眠時にエアコンを使う際のおすすめは「切タイマー運転」(就寝後3時間でエアコンOFF)か、朝まで「つけっぱなし運転」か暑さ指数「WBGT」の観点から調査した結果、つけっぱなし運転の場合、睡眠時の暑さ指数(WBGT)は一般的に危険性が少ないと言われる23℃ほどに抑えられる結果となった。一方のタイマー運転の場合の暑さ指数(WBGT)は、明け方には熱中症への警戒が必要とされる25℃近くにまで達した。夜間の温度上昇は、夜中の目覚め、睡眠の質の低下にもつながる可能性もあることから注意が必要。気温や湿度が高い日は、朝まで「つけっぱなし」運転の方が快適といえる。