令和の日本で昔の名車と暮らす日々をお伝えする本連載。これまでのメルセデス・ベンツ「W124」に代わり、今回から主役を務めるクルマはフォルクスワーゲンの「ゴルフⅡ」だ。今回は、なぜゴルフⅡを買ったのか、初期整備費用を含めいくらくらいになったのかなどについてお話ししたい。
→メルセデス・ベンツ「W124」との日々を振り返る
なぜ今、ゴルフⅡなのか
前回の「名車と暮らせば」でお伝えした通り、メルセデスのW124に代わって今回から本連載の主役を務めるのがフォルクスワーゲン(VW)の「ゴルフⅡ」(19E型)だ。
なぜ今、ゴルフⅡなのか。理由はいくつもあるが、主なものは以下の通りだ。
筆者が国産車から乗り換えて初めて買った“外車”が1993年式のVW「ゴルフⅢ GLi」だった。ゴルフはその後、高性能な2.8LのV型6気筒エンジンを搭載した「ゴルフⅢ VR6」、「ゴルフⅣ GTI」をCOXがフルチューンした「COX C18-TR」と乗り継いだのだが、実をいうと、最初に欲しいと思ったのがゴルフⅡだった。残念ながらゴルフⅡは前年に販売が終了していて、新車を手に入れるとしたら当時はゴルフⅢを選ぶしかなかったのだ(それはそれで楽しい思い出をたくさん作ってくれたのだが)。それから30年以上経った今年は「ゴルフ誕生50周年」の年でもあり、当初の希望を達成するなら今しかないと思い立ったわけである。
実はゴルフⅡが欲しいと言いだしたのは筆者の長男。買うなら専門店でということで、昔から知っていた「スピニングガレージ」(神奈川県相模原市)を訪れたのが2023年11月だった。広い展示スペースにはさまざまなゴルフⅡが置かれていて、見ているうちに「ミイラ取りがミイラに」なり、自分が欲しくなったという話。それまで乗っていたメルセデスW124セダンについては、長男が「オヤジがクルマのライターとしてW124をまだキープしておきたいのなら、俺が乗るよ」と言ってくれたので、迷わずゴルフ購入を決定した。
四角いボディに丸目のスタイルは今見てもシンプルでカッコいい。初代ゴルフをデザインしたのはあのジウジアーロで、Ⅱは社内デザインとなったものの初代のデザインコンセプトをキープしたのが成功の元だった。
「最善か無か」を標榜して名車と呼ばれたメルセデスW124に10年(ステーションワゴンに7年、セダンに3年)乗ってきたので、そろそろ次の名車、そしてちょっと小さなクルマ(ゴルフⅡは全長4,050mm、全幅1,660mm、全高1,410mmで当然ながら5ナンバーサイズ)に乗りたいというのはなんとなくあった。
乗る前に手入れをした場所は?
スピニングガレージの広い展示スペースに並ぶ数々のゴルフⅡ(クラシックラインのカブリオレやセダンのジェッタもある)の中から選んだのが、1990年式の「ゴルフⅡ GLi」だ。4ドア3速ATモデルで、ボディカラーはロイヤルブルーメタリック(いわゆる紺メタ)。前のオーナーさんが訳あって手放したばかりで、走行距離は10万キロとちょっと。直前までスピニングガレージでメンテを行なっていたので機械的な問題はなさそうだし、車検が2025年3月まで残っているので納車までの期間も比較的短そう、というのが決め手になった。
乗る前に手入れをしたいと思う部分がいくつかあった。まずエクステリアでいうと、①日焼けで一部が変色したボンネット、②塗り直しの影響でボディと色味が合っていない右前ドア、③リアの傷、③VWエンブレムなどの劣化だ。同行した妻からは「このままでも古いクルマらしくていいんじゃない?」との言葉もあったのだが、やっぱり、もう少しビシッとしたクルマに仕上げたかったので、板金塗装はやってもらうことにした(外部の専門業者にお願いするとのこと)。
そのままの状態でのボディ価格は約169万円。エンジンやデフのオイル類、錆びたマフラー、エアコンコンプレッサ、プラグやブレーキパッド、外装のゴムパーツ、キーシリンダーなど、キチンと走るために必要な交換パーツとその工賃が約41万円。さらに、先ほどの板金塗装やオーディオ、ナビ類の交換工賃(それぞれの現物は別途持ち込み必要で合計10万円程度)、キーレスやヘッドライトのLEDバルブへの交換、Fスピーカーの交換など、おすすめ施工代が約38万円。合計260万円ほどで手に入りそうだ。
スピニングガレージの田中延和代表に話を聞くと、「ゴルフⅡの価格は少し高めになってきています。自分としては、年々高騰してきているパーツ代に比例するくらいに抑えて出したいところなんですが、良い個体が減ってきていることや、ゴルフⅡのことをあまり知らない若い人にも人気がでてきている(とってもいいことだ)ことなどもあり、こんな価格になってしまっています」とのこと。売りに出るゴルフⅡがあれば、いまでも北海道から九州まで、自走でクルマを引き取りに行くそうだ。
筆者のGLiの納車時期ついては、早いとはいえそれでも2024年の2月~3月(2023年11月時点)になりそうとのこと。通常のものだと半年程度は見て欲しいという。確かに、広い工場内には整備中のゴルフがずらり。カレンダーも当分の間は予定で埋まっている。その言葉通り、実際の整備が始まったのは2024年の2月になってから。担当するのは開店当初から在籍するベテランの小磯龍一メカだ。
どんな仕上がりになるのか、乞うご期待!
原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら