学校のネット速度 8割が基準に満たず

文部科学省は「GIGAスクール構想」と名付けて、子どもたちに1台ずつ端末を用意するなど、学校でのICT環境の整備を進めています。「ICT環境」は、タブレット端末やインターネットなどを取り入れて活用する環境のことですが、先月、これに関する驚きの調査結果が出ました。文部科学省 学校情報基盤・教材課長 寺島史朗さんに伺いました。
文部科学省 学校情報基盤・教材課長 寺島史朗さん
1人1台の端末と、高速ネットワーク通信を同時に整備することによって、いろんな学びを充実させたものにしようということが「GIGAスクール構想」のそもそもの肝なわけです。必ず各学校で無線LAN通信環境は、完成はしたんですけれども、使っていけば使っていくほど、ネットが少し止まってしまうな、そういった声もチラホラと聞こえてくるようになりました。このタイミングで、全国のネットワークの環境がどうなっているのかを、全ての公立の小・中・高校を対象にして調査をした。全員が同じ時間に一斉に使う場合にも、授業に支障がないっていうのを、満たさない学校が8割、クリアしたのは2割くらいでした。
全国の公立小・中・高校、合わせておよそ3万2000校に調査したところ、8割が、文部科学省が設定した通信速度に達していませんでした。つまり、端末自体は子どもたちの手元にあるのに、肝心の通信環境、ネット環境が整っていない、スムーズに繋がらない状態だということなんです。文科省の担当者は、各自治体が、最初にとりあえず契約した回線が、十分な速さのものではなかったことが大きな原因だとして、契約の見直しを求めるほか、国の補助金などを使って、不具合の原因をしっかり調べるよう求めています。
実際の現場ではどのような状況だったのか、全国に先駆けてICT教育に力を入れてきた埼玉県戸田市に聞いてみました。戸田市教育委員会教育総務課 金澤哲課長のお話です。
戸田市教育委員会教育総務課 金澤哲課長
国のGIGAスクール構想が始まる少し前の平成30年から、子どもの端末の導入を始めて、令和3年までに1人1台化を完了しています。端末を導入した当時は、学校からインターネットを使っても重い、遅いといった苦情が多数あがってきていました。結局その端末を学校で使っていくにあたっては、その下支えとしてネットワーク環境をしっかり整備しなければいけないということで、ある意味で、いたちごっこで整備をしてきたという苦労があります。
「インターネット環境を使って授業をする」ということ自体、これまで想定していなかったことだったので、繋がりにくいなどの不具合が次々と起きました。そのたびに、少しずつネット環境の増強を行い、今では毎時間、各クラスで端末を使ったとしても快適に使用できるようになったそうです。このほか、戸田市では「ICT支援員」が小中学校を月2回ほど巡回して教師側のサポート体制も整えているということでした。
そして戸田市では昨年度から、黒板とチョークをやめて「電子黒板機能付きのプロジェクター」を全校に導入。板書の時間を減らしテキストをそのままプロジェクターで見せることができたり、子どもの端末と教師がすぐに画面共有できたりして、学びが深まっているそうです。
さらに戸田市の学校のデジタル化は教室だけにとどまらないといいます。再び、戸田市教育委員会教育総務課 金澤哲課長に伺いました。
戸田市教育委員会教育総務課 金澤哲課長
戸田市では教室だけでなく体育館も含めて、ICTを活用した授業がストレスなく行える環境となっています。体育の授業のときに自分の動きを撮影してその場で、撮影した動画を先生に提出することができますし、また、インターネットから参考動画を落として、見たりすることができるので、その場で、自分の動きとインターネットの動画を確認することができます。音楽のときもこれまでは先生が1人1人に対して、演奏させるというような時間があったと思いますけれども、今この端末を使うことで、自分1人で撮影したものを、その場で先生に送れますので、同時にある意味でできるというようなメリットはあると思います。
例えば、音楽の授業でリコーダーを1人1人が吹く時間がありましたが、動画を提出することで、授業の時間を割かなくてもいいんです。戸田市教育委員会の金澤さんは、「学校でどういった学びを進めていくか、それに対して、どういったシステム整備が一番いいのか、よく調査することが必要」と話していました。

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