[社説]嘉手納に大型無人機 一方的押し付けやめよ

一時的とはいえ、なぜ嘉手納なのか。過重な基地負担を背負い続ける地元を無視するような一方的な通告で看過できない。
沖縄防衛局が、米海軍の無人偵察機「MQ4C(トライトン)」2機の嘉手納基地への一時配備を県に伝えた。今月中にも配備され、10月までの展開予定とする。
MQ4Cは全幅約40メートルもある大型の無人偵察機。滞空時間は昨年から嘉手納に常駐するMQ9と同等の約30時間だが、速度が速く航続距離はMQ9の約1・7倍に上る。
より高い高度を飛行し広範囲に洋上の画像などを収集できることから、海洋進出を強める中国などを念頭に、情報収集や警戒監視を強化する狙いがあるとする。
基地負担の増加を懸念する声に対し、政府側は一時配備の間「可能な限り」海上を飛行し、離着陸の頻度は低いと強調する。
しかし、それだけ遠くまで飛べるのであれば、配備の必要はないのではないか。極東最大級と言われる嘉手納は中国との距離の近さからリスクが指摘されており、米軍は戦力を分散させる戦略に移行している。
「一時配備」という運用の在り方にも疑念が湧く。
在日米空軍がMQ9の運用を開始したのは2022年で当初は海上自衛隊の鹿屋航空基地(鹿児島)で1年間の運用だった。その後、日米両政府が延長を決定し嘉手納に移転した経緯がある。
MQ4Cは21年に三沢基地(青森)、22年岩国基地(山口)にも一時配備された。今回も常駐への地ならしではないかとの懸念が深まる。
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嘉手納では常駐していたF15戦闘機の退役に伴い昨年からF22ステルス戦闘機やF16戦闘機、F35Aステルス戦闘機、F15E戦闘機などが相次いで暫定配備されている。
暫定とはいえ常時多数の軍用機が出入りを繰り返し、嘉手納周辺の騒音や悪臭などの被害は増大の一途をたどっている。加えて5カ月連続でパラシュート降下訓練が実施され、運用強化は目に余る。
そうした中でMQ4C配備が県に知らされたのは、県が基地の負担軽減を日米両政府に要請した直後のことだった。嘉手納町をはじめ周辺自治体の落胆はいかばかりか。
無人機配備には隊員の移駐も伴う。MQ9で100人、今回は50人が嘉手納に移駐する。今ある負担の軽減策もおぼつかない上に、さらなる負担増につながりかねず到底認められない。
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無人機の軍事活動が広がる中、事故も増えている。
MQ9は18~22年、海外で少なくとも7件の事故を起こした。国内でも昨年、鹿屋基地でオーバーランする事故を起こしている。
昨年は黒海上空を飛行していた米軍のMQ9がロシア軍戦闘機に衝突され、墜落する事態も発生した。偶発的な衝突のリスクも露呈している。
県内でも配備されれば事故や衝突の危険性が高まることは避けられない。日米両政府は一方的に押し付けるようなやり方をやめ、県民の不安や懸念に向き合うべきだ。

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