[社説]日米環境補足協定 立ち入り認める改定を

日米環境補足協定が発効してから来年で10年を迎える。実際の運用を通して明らかになったのは、自治体の立ち入り調査を阻む「厚い壁」の存在だ。
「期待外れ」というだけにとどまらない。実は協定の存在がマイナスの影響を及ぼしている現実も浮上している。
2015年9月に同協定が発効した際、日本政府は「地位協定の実質的な改定に当たる」と自画自賛した。
6条からなる短い協定は次の二つのケースに限って、基地への立ち入りを認めている。
一つは「環境に影響を及ぼす事故(すなわち、漏出)が現に発生した場合」。もう一つは基地返還に関連して「現地調査(文化財調査を含む)を行う場合」
発がん性が指摘される有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)を巡って県は再三、「基地が汚染源である蓋然(がいぜん)性が高い」として基地内への立ち入りを求めてきた。
嘉手納基地や普天間飛行場周辺の河川、地下水などから高濃度のPFASが検出されており、基地への立ち入り調査は欠かせない。
だが米軍は立ち入りを認めてこなかった。政府も国会で、このケースは環境補足協定の立ち入り要件に該当しない、と米軍に歩調を合わせた。
環境補足協定に基づく日米合同委員会合意によって、立ち入りが認められるのは「現に生じた事故」であって「米軍から事故の通報があった場合」に限られるというのである。
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米軍の裁量次第というわけだ。県内では自治体からも住民からも「期待外れ」という声が多い。というよりも、協定の存在そのものが立ち入りの足かせになっているというべきだろう。
県と宜野湾市が1999年から続けてきた普天間飛行場での埋蔵文化財調査にも一時、ストップがかかった。
基地返還に伴う調査は返還の7カ月前から認めるという考えが示されたことで、返還日すら決まっていない普天間飛行場の立ち入りを認めることはできないという解釈がまかり通り、調査が止められたのである。
何より深刻なのは、基地内PFASの調査が補足協定のためにできないことだ。
米軍は県の立ち入り要請を原状回復(汚染の修復)を前提とした過去の汚染に対する調査と受け止め、そのような原状回復の取り決めがないことを理由に立ち入りを拒否しているという。
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環境補足協定を改めることなしに、県が求める立ち入り調査は実現できそうもない。 基地内に残存する土壌や地下水の汚染に現在の環境補足協定で対応するのは困難だ。
協定を改め、過去の汚染についても立ち入り調査を認めさせる。その代わり調査結果に基づいて汚染を修復する作業を原状回復と位置付け、政府が汚染の浄化に当たる。
そのような方法が取り沙汰されているが、環境汚染に有効に対応するために今、何が必要か。米軍への従属姿勢を改めることなしに問題を解決することはできない。

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