その圧倒的な走行性能で2スト250ccの頂点に君臨したホンダのバイク「NSR250R」。「走る戦闘機」の異名を持つ同モデルは今でも高い人気を誇るレーサーレプリカの代表格だが、中古車販売のトレンドに変化はあるのだろうか。バイク王で聞いてきた。
世界初の技術が盛りだくさんのハイスペックマシン
最新技術満載のレースマシンをベースとするハイスペックな市販モデルを「レーサーレプリカ」と呼ぶ。いわば、国内メーカーが持つ技術の塊といえる存在だ。そのなかで、2スト250ccクラス最強といわれるのがホンダ「NSR250R」である。
2スト250cc市場で先行していたヤマハ「TZR250」に対抗するべく、ホンダが1986年に投入したのが初代NSR250Rの「MC16」だった。ここにスズキ「RG250ガンマ」が加わり、三つ巴のライバル関係が繰り広げられることとなる。そんな中、ホンダが市販二輪車初の「PGMキャブレター」を搭載した1988年型(MC18、通称:ハチハチ)を投入。このモデルが頭ひとつ抜きん出た存在となる。
しかし1990年代に入ると、1992年の新馬力規制やカワサキ「ゼファー」に代表されるネイキッドブームの影響もあり、レーサーレプリカの人気は徐々に下火になっていった。他メーカーがレーサーレプリカから撤退していくなか、ホンダは1993年にNSR250R(MC28)を発売し、1999年まで生産を続けた。
世界初の「PGMメモリーカード」(カードキー)を採用していることもMC28の大きな特徴だ。カード内部のICには固有のシリアルナンバーが記憶させてあり、カードリーダーに差し込めば主電源やコンピューターユニットが起動し、車体内蔵式ハンドルロックが解錠されるという趣向だ。
MC28が搭載する249cc水冷2ストロークV型2気筒エンジンは、最大馬力が先代モデル比5馬力減の40馬力となったことでかつてのピーキーさに欠ける面はあるものの、エンジンを総合的にコントロールするコンピューター容量の増量やプロアーム(高剛性の片持ちスイングアーム)の初採用などにより、扱いやすさはシリーズのなかでも随一の仕上がりとなっている。
MC28の人気が爆発中?
1999年まで生産が続いたこともありNSR250Rの台数は多い。バイク王の買い取りは年間100台を超えるそうだ。
ロングセラーとなったNSR250Rだけに、店頭販売価格には年式や型によって大きな開きがある。バイク王茅ヶ崎絶版車館の岡本拓也さんによれば、最近は最終モデルのMC28が人気だという。
「今はMC28がすごく高くなってきています。店頭販売価格は100~250万円、中には300万円を超える車両もありますが、200万円以上になるのはだいたいMC28です。ピーキーなハチハチなどと比べれば、やっぱりM28はマイルドです。当時とは違って、今は扱いやすさが人気につながっているのかもしれません」(以下、カッコ内は岡本さん)
2023年には通信販売も含めて10台以上を販売したそうだが、購買層が20~40代と比較的幅広いのも特徴だという。
「免許を取得して初めて買うというバイクではないと思いますが、乗ってみたいという若い方はけっこういらっしゃいます。今や2ストのバイクはほとんどないですし、やっぱり、TZRやガンマと比べて認知度が段違いに高いことも人気の理由かなと思います」
アフターパーツが豊富な車種だけに、カスタムのベース車両として求める人もいる。
「名の知れた専門店さんもありますので、メンテナンスやチューンはそこにお願いするから程度のいいベース車両が欲しいというニーズはあると思います。バイク王にお譲りいただいた車両の中にも、店頭販売できるものは比較的多いです。もともとの販売台数が桁違いだったので、今はまだ程度のいい中古車両が手に入りやすいのかもしれませんね」
■Information
取材協力:バイク王茅ヶ崎絶版車館
【場所】神奈川県茅ヶ崎市下町屋1-10-26
【営業時間】10:00~19:00
【定休日】水曜日
【備考】記載の情報は取材時のもの。車両の在庫状況や現車確認を希望の場合は0120-222-393まで要問い合わせ
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら