物価高対策として続けられてきた、「電気・ガス料金の負担軽減措置」。この負担軽減措置は5月使用分までで終了し、6月以降は補助がなくなる方向で進められています。また、4月使用分(5月請求分)の電気料金から、「再生可能エネルギー賦課金」が引き上げられます。
負担軽減措置の終了や再エネ賦課金の引き上げで、電気やガス料金はいつからどのくらい高くなるのでしょうか。電気・ガス会社ごとの料金や値上げ幅、家計への影響について解説します。
「電気・ガス料金の負担軽減措置」とは
電気・ガス料金の負担軽減措置は、正しくは「電気・ガス価格激変緩和対策事業」と言います。近年、ロシアによるウクライナ侵攻などの世界情勢を背景に、燃料価格は世界的に高騰を続けています。これにより、エネルギーの9割近くを輸入に頼る日本の電気・ガス料金にも大きな影響が及んでいる状況です。
そこで、電気やガス料金の負担が重くなり過ぎないようにするため、政府による電気・ガス料金の負担軽減措置が講じられています。この措置により、料金単価から一定の金額が値引きされ、手続きをしなくても、直接的に料金負担が軽減されているのです。
負担軽減措置は、今年4月の使用分までは従来と同額の補助が行われましたが、5月の使用分については、従来の半分程度の補助に縮小されることが決まっています。さらに、負担軽減措置は5月までで終了となる見通しです。
なお、負担軽減措置によって補助された電気・都市ガスの値引き単価は、以下の通りです。
・2024年4月使用分まで
電気…低圧: 3.5円/kWh、高圧: 1.8円/kWh
都市ガス…15円/ ※家庭及び年間契約量1,000万未満の企業等が対象
・2024年5月使用分
電気…低圧: 1.8円/kWh、高圧: 0.9円/kWh
都市ガス…7.5円/ ※家庭及び年間契約量1,000万未満の企業等が対象
たとえば電気料金は、月の使用電力量が260kWhの場合、4月までは910円、5月は468円が補助されていました(いずれも低圧の場合)。6月からはこの値引きがなくなる分、料金が高くなることが予想されます。
電気・ガス料金はいくら値上げする?
負担軽減措置の縮小や終了により、今後は電気・ガス料金の値上がりが心配です。また、軽減措置の縮小・終了に先立ち、4月使用分(5月請求分)からは、再生可能エネルギーの普及のため国が電気料金に上乗せしている「再生可能エネルギー賦課金」の単価が上がります。この影響で、大手電力10社全てで4月と比べて電気料金が高くなります。
さらに、ガス料金も大手4社全てで値上げとなる見込みです。2024年5月の電気・ガス料金の見通しは、以下の通りです(カッコ内は左から4月の料金、4月からの値上げ幅)。
<2024年5月の電気料金の見通し>
北海道電力…8,757円(8,316円、441円)
東北電力…8,036円(7,493円、543円)
東京電力…8,137円(7,576円、561円)
中部電力…7,963円(7,384円、579円)
北陸電力…6,988円(6,531円、457円)
関西電力…6,754円(6,211円、543円)
中国電力…7,658円(7,144円、514円)
四国電力…7,721円(7,210円、511円)
九州電力…6,676円(6,156円、520円)
沖縄電力…8,462円(7,963円、499円)
<2024年5月のガス料金の見通し>
東京ガス…5,671円(5,628円、43円)
東邦ガス…6,841円(6,794円、47円)
大阪ガス…6,224円(6,178円、46円)
西部ガス…6,437円(6,402円、35円)
電気料金は441~579円の値上げ、ガス料金は35~47円の値上げとなります。
まず、4月使用分(5月請求分)からは再エネ賦課金の引き上げによる値上げが、5月使用分(6月請求分)からは補助半減による値上げがあります。そして、6月使用分(7月請求分)からは補助打ち切りによる値上げが始まるという流れになります。
電気料金はさまざまな要因で決まりますが、再エネ賦課金の引き上げによる負担増を見てみると、標準家庭で月836円、年間1万32円にのぼります。また、補助打ち切りによる負担増は、標準家庭で月1,850円、年間2万2,200円と予想されています。両者を合わせると、月2,686円、年間3万2,232円も負担が増すことになります。
一方、4月末で終了予定だったガソリン価格を抑えるための補助金については、地方への影響や原油価格の動向を見極める必要があるとして、当面延長させる方針です。電気・ガス料金についても、今後の動向によっては負担軽減措置が再開される可能性もあるようです。
ただし、仮に再開されるとしても、再開時期や補助が受けられる金額は未定となっています。身の回りのあらゆるものが値上げされている今、電気やガス料金の負担が増すとなると、家計への影響は決して小さいものではなさそうです。
負担軽減措置の終了や再エネ賦課金の引き上げで家計負担は大きく
約1年半続いた電気・ガス料金の負担軽減措置が終了することで、6月使用分からは電気やガス料金の値引きがなくなります。それに先立ち、4月使用分からは再エネ賦課金が引き上げられますので、その影響も小さくはありません。大手企業を中心に賃上げが進む一方、電気・ガス料金、食品や日用品の値上げが続けば、家計負担は大きくなるばかりです。今後、再び負担軽減措置が行われることがあるのか、動向を注視していきましょう。
武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら