自炊している人はお弁当と一緒に、水筒も会社に持っていくことがあるでしょう。
そんな時に使いたいのが魔法瓶。現在は水筒型でおしゃれなデザインの製品がたくさんありますよね。
魔法瓶の保温、保冷の力はどのくらいあるのでしょうか。魔法瓶製造の老舗である象印マホービン株式会社(以下、象印マホービン)に取材しました。
そもそも魔法瓶はどのようにして保温性を高めているのでしょうか。
魔法瓶は外瓶と内瓶からできていて、その間には真空の層があります。
この真空の層が熱の移動を遮って、内瓶の内容物から熱が奪われたり、熱が加わったりすることを防止。熱の移動を防ぐので、保温、保冷の両方に使えます。
しかし、真空でも防げない輻射熱(ふくしゃねつ)というものがあるのです。
そもそも熱の伝わり方には、伝導熱、対流熱、輻射熱の3つがあります。
物と物が直接触れることで熱が伝わる伝導熱、空気が動くことで熱が伝わる対流熱は真空の層で遮断できますが、太陽を代表とする輻射熱は防ぐことができません。
太陽の熱は真空の宇宙を超えて地球まで届いているため、真空状態にしても遮断できないのです。
魔法瓶では、輻射熱を防ぐために内瓶と外瓶の間に、銅箔またはアルミ箔を入れて鏡のような状態にしています。
この仕組みによって輻射熱を反射し、熱の移動が起こらなくしているというわけです。
しかし、これでも熱の移動を完璧に遮断することはできません。
では、魔法瓶はどのくらい保温できるのでしょうか。
象印マホービンによると、魔法瓶の保温・保冷の性能は以下のようになっています。
保温効力とは、室温20℃±2℃において、製品に熱湯を取扱説明書に記載の位置まで満たし、縦置きの状態で湯温が95℃±1℃の時から6時間放置した場合の湯の温度。
以下のグラフは、象印マホービン『ステンレスマグ(SM-JF36)』の場合です。
保冷効力とは、室温20℃±2℃において、製品に冷水を取扱説明書に記載の位置まで満たし、 縦置きの状態で水の温度が4℃±1℃の時から6時間放置した場合の水の温度。
以下のグラフは、象印マホービン『ステンレス クールボトル(SD-CB50)』の場合です。
上掲2つのグラフのとおり、優れた保温・保冷効力があることが分かります。
また、『SM-RS65』の場合は、6時間後でも95℃の熱湯が74℃以上、4℃の冷水が8℃以下をキープできます。
象印マホービン『SM-RS65サイズ』
魔法瓶を使ったらできるだけ温かい、もしくは冷たい状態が続くようにしたいものです。
象印マホービンによると保温性、保冷性を高めるには次のような方法がおすすめとのこと。
保温の場合は、事前にお湯で内瓶を温めてからお茶やコーヒーを入れると保温効力が高まります。
保冷の場合は、氷水で冷やしてから冷茶などを入れるようにすれば保冷効力が増します。
ちなみに、魔法瓶の保温性能は昔と比較して上がっているかと聞いたところ…。
30年ほど前の製品と比較しても保温・保冷性能に大きな違いはありませんが、コンパクト性や軽量化が進化しています。また、お手入れ性なども向上しています。
魔法瓶が損傷すると保温・保冷力が失われたり、低下したりする可能性があります。
象印マホービンによると「本体を落したり、ぶつけたり、強い衝撃を与えたりすると、樹脂部分が破損し、ステンレス表面がへこんで、保温効力が低下することがあります」とのこと。
また、「お手入れに塩素系の漂白剤を使用したり、水中に放置したりするのはNG。本体内側や中せん内のスプリングにさびが発生したり、本体内側に穴あきなどの故障が起こったりして、保温効力が低下する原因になります」と教えてもらいました。
魔法瓶の保温効力が低下したと感じたら、以下の方法で確認するといいそうです。
熱いお湯を本体内容器に半分入れた後、数分で本体の外側が熱くなる時は保温効力がなくなっています。
保温効力が低下している場合は、購入した販売店または『お客様ご相談センター』に相談しましょう。
最後に、魔法瓶を使うメリットを教えてもらいました。
・温度が冷めづらいので常に飲み頃の温度で飲める。
・日々のドリンク代の削減になる。
・プラごみ削減になる。
象印マホービンは2020年以降、社内でのペットボトル使用を禁止し、「マイボトルを使用しましょう」と呼び掛けています。
あなたもお弁当やレジャーのおともに、水筒型の魔法瓶を持っていってはいかがでしょうか。
[文/高橋モータース@dcp・構成/grape編集部]