使用済みのてんぷら油はどこへ行く?

ご家庭で「揚げ物」に使った油の処理、どうしていますか?
粉で固めたり、新聞紙に吸わせて、燃えるゴミとして捨てる自治体が多いと思いますが、じつは今、こうした「やっかいな油」の奪い合いが、起きているそうなんです。
まずは、東京の八王子市で、今年から始まった「油の回収事業」について、レコテック株式会社の荒井 亮介さんに伺いました。
レコテック株式会社 荒井 亮介さん八王子市役所ですとか、スーパーアルプスというスーパーがあるんですけれでおも、専用のボックスが置いてあります。
で、そこに容器に入れて蓋をして、油を持ち込んでいただいて、そのボックスに容器ごと入れていただくと。
基本的には「植物油」であれば、オリーブオイルですとか、ごま油ですとか、天ぷら油もそうですし、植物系の油であれば、持ち込みはいただけます。
主に「燃料」としてリサイクルする予定です。
そういった燃料にすると、CO2の削減効果が非常に大きい、そういう環境面から油のリサイクルっていうのが注目されていて、「飛行機」に使われるジェット燃料、そういったものにもリサイクルできますので、様々な用途の燃料へのリサイクルを検討しています。
<揚げ物(イメージ)>
使用済みの天ぷら油などで車やバスを走らせる、「バイオディ―ゼル車」というのは、ちょっと前から聞くようになりました。
これは「軽油」の代わりに、天ぷら油を使う取り組みで、少しずつ広がってきているのですが、今度はこの使用済みの油で「飛行機を飛ばしてしまおう!」ということで、様々な自治体で油の回収、油の奪い合いが始まっているんです。
こうした環境にいい燃料を、英語で「サフ(SAF)」と呼ぶそうですが、業界関係者よると、「100リットル」の食用油から、「70リットル」の「サフ」を作り出すことができるようです。それには様々な加工が必要で、日本では、国産のサフを作るための工場を、大手石油会社が主体となって、建設中。
国産のサフを使って、実際に飛行機を飛ばせるようになるのは、数年先になる見込みということです。
たしかに、捨てるより再利用した方が良さそうですが、この油の奪い合い、世界レベルでも起きているそうです。続いて、大阪で、レストランや個人から、「揚げ物油」の回収を行っている、植田油脂の髙橋 史年さんに伺いました。
植田油脂・代表取締役社長 髙橋 史年さん集めた油の行き先が、「海外」に行って燃料で使われてる。
輸出、ここが急激に増えたので、相場が急激に上がった。
主に欧米なんですが、元々「パーム油」なんかを使って燃料にしていた。それが、インドネシア、マレーシアで生産されるんですけど、そのパーム油が、コロナの時に労働力不足に陥った。
いわゆるマレーシアのパーム油を収穫・精製するのは、例えばバングラデシュとかからの出稼ぎの方なんですね。それがコロナで労働力がなくなって、パーム油の生産量が減った。
で、当然ヨーロッパで使用してた分が手に入らないので、日本の廃油は品質が良いので、「もっと持ってこい」という流れになったんですね。
「パーム油」の話が出てきましたが、パーム油は、アブラヤシという植物の果実からとれる油です。植物からとれる油なので「環境にいい」、ということで、バイオ燃料の原料としても使われてきましたが、コロナ禍で現地の人手が不足。そうなると、EUへの油の輸出が滞ってしまい、そこで注目されたのが、日本の「揚げ物油」だったんです。
現状、海外からの需要というのは、だいぶ落ち着いているようですが、目安として、コロナ禍前は1キロあたり「50円」で取引されていたのが、一時期は、2・5倍の「125円」まで跳ね上がったそうです。その後、じわじわ下がって、いまは「80円台」まで落ち着いてきたようですが、それでも、元の値段よりは高い状況です。
一方で、EUでは、すでに「サフ」で飛行機が飛んでいて、日本は追い付け追い越せという構図。ますます揚げ物油の需要が高まっていきそうですが、ただ、この奪い合いの影で、しわ寄せを受けているところもあるようです。有限会社「仁光園」の、島 哲哉さんに伺いました。
有限会社「仁光園」 島 哲哉さん私3代目、祖父の代から「養鶏場」をさせていただいているんですけれども、鶏たちは体を維持するためにカロリーが必要ですので、エサに「廃食油」っていう油を使っています。
栄養設計のバランスが崩れてしまったりするので、他の栄養を邪魔しない廃食油とか、そういったものは、やはり使いやすい。
非常に値段が上がったのは、「サフ」っていうことで、ジェット燃料にするのに、需要が高くなってると。で、私らも、値上げして、何とか譲っていただけるような状況にある。
私もそうですし、配合飼料メーカーさんも、(油の)使用量を何とか削減。ゼロにはできないんですけれども、その割合を減らすという形では、ちょっと色々と動いてはいるんですね。
値段が高くなって手に入りにくくなっているからですね。
こちらの養鶏場では、一部のエサに、レストランや飲食店から出た「揚げ物油」を混ぜ込んでいるのですが、飛行機との争奪戦に巻き込まれる形で、エサの価格も高騰。
先ほどの油の回収業者は、「既存の取引先への供給を優先している」と話していましたが、意外な業界にしわ寄せがきているようです。
一方で、「この状況が悪化すれば、卵を値上げせざるを得ないかもしれない」と、養鶏場の方は困惑していました。
限りある資源をどう振り分けるか、国によるルール作りが必要です。

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