キリンビールは4月15日、「氷結 mottainai プロジェクト」を発足。第一弾として「氷結mottainai 浜なし」を期間限定で5月7日より発売する。規格の問題で廃棄される果実を「モッタイナイ果実」と位置づけ、商品に使用することでフードロスの削減を目指す。
○売上1本につき1円が農家支援に使われる「氷結 mottainai プロジェクト」
近年、気候問題や後継者不足、肥料コストの高騰といった問題から、果実農家が抱える課題はますます大きくなっている。SDGsへの関心の高まりは大きいが、国内で消費者がサステナブルな商品を選択し購入する経験は身近にあるとはいえない。
そんななか、キリンビールは一人一人がSDGsを自分ごととするために、企業として健康・コミュニティ・環境の側面からさまざまな取り組みを進めている。その一環が、今回の「氷結 mottainai プロジェクト」だ。合言葉は「モッタイナイ! を、おいしいに。」。その第一弾として、5月7日に「キリン 氷結 mottainai 浜なし」(350ml/500ml)を期間限定で発売する。
キリンビール 執行役員 マーケティング部長の今村恵三氏は「2001年の誕生以来、これまで『キリン 氷結』は約100種類の果物を使用させていただいており、商品の数は実に約500以上に上ります。多くの果物を使用したチューハイの発売を通して、氷結ブランドは成長することができました。20年以上、お客様に商品をお届けできたのは、ブランドにとって欠かせない果物を日々育ててくださる農家のみなさまの存在があってこそです」と、果実農家に向けて賛辞を送った。
「氷結 mottainai プロジェクト」の売り上げは、1本につき1円がJA等に寄付され、農家の課題解決に利用されるという。消費者は、購入して飲むだけで農業の持続的な発展に向けた取り組みに協力することができる。また、生産から商品化への流れとして、日本に飲料業界では初となるブロックチェーン技術を活用し、透明性のある取引を行っている。
パッケージには特設サイトへ変遷するQRコードも印刷されているので、取り組みについて知りたい方はぜひご一読いただきたい。なお、5月にはポップアップイベントも開催予定とのこと。
キリンビール マーケティング部 氷結ブランドマネージャーの加藤麻里子氏は、「『氷結 mottainai』で使用する果実は、全国で廃棄されてしまっている量と比べると少ないかもしれませんが、氷結が本プロジェクトを立ち上げて、全国の皆様に美味しいチューハイとして届けることで、少しでも多くの方に訴えない果実の存在を知っていただき、何かできることはないかと、仲間が増えることを期待しています」と展望を述べた。
○「キリン 氷結 mottainai 浜なし」誕生秘話と美味しい飲み方
この「氷結 mottainai プロジェクト」の、記念すべき第一弾である「キリン 氷結 mottainai 浜なし」はどのようにして生まれたのだろうか。トークセッションでは、キリンビール、JA横浜、果実農家のみなさんが誕生秘話を語った。
「キリン 氷結 mottainai 浜なし」に使用されるのは、2015年にJA横浜が商標登録した幻のブランド梨「浜なし」だ。樹上で十分に完熟させてから収穫するため大玉で糖度が高いうえ、その日の朝に収穫しその日のうちに販売されるので、スーパーでもめったに出回らない貴重な逸品となっている。
だが、浜なしは「みつ症」という生理障害にかかりやすい。人体に影響はないが、この症状が現れると大きな特徴であるシャキシャキとした食感を失い、日持ちもしなくなってしまうため、市場への出荷ができなくなってしまうという。また気候条件に左右されるため対策も難しく、毎年の収穫量も安定しないのが悩みの種だ。みつ症を含め、「浜なし」の規格外品の量はなんと1年間で19t。数にしておよそ6万個にも上る。
これに注目したのがキリンビールだ。「氷結 mottainai プロジェクト」が発足し、担当者らは“もったいない果実”のリサーチを進めていたが、廃棄した果実という情報が少なく年ごとに増減のあるものを対象とするため、原料にできるものはなかなか見つからない。通常の2倍以上の時間を掛けてリサーチを進めていたところ、浜なしと出会ったという。
キリンビール マーケティング部 氷結アシスタントブランドマネージャーの山岡加奈氏は、浜なしを選んだ理由を問われ、「理由は大きく二つあります。一点目は浜なしの味わいが氷結にぴったりだと感じたこと。二点目が(キリンビールの)発祥の地が横浜だという点で、縁を感じたことです」と話す。
浜なしのフードロス削減量は2.2万個、販売数量は18万ケース、販売による果実農家への寄付金は400万円を目標としているという。また、2027年には「氷結 mottainai プロジェクト」によって年間150tのフードロス削減を目標に掲げているそうだ。
また「キリン 氷結 mottainai 浜なし」の味のポイントを聞かれたキリンビール マーケティング部 商品開発研究所の佐藤良子氏は、「ひとつは浜なしらしい木の上で完熟した美味しい甘さ、もうひとつが氷結らしい軽やかな炭酸感とすっきり爽快な後味でチューハイならではの爽やかさをつけています」と述べた。
美味しく飲むコツは、よく冷やすことだという。さらに氷を入れたグラスに注ぐことで、炭酸がはじけ、香りもより楽しめるようになるそうだ。
その味わいを、浜なしを栽培する「えのき園」の鮫島慎治氏も「とても美味しかったです。浜なしのジューシーさや甘さとスッキリとした爽快感が楽しめます。もう一口飲みたくなりますね」と高く評価した。
最後に、キリンビールの山岡氏はプロジェクトにかける意気込みを次のように語る。
「この『キリン 氷結 mottainai 浜なし』を通じて、浜なしの美味しさを知っていただくのはもちろん、農家の皆さんが抱えている課題を考えるきっかけにもなったら嬉しいなと思っています。また氷結ブランドとしては今後も単発で終わらずに、継続的にmottainai果実を使った氷結をみなさまにお届けしたいと考えておりますので、ぜひ楽しみにしていてください!」(キリンビール 山岡氏)