カワサキが2024年秋の発売を予定する「メグロS1」(MEGURO S1)の実車を確認してきた。伝統のメグロブランド復活第2弾となるS1はいったいどんなバイクなのか。カワサキモータースジャパンの桐野英子社長と広報担当者に話を聞くことができた。
メグロはカワサキのルーツ?
1924年に創業し、1937年には初の単気筒500cc「メグロ号Z97型」を発売するなど、日本バイク史の黎明期に名を残した目黒製作所。第2回全日本オートバイ耐久ロードレース(通称:浅間火山レース)では「メグロRZ」が500ccクラスで1位、2位、4位、5位を獲得するなどレースシーンでも活躍しており、性能の高さは折り紙つきだった。
国内ビッグバイクの名門であった目黒製作所だが、1964年には川崎航空機工業(現:川崎重工業)に吸収合併され、オートバイメーカーとしての歴史に幕を閉じる。しかし、同社の「Kシリーズ」がベースのカワサキ「650-W1」(1966年)がヒットするなど、目黒製作所のレガシーはカワサキのバイク事業に大な貢献を果たしてきた。メグロの伝統もまた、「Wシリーズ」を通じて現在まで受け継がれている。
そんな「メグロ」が生誕100周年を迎える2024年、カワサキが送り出すのがメグロブランド復活第2弾となる「MEGURO S1」だ。
MEGURO S1のこだわりは? カワサキに聞く
カワサキがメグロブランドで1964年に発売した「カワサキ250メグロSG」を現代の技術で蘇らせたのがMEGURO S1だ。カワサキブースで話を聞いた広報担当者は、「軽二輪セグメントにメグロブランドを継承するモデルが誕生することはカワサキとしても非常に嬉しい」と話していた。
MEGURO S1の大きな特徴といえるのが単気筒(シングル)エンジン。「カワサキ250メグロSGをはじめ、当時のメグロブランドにおける250ccクラスでは、シングルエンジンでスポーティーな走りを目指していました。今回のMEGURO S1ではその点も継承しており、シングルスポーツの走りが目指せる車体に仕上がっています」というのが広報担当の説明だ。
ベースとなるのは、オフロードモデル「KLX230」の空冷4ストローク230cc単気筒エンジン。MEGURO S1に載せるにあたり特に注力したのがデザイン面で、クラシカルなフォルムにマッチするようボリューム感を持たせ、なめらかな曲線とするなど設計上の工夫を施している。
全体のデザインでメグロらしさを強調するのが丸みのあるガソリンタンクとメグロのロゴだ。こだわりの造形にユーザーからは「懐かしい」という声が多数寄せられているという。カワサキモータースジャパン社長の桐野英子さんにも話を聞く機会があったが、1番のお気に入りは「ピカピカのタンク」とのことだった。
メグロブランドを250ccクラスに投入する狙いは?
250ccセグメントでは従来から、「ニンジャ250」をはじめとするフルカウルのいわゆる「250ccスーパースポーツ」が人気となっていた。ここにMEGURO S1を加える狙いとは? 250ccセグメントにネオレトロの新しい波を作る思惑があったりするのだろうか。
桐野さんに聞くと「そんな大それたことは考えていません(笑)。K3を2021年に発売した時に、皆さまから非常に評価していただきました。それを今度は、中型免許の方にも楽しんでもらえたらという思いです」と狙いを明かしてくれた。
メグロはカワサキにとって非常に大切なブランドだと話す桐野さん。MEGURO S1を「すごくオートバイらしい綺麗なオートバイ」と表現し、「所有していただければ磨く楽しみもありますし、乗っている時にすごく嬉しくなれるオートバイ」だと評していた。
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら