「TSMC」日本工場進出に関わる取引先企業は2年で1割増、関東地方に集中

帝国データバンクは4月10日、半導体受託生産の世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC社)およびソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(SCM社)、ソニーセミコンダクタソリューションズ(SCM社)の3社を対象にした、取引先に関する調査結果を発表した。

TSMCのほか、JASMなど同社の日本法人(グループ)、TSMCと関連の深いソニー半導体グループ関連企業と取引を行う企業は、2年前の調査時点(2021年11月427社)に比べ、10.3%増の471社となった。

このうち、取引先別ではTSMCグループを取引先とする企業が74社、ソニー半導体と取引を行う企業が412社だった。TSMC、ソニー半導体企業ともに取引する企業も15社判明した。TSMC向けの取引社数は伸び悩んだものの、同社熊本工場に隣接し、スマートフォンなどに使われる画像センサーを生産するソニー半導体向け取引が大幅に伸長した。

業種別では「製造業」が最も多く152社で、2年前(144社)から8社・5.6%増加したほか、「卸売業」(140社)も11社・8.5%増加した。最も増加したのは「サービス業」(131社)で、2年前(109社)に比べて22社・20.2%の大幅増加となった。サービス業では「受託開発ソフトウェア」や「労働者派遣」「機械設計業」で多く、取引内容では大規模集積回路(LSI)の設計・開発業務の受託、技術セールスパーソンをはじめとした人材派遣などの内容が特に目立った。

取引企業を地域別にみると、最も多いのは「関東」(229社)で、「九州」は全国で2番目に多い153社となった。「東北」など他地域ではいずれも50社未満にとどまり、関東と九州の2地域における企業が取引に参画していた。ただ、2年前と比較した社数の増加率は、「九州」が6社・4.1%の増加にとどまり、東京を中心とした「関東」(194社→229社)の35社・18.0%増に比べると低水準にとどまった。関東地方の企業では、シリコンウェハーなど半導体素材の提供や電子部品、半導体部材の生産装置製造といった企業が中心で、九州ではプラント建設のほか、廃水処理、クリーンルーム用品など消耗品(サプライ品)の供給といった内容が目立った。

半導体受託生産で世界最大手の台湾・TSMCが熊本県に建設した工場が2月24日に開所した。熊本県内ではTSMCや関連企業の従業員を対象とした住宅・不動産需要や小売需要、建設需要が高まっている。既にTSMC第二工場の建設も決定しており、地元九州を中心に、工場就労者の増加による日用品や食品需要の増加、人材派遣・紹介の活発化など経済波及効果に対する期待度は高い。

ただ、TSMCグループなどと取引を行う企業数は、九州地方ではほとんど横ばいで推移した。半面、東京などに本社を置く企業を中心に増加し、取引内容でも半導体素材などを多く取り扱う企業が多いなど、取引内容にも差異がみられた。帝国データは「半導体産業に関連したサプライチェーン網への参入障壁が高いことも要因とみられ、九州外の企業に取引が集中している点に課題が残る。熊本県を中心とした素材や部材のサプライチェーンの構築が、半導体産業が九州の基幹産業として大きく発展するためのカギを握るとみられる」と分析している。

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