災害拠点病院は“耐震より免震” 能登半島地震でほぼ無傷だった病院の教訓 南海トラフ巨大地震への備え【大石が聞く】

地震など、災害が発生した後に、どうやって医療を継続するか…能登半島地震でほとんど無傷だった、ある病院の「教訓」とは?
【石川・七尾市 恵寿総合病院 1月2日】
1月2日の午前2時5分。元気に生まれた3130グラムの赤ちゃん。陣痛が始まったのは、震度6強の揺れの2時間後。度重なる余震と、津波警報が続く中での出産でした。
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多くの建物が倒壊し、停電や断水も起きた中、ここ恵寿総合病院では。
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【2月取材】(恵寿総合病院 神野正博 理事長)「ここは全然、棚の物一つ落ちなかった。ただゆらゆら揺れているだけ」
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(恵寿総合病院 神野正博 理事長)「手術室が4室ありますが、発災当初から手術は可能でしたし、いま七尾市はまだ断水中ですが、普通に手洗い用の水が出ています」
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病院本館は「被害なし」。地下水や非常用電源で地震当日から手術も出来る態勢でした…その秘密は「地下」に。
(大石邦彦アンカーマン)「ここに免震構造の秘密があるわけですか…」
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(名古屋大学 福和伸夫 名誉教授)「その黒いものです。それが積層ゴムというものなんです。柱の下ごとにゴムを置いて、柔らかいので、地面だけが揺れて建物が揺れないようにできています」
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ゴムと金属を重ね合わせた積層ゴム。本館はこれが49個設置された免震構造で、地震の揺れを吸収していたのです。同じ場所に設置されている金属板には、震度6強の揺れの跡が。
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(名古屋大学 福和伸夫 名誉教授)「傷がついていますね。このひっかき傷が、地震の時にどのように揺れたかを示しているんです」
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(大石アンカーマン)「ここまでいってます。これだけ移動したということですか」(名古屋大学 福和伸夫 名誉教授)「そうですね。こっちには20センチくらい動いていますね」
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本館の周囲には、建物が動いてもいいよう溝が掘られてありますが、そこにも揺れの痕跡が。(大石アンカーマン)「この建物はこっちに動いたんですか」(恵寿総合病院 神野正博 理事長)「動いたということになりますね」
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一方、渡り廊下で繋がっている病棟の建物は「免震」ではなく、「耐震」構造。そこではあの日…
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(恵寿総合病院 地震直後の病棟内)「ひどいことになったな、これ…」地震直後の映像。棚は倒れ、書類は散乱しています。
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(恵寿総合病院 神野正博 理事長)「いまはこのように復旧していますが、実は天井は落ちてしまった。それから(天井の上を通っていた)水道管が破れて水が降ってきて、この辺りは水浸しに」
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(恵寿総合病院 神野正博 理事長)「(病棟に対する)災害対策本部の最初の指令は『総員退避』。この病棟と隣の病棟 計110人の患者さんを、エレベーターが動いていない中、約60人の職員で担架を使って、免震構造の本館に運んだ」
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揺れに耐える「耐震」と、そもそも揺れない「免震」の違いを改めて示した形です。
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(名古屋大学 福和伸夫 名誉教授)「耐震構造というのは残念ながら揺れるんです。特に医療というのは、地震直後から医療を継続するというのがすごく大事なので、手術中でも手術が続けられるような揺れない建物にするのが、すごく大事」
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東海地方の病院の備えはどうなっているのか。愛知県に36ある「災害拠点病院」の一つ、名古屋市中川区の名古屋掖済会病院。院長の北川喜己医師は、災害時の医療支援をするDMATの中心メンバーでもあります。
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地下に入ると…(名古屋掖済会病院 北川喜己 院長)「まずここですよね」(大石アンカーマン)「ああー本当だ。積層ゴム」
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やはりここも、免震構造でした。
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(名古屋掖済会病院 北川喜己 院長)「揺れた後もちゃんと診療を継続しなければならない。そのためには安全な建物を造るのは使命」
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(大石アンカーマン)「南海トラフ地震がいつあってもおかしくない東海地方だからこそ、免震構造は必須ですか?」(名古屋掖済会病院 北川喜己 院長)「必須ですね」(大石アンカーマン)「(金属板を見て)大きな揺れはなかったけれども、移動したことがあるということがよく分かります。ただ恵寿総合病院の大きなひっかき傷とはまったく違いますね」
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ここではほとんど動いた形跡がありません。愛知県ではもう80年近く大きな地震は起きていないのです。しかしここでは揺れ以外に問題が。
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(名古屋掖済会病院 北川喜己 院長)「南海トラフ地震のときには1~1.5メートル浸水する可能性があるので、ここ実は1階は入院棟でも入院患者を入れていない」
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海が近い掖済会病院は、津波で浸水する想定。そのため病室や手術室は2階以上に配置しています。
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(名古屋掖済会病院 北川喜己 院長)「いざというときには1階にいる方は2階以上に上がってもらう。動けない方はエアストレッチャーを使って引き上げる。もし水に浸かったとしても安全に過ごしてもらえる備えをしている」
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災害用の非常用電源は屋上に置かれ、井戸も水に浸からないようかさ上げされ、浸水しても医療を継続できるようになっています。
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(名古屋掖済会病院 北川喜己 院長)「水で孤立するということを、院長としては考えなければならない。いかに病院として地域として孤立した時に籠城するか、いかに安全に入院患者さんを守るかがとても大事」
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近い将来予想される南海トラフ巨大地震で、被災後の医療をどう継続するのか。東海地方全体で、改めて確認する必要があるのです。
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2024年3月14日放送 CBCテレビ「チャント!」より

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