「オスプレイは欠陥機」論、なぜ未だに残る? “犠牲者数=危険”は間違い 数字が示す根拠

2023年秋に鹿児島県沖でアメリカ軍の「オスプレイ」が墜落して以降、続いていた飛行停止措置が2024年3月上旬に解除されました。その間「オスプレイ」は危険であるという言説が出ていましたが、本当なのでしょうか。
2024年3月8日、アメリカ軍はティルトローター輸送機V-22「オスプレイ」の飛行再開を発表しました。昨年(2023年)11月に鹿児島県沖で発生した同空軍のCV-22「オスプレイ」墜落事故をきっかけに飛行停止措置が取られていた同機が、約3か月ぶりに再び世界の空を飛び始めています。
アメリカ国防総省は、事故原因について機械的要因である可能性が高いと判断しており、再発防止のための必要な安全措置を講じたうえで飛行を再開したと説明しています。
「オスプレイは欠陥機」論、なぜ未だに残る? “犠牲者数=危険…の画像はこちら >>アメリカ海兵隊のMV-22「オスプレイ」。海軍パイロットによるテスト飛行中のため、機首上部にオレンジ色の布を付けている(画像:アメリカ海軍)。
日本では、「オスプレイ」が主翼端のエンジンポッドを回転させることで飛行するという、それまでにない特徴を持った航空機であることから、事故を起こすたびに従来の飛行機やヘリコプターと違うとして、ことさら取り上げられる傾向があります。
なかには、「オスプレイ」による死亡者が合計61人にもなることを指摘し、「欠陥機は一刻も早く除かねばならない」「空飛ぶ棺おけ」との主張を繰り返すメディアもあります。
しかし「オスプレイ」が空を飛ぶ乗りものである以上、事故の発生は避けられないのが現実です。61人の死者が受容可能な範囲かどうかは個々人の見方もあるため一概には言えませんが、他の航空機と比較すると「オスプレイ」の死者数はそれほど多くないというのが実情でしょう。
たとえば「オスプレイ」よりも大型の輸送ヘリコプターCH-47「チヌーク」は、自衛隊を始めとして世界各国の軍隊で運用されているベストセラー機ですが、アメリカ軍に限ってみても2020年時点で合計238人の死者を出しています。
さらに多いのが多用途ヘリコプターのUH-60「ブラックホーク」で、こちらもやはり日本を含め世界中で使われていますが、アメリカ軍だけ見ても2020年時点で合計970人の死者が出ています。とうぜん、これら数値はアメリカ以外の国で起きた死傷事故も含めると、その数はさらに多くなります。
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着陸状態のアメリカ海兵隊のMV-22「オスプレイ」(画像:アメリカ海兵隊)。
こうして見てみると、「オスプレイ」の死者数は特段多いとは言えず、むしろ少ないのが実情です。むろん、これによって「チヌーク」や「ブラックホーク」が「オスプレイ」より危険な機体になるわけではありません。
「オスプレイ」は2000年代に実用化され、総生産数は約400機です。一方で「チヌーク」は1960年代に実用化され、総生産数は1000機以上、「ブラックホーク」は1970年代に実用化され、総生産数は5000機を超えています。
機数が10倍、稼働年数が2倍以上の「ブラックホーク」の死者数が「オスプレイ」の20倍弱であることは、比較から見ても当然です。また、「オスプレイ」や「ブラックホーク」「チヌーク」は輸送機であり、事故原因と無関係な人員が犠牲者に含まれることが多いため、単純に犠牲者数だけで安全性を問題視するのは不適切であると言えるでしょう。
「オスプレイ」で最も犠牲者が多かったのは2000年4月8日の墜落事故です。このときの死者数は19人ですが、「オスプレイ」に一切の機械的な故障はなく、原因はパイロットの操縦によって「ボルテックスリングステート」に入ってしまったことでした。
「ボルテックスリングステート」とは自機の回転翼が発生する降下気流であり、これは「オスプレイ」固有の問題ではなく、あらゆるヘリコプターで発生する可能性があります。
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2023年10月1日、木更津航空祭で飛行展示を行う陸上自衛隊のV-22ティルトローター輸送機(乗りものニュース編集部撮影)。
他にも、2011年7月7日および2014年10月1日に起きた飛び降りによる転落や、2017年7月11日にあった整備中の落雷など、死亡事故には不可抗力的な要因によるものも含まれます。
こうして見てみると、航空機の安全性を評価する際には、単純な数値だけではなく、各墜落事故それぞれを精査する必要があると言えるでしょう。
ちなみに、2024年現在「オスプレイ」は世界で唯一の実用ティルトローター機ですが、ティルトローター機であることに起因する機械的要因での死亡事故は1件も発生していません。

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