「ナメとったら殺すぞ!」恫喝から監禁へ 被害女性が抱えるトラウマ 愛知から大阪へ“恐怖の2日間”詳細

2022年3月、介護助手の女性(発見当時40)を殺害し、遺体を愛知県東浦町の畑に埋めた罪に問われた女…。女はほかにも監禁と窃盗の罪で起訴されていた。殺人・死体遺棄事件については後編へ(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1076818)
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「暗いところにいると当時を思い出します。一生刑務所にいてほしい…」。被害者の女性に今も残るトラウマ…。裁判で読み上げられた女性の供述調書から、監禁・窃盗事件の当時の様子を振り返る。
天池由佳理被告
殺人・死体遺棄・監禁・窃盗の罪に問われているのは、住居不定・無職の天池由佳理被告(39)。天池被告が監禁した相手は、名古屋市中区の公園で”立ちんぼ”仲間だった女性(当時23)だ。
女性は、友人に連れられて行ったホストクラブにのめり込み、借金のために風俗店で働いたが、コロナ禍で客足が減り、”立ちんぼ”をするようになった。
2022年2月26日午後10時半ごろ、女性は”立ちんぼ”で1人目の客から2万円を受け取った後、公園で2人目の客を探していた。そこに車で現れたのは、住居不定・無職の山下克己被告(56)。女性にとって山下被告は過去に立ちんぼした客であり、普段は「山ちゃん」と呼んでいた相手だ。「きょう行こうよ」などと山下被告に声をかけられ、女性は「山ちゃんをきょう2人目の客にしよう」、そう考えて車の助手席に乗り込んだ。
ホテルに向かう前に「話したいことがある」と山下被告から切り出され、車は中村区のコインパーキングに入った。その直後、自分と山下被告の2人しかいないと思っていた車内の、カーテンが閉まっていた後部座席から突然現れたのが、天池被告だった…。
山下克己被告(左)と天池由佳理被告(右)
「この女の子3人の居場所を知らないか?」
天池被告はすぐにそう聞いてきた。写真を見せながら、「のりこ」、「のぶこ」、そしてもう1人。「知らないよ」と女性が言うと、天池被告は「携帯見せろ」と言ってきたという。女性は見せたくなかったが、このままでは帰れないのではないかと思い、LINEの「友だち」一覧だけなら…とスマホを渡した。
その後も、天池被告はしつこく3人のことを聞いてきた。しかし「知らないものは知らない」と女性が黙っていると、天池被告は突然激昂。
「ナメとんねん!ウソついとんのや!」。そう怒鳴りつけ、女性の髪をつかんだり、胸ぐらをつかんで服を引っ張ってきたという。
天池被告はさらに「あれ出した方が良いんじゃない?ちょっとあれ取って」と山下被告に声をかけた。山下被告が天池被告に渡したのは、“折りたたみナイフ”だった。
天池被告は女性の首元にナイフを突きつけ、「ナメとったら殺すぞ!」と恫喝。「殺されてしまうのでは…」と泣き出した女性に、天池被告は車の3列目に移動するように指示、女性が席を移動すると、天池被告と山下被告は女性の口を粘着テープでふさいだ。
「ゆかちゃん(天池被告)が布みたいなものを頭にかぶせ、私は何も見えない状態になりました。隣にゆかちゃんがいたと思います。この状況で、車はパーキングを後にしたのでした」。
2018年2月27日午前0時半ごろ、車は駐車場を出てしばらく走った後、山下被告が「仮眠を取る」と車を止めた。山下被告が寝ている間に、天池被告は被害者の女性のカバンから、“立ちんぼ”の売上金2万円を抜き取った。女性はその様子を寝たふりをして見ていたが、「盗みを指摘するとひどいことをされるかもと思い、黙っていることしかできなかった」と当時を振り返る。そのうち、天池被告も寝始めたが、女性は音を立てずに逃げる自信もなく、2人に気づかれずに自分のカバンを回収することも難しいと思った。土地勘のない場所で追いかけられたら、捕まって殺されてしまうかも…そう考えた女性は、車内で動けず、じっとしていることしかできなかった。
2人が目を覚ますと、再び車は走り出した。天池被告が「逃げるかもしれないから、縛っておいた方が良いんじゃない?」と言うと、山下被告は「そうだね」と同意し、結束バンドで女性の両手首を縛った。
ドライブスルーで食事を買いつつ、車は走り続け、愛知県東浦町のショッピングモールへ着いた。山下被告から「きょうの夜になったら帰らせてあげるから、おとなしくしていて」と言われ、女性はその言葉を信じて耐えてきたが、その後、2人の行動はエスカレートしていく。
ショッピングモールの駐車場で、女性は山下被告に性的暴行を加えられたという。
さらには、車内でトイレをするよう要求された。女性は「トイレじゃないからいい」と抵抗したが、結束バンドで縛られた状態で四つん這いにされ、座薬を入れられた。「痛い」「やめて」と女性が泣いてもやめることはなく、女性は車内で排泄させられた。「本当に恥ずかしく、屈辱的でした」…そう女性は振り返った。
イメージ
外が暗くなり、約束通り帰れると信じていた女性に天池被告が見せてきたのは、天池被告と山下被告の2人のLINEでの会話だった。そこには「このまま帰らせるわけにはいかない」「埋める」「殺す」、そんな言葉が並んでいた。女性は泣きながら「このまま帰っても2人のことを通報するつもりはない」と伝えたが、女性が解放されることはなかった。
翌28日の午前9時10分ごろ、車は三重県伊賀市の道の駅に着いた。女性は天池被告とともに車を降り、トイレへ行った。トイレの個室をすぐ出たところに天池被告がいたら…女子トイレの出口を山下被告が見張っているかも…そう考えると助けを求めることはできなかった。監禁の罪に問われた内容としてはここで車を降りたところまでだが、女性はその後も被告らと行動をともにさせられていた。
車は、天池被告の友人がいる大阪に向かった。天池被告の友人だという女性と合流し、4人で道頓堀を回ったという。女性は、なんとか逃げられる瞬間はないかと思い、「ドンキに行きたい」と提案。ふと後ろを見ると、山下被告はいなかった。
「逃げるのは今しかない」。
女性は店内3階のトイレに入った。天池被告もついてきたが、女性が個室を出た時には、天池被告はまだ出てきていなかった。女性は急いで店を出て、近くのコンビニで助けを求め、28日午後5時41分ごろ、警察に保護された。
調書の最後で、女性は2人の処罰について、こう望んだ。「事件後しばらく仕事に行くことができず、暗い場所にいると当時のことを思い出して怖くなります。今回の事件のことが夢に出てくることもあります。2人には一生刑務所に入っていてほしいと思います」。
介護助手の女性の遺体発見現場
天池被告は2022年4月、女性に対する監禁事件で逮捕され、その際、殺人・死体遺棄についても自供。翌日、天池被告の案内で、愛知県東浦町の畑から、介護助手の女性(発見当時40)の遺体が見つかった。
CBC
2024年2月29日、名古屋地裁で開かれた初公判で、天池被告はこの監禁・窃盗事件について起訴内容を認めた。
CBC
その後の裁判で、検察側は天池被告に殺人・死体遺棄の罪とあわせて、懲役18年を求刑した。「男女2人がかりで、Aさん(被害女性)を約33時間の長時間にわたって車内等で監禁しており、Aさんの身体的自由に対する侵害の程度は大きく、Aさんに与えた苦痛や恐怖も大きい。監禁の始まりは、被告人がAさんの髪の毛を引っ張ったり、折りたたみナイフを突きつけるなど強い恐怖心を与える行為であった上、監禁中は、Aさんを結束バンドで縛ったり、ガムテープで口をふさぐという直接的に自由を奪うこともしており、犯行態様は悪質である。窃盗事件も、被害額は2万円と少なくない上、財産的な被害回復すら行われて折らず、軽視できない。Aさんは何ら落ち度なく被害に遭ったにもかかわらず、何らの弁償も行われていない。強い処罰感情を持っており、考慮されるべきである」(論告要旨より)
一方、弁護側は監禁・窃盗事件について、「被告人(天池被告)はAさんに対して強い恨みを抱いていたわけではなかった。被告人は山下の命令に従う従属的な地位で犯行に加担した。その後、山下はAさんを殺害するつもりであると被告人に連絡し、その意図を持たなかった被告人は驚いた。結果的にAさんの行方を見失って被告人はほっとした気持ちとなった」(弁論要旨より)と述べた。
CBC
名古屋地裁は3月15日、天池被告に懲役16年の判決を言い渡した。監禁・窃盗事件については以下の通り。「被告人は、A(被害女性)に対し、髪の毛を引っ張り、ナイフを突きつけ、結束バンドで腕を縛るなど、率先して暴行を加えており、殺人と比較しても、より主体的に犯行に関与している。これらの暴行のほか、口をガムテープでふさぎ、頭に布をかぶせるなどし、1日を超える長時間自動車内に監禁するという態様は、Aに多大な恐怖を与える悪質なものである。Aは、監禁されるいわれはないのに、いまだに事件を思い出して恐怖を感じており、結果は重い。加えて、被告人は、単独で、Aの財布から2万円を盗んでおり、この点も被告人に対する非難を強めている」(判決要旨より)

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