頼もしき男が戻ってきた。3月5日のベイスターズ戦(横浜)、初回の守備で左足を痛めたことで戦線を離脱していた藤岡裕大内野手が3月17日のイーグルス戦(ZOZOマリンスタジアム)から1軍のゲームに復帰した。一時は開幕戦出場が危ぶまれていた中で、燃える男は驚異の回復力で完璧な状態に戻した。
「最初は肉離れかなと思ったので、それよりは軽くて良かったかなとは思っています。だから切り替えて治すことに専念しました。自分の中で開幕は無理とかという思いは全くなかった。開幕から何としても出る気持ちを一貫して持っていた。全試合にスタメンで出る。そういう気持ちで身体を動かしていました」と藤岡はチームの全体練習を離れ黙々とリハビリに専念していた時の心境を振り返った。
想えば昨年、バファローズに敗れシーズンが終わった直後、誰よりも悔しさを表に出していたのは藤岡だった。ホテルに戻って仲間たちと食事をしていた時、何度も「勝ちたかった」と語気を強めた。その時、同じテーブルにいた選手は「何としても勝ちたかった。悔しいとずっとずっと話をしていた」と思い返す。
「マリーンズは勝ちきれていない。勝ちきれないシーズンが続いている。今年は何としても勝ちきりたい。そのために自分がプレー、姿勢でチームを引っ張らないといけないという思いがある。これまでいろいろな人に引っ張ってもらっていたけど、もう自分も率先してやらないといけない年齢であり立場。セカンドにコンバートとなって守備でも頑張って、引っ張っていきたい。強い気持ちでシーズンに入ります」と言葉を強める。
グラウンド内外でチームを引っ張る存在となるためにもプロ1年目以来となる全試合出場を目標の一つに掲げる。試合に出てチームを引っ張る。勝利に貢献する。優勝に向かってチームをけん引する。熱き大志を胸に抱き、プレーを続けていく。
「ずっと試合に出る。全試合に出たい。1年目以来、それができていないこともあるので、試合に出続けることが大事だと思っています。試合に出ることで見えてくるものがある。手に入れられるものもある。今年はそんな一年にしたいです」(藤岡)
昨年、勝てばクライマックスシリーズファイナルステージ出場となる千葉で行われたファーストステージ第3戦の大一番で3点ビハインドの延長十回に劇的な同点3ランを放ち「幕張の奇跡」と語られることになる伝説の試合のヒーローとなった。あの日、藤岡は2万9050人の大観衆の歓声を一身に浴びた。ダイヤモンドを一周しながら鳥肌が立った。興奮のるつぼと化した本拠地のスタンドを目にした。
「ここで優勝を決めたら、どうなるのだろう? どんな光景が見れるのだろうと考えました」。藤岡は想い、マリーンズの選手たちは誰もが同じことを考えた。あれから月日はたち、新たなシーズンがまもなく幕を開ける。きっとさまざまなドラマが待っている。そして最後に、まだ見たことのない歓喜の瞬間がある。目指す頂に到達するために背番号「7」はグラウンドに立ち続ける。