[社説]「合理的配慮」義務化 インクルーシブ社会を

障がい者との対話が鍵となろう。バリアフリーなまちづくりへ、改正法の趣旨を生かす取り組みが必要だ。
改正障害者差別解消法が来月から施行される。これまで国や自治体に義務付けていた「合理的配慮」を民間事業者へも適用拡大する。
合理的配慮とは、障がい者にほかの人と平等な機会を保障できるよう、本人の意向を尊重しながら可能な範囲で環境を整えること。
2016年施行の障害者差別解消法では公的機関に義務付ける一方、民間は努力義務にとどまっていた。
改正法は21年5月に成立。この間、関係省庁は所管する事業分野ごとに対応指針を公表したり、事業者や障がい者からの相談を受け付ける「つなぐ窓口」を開設したりして準備してきた。
例えば車いす利用者の移動サポートや、聴覚障がい者と筆談でやりとりすることなどだ。
事業者側は障壁を取り除く対応を要望された場合、過重な負担にならない範囲で対応し、「特別扱いはできない」など一律に拒むようなことがあってはならない。
障がいの特性に応じて、また、時と場合によっても何が合理的配慮に相当するかは異なってくるだろう。正解はなく、建設的な対話で互いの合意点を探る姿勢が重要だ。
障がい者にとっては「こんな手助けがあればいい」との考えを伝える機会になる。まずはそうした意見に耳を傾けることから始めたい。
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地域ではすでにさまざまな取り組みが始まっている。
南風原小学校は来月から、特別支援学校からの転校を願い出ていた校区外の児童を受け入れる。
校区内の通学路はバリアー(障壁)があり、車いすでの通学が難しかった。教育委員会とやりとりを重ねた結果、自宅から近い同小へ通えることになったのだ。
合理的配慮に基づく判断が障がいの有無など違いを超えて子どもたちが共に学ぶ「インクルーシブ」な教育の実現を後押しした。
成功や失敗事例の検証を重ね、多様なニーズに対応できる柔軟な社会へ一歩ずつ前に進みたい。
一方、不動産情報サイトを展開する「LIFULL(ライフル)」(東京)が今年2月、不動産業務に関わる約350人を対象に実施した調査では、民間への合理的配慮の義務化を「知らない」と答えたのは48・6%に上った。
改正法の趣旨が浸透しているとは言い難い。
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来月1日は、障がいを理由とする差別の禁止などを盛り込んだ「県障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例」(共生社会条例)が施行されて10年の節目を迎える。
那覇市の国際通りではNPO法人県自立生活センター・イルカなどでつくる実行委員会が主催する記念パレードが行われる予定だ。
誰もが生きやすい社会を実現するため、私やあなたには何ができるのか-。しっかりと考え、実行に移す契機としたい。

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