[社説]元通訳に違法賭博疑惑 大谷選手は自ら説明を

思わず声を上げて叫んでしまうほどの衝撃的なニュースだった。余波は収まらず、その影響はさまざまな分野に広がっている。
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の通訳を務めた水原一平氏に違法賭博に関与した疑いが浮上した。
ドジャースは問題が表面化した直後に水原氏を解雇。米大リーグ機構(MLB)は「この件の調査手続きを正式に開始した」と発表した。
2人の間に一体、何が起きたのか。
水原氏が関わったとされるブックメーカー(賭け屋)が拠点を置くカリフォルニア州では、スポーツ賭博が禁止されている。MLBの規定では「違法なブックメーカーと賭けをした選手や審判員らは処分の対象となる」と定められている。
水原氏は賭博にはまり、多額の借金をつくった。
スポーツ専門局のESPNによると、水原氏の借金を穴埋めするため、大谷選手の口座から少なくとも450万ドル(約6億8千万円)が賭け屋の口座に送金されていた。
水原氏は当初、ESPNの取材に対し、借金返済の依頼を受けた大谷選手が自らパソコンにログインし、業者に送金したと答えていた。
これに対し、大谷選手の代理人は、大谷選手のことを「巨額な窃盗の被害者だ」とする声明を発表。同じ日に水原氏も「大谷選手は何も知らない」と前言を翻した。
結果として水原氏の前言撤回が臆測を呼び、問題を複雑にした。その意味でも水原氏の罪は二重に重い。
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大谷選手は事態をどこまで把握していたのだろうか。水原氏の「前言」が事実だとすれば、違法な業者への送金が犯罪企業のほう助とみなされる可能性があるという。
大谷選手が全く何も知らなかったとすれば、「なぜ水原氏が銀行口座にアクセスできたのか」という疑問が浮上する。
ドジャースは24日(日本時間25日)から、本拠地のロサンゼルスで古巣エンゼルスとのオープン戦に臨む。
だが大谷選手の通訳を務めただけでなく練習をサポートし、生活面でのアドバイスにも応じるなど、大谷選手をさまざまな形で支えてきた「相棒」の水原氏は、もういない。
大谷選手のメンタル面に与える影響が心配だ。
日米の子どもたちにとって大谷選手は、野球選手というレベルを超えた「理想像」になっている。賭博絡みの巨額スキャンダルは、まったくふさわしくない。
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違法賭博疑惑は、その額の大きさからして庶民の生活感覚をはるかに超えている。
だが球団も大谷氏もまだ正式な会見を開いていない。
正式な説明がなければ、ファンの懸念やモヤモヤは解消されないだろう。
22日付のロサンゼルス・タイムズ紙は記者のコラムで「沈黙は臆測を招く」とし、大谷選手に説明を求めた。
同感である。ロサンゼルス市民や日本のファンのためにも。何より子どもたちのためにもと言いたい。

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