飛行機の着陸時に使われるタイヤのついた脚は、飛行中ボディのなか格納されていますが、なかには、格納中のタイヤがむき出しの状態で飛ぶものも。背景には、その機種の“ならではの使われ方”が関係しています。
JAL(日本航空)グループで伊丹空港を拠点とする地域航空会社、J-AIRが公式X(旧Twitter)上で同社の機種のある特徴を紹介しています。使用するエンブラエル170・190の主脚格納部にドアがなく、上空では“主脚がむき出しの状態”になっていることです。これはなぜなのでしょうか。
「あの飛行機、タイヤがむき出し…」一体なぜ? 普通はあるカバ…の画像はこちら >>「タイヤむき出し」で飛ぶJ-AIR機(画像:同社公式Xより)。
現代の旅客機の多くは、主脚を格納する部分にドアがあり、上空ではそれを閉じていることが一般的です。これには、主脚を保護するだけでなく、巡航中の空気抵抗を減らすなどのメリットもあるでしょう。
にもかかわらず、エンブラエル170・190の主客格納部にはドアがなく、「タイヤむき出し」で空を飛んでいるのです。
同社はその後、答えを発表。正解は「主脚のブレーキを冷却するため」だそうです。
旅客機の離着陸時、主脚に大きな摩擦熱が発生しており、ブレーキを作動させることで生じる熱は摂氏300度ともいわれています。そのため、空港にはブレーキ・クーリング・カートというディスク・ブレーキ冷却用のカートがあり、駐機中に取り付けて廃熱する場面も見られます。
その一方、水平飛行中の外気はマイナス50度になることもあります。J-AIRは、「頻繁に離着陸し次便までの時間も短いため、ギア(ブレーキ)を効率良く冷却するには上空がベスト」と投稿しています。
J-AIRが保有するエンブラエル170・190は100席以下の座席数で、地方間の短距離フライトをおもに担当する「リージョナルジェット」というもの。その運用上、国際線用の300席級の機体のように、長い便間の時間(ターンアラウンドタイム)を確保できるわけでありません。限られた短い時間に効率よく冷却を図るべく、飛行中の外気を「天然のクーラー」として使っているというわけです。
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「タイヤむき出し」で飛ぶボーイング737-700。写真はAIRDO機(乗りものニュース編集部撮影)。
また、この構造は重量の削減にも役立ちます。ドアや関連する装置を取り払えれば、そのぶん機体が軽くなります。そして軽いほど離陸滑走距離が短くて済み、滑走路が短い地方空港にも就航できます。
なお、エンブラエル170・190といった「リージョナルジェット」のほかに、日本の航空会社も多く導入する150席級旅客機、ボーイング737でも、「むき出し構造」の主脚が採用されています。こちらも、おもな用途は便間が短い国内線です。