「インフラが未整備だからなんとかなった」 災害時 水に困らないのは“山間部の集落”? 水は「井戸水」と「湧き水」で

大きな災害では避けられない水道の断水。しかし、孤立が心配される山間部の集落が実は水に困らない現実がありました。自前の水源をどう確保するか。これも大きな課題です。
(大石邦彦アンカーマン)「なにやらこちらで作業していますよ。今、何をしているんでしょう?」(イドセン・安田富雄さん)「井戸掘りですね」
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名古屋の住宅街。庭に穴を掘る工事が行われていました。実は今、こうして自宅に「井戸」を掘る人が増えているといいます。
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(イドセン・安田富雄さん)「能登の地震があってから毎日のように1日に2、3件問い合わせがある。一般家庭の井戸専門でやっているのは、愛知で僕くらいかな」
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能登半島地震が起きた1月以降、急に希望者が増えているという「井戸掘り」。こちらのお宅では…(施主・廣瀬順造さん)「能登半島地震を見て、これは井戸を掘っておいた方が将来のためになると思った。南海トラフ巨大地震があるかもしれないから」
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(大石アンカーマン)「温かい!何これ? 地中にあった水だから温かいんですか?」(イドセン・安田富雄さん)「(井戸水は)1年間同じ温度。冬に触ると温かい。夏に触ると冷たい」住民の頭にあるのは、近い将来起きるとされる「南海トラフ巨大地震」です。
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能登半島地震でも広範囲で上下水道が損傷。飲み水にも、トイレにも困ることに。石川県能登町の避難所には、水洗のトイレトレーラーが全国から集められ、生活を何とか支えていました。
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しかし、被災地では水に困らない集落も…石川県輪島市の山あいにある、三井町です。
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ここでは地区の住民が、昼間は倉庫で過ごし、夜はそれぞれ車中泊などをして避難生活を送っています。(大石アンカーマン)「顔の見える人が揃っているというのは、違うんでしょうか」(住民)「安心感がある。同じ思いをした人たちが近くにいて心強い」
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彼らが避難所へ行かない大きな理由は…「水」。地区のまとめ役で、市議会議員の門前さんの自宅へ行くと…
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(大石アンカーマン)「水は出ますか?」(門前徹 輪島市議)「水は出ます。普通に出ます」門前さんの家では昔から「井戸水」を使っていて、地震直後からこの水を集落のみんなで共有していました。燃料はプロパンガスのため困らず、しばらくして電気が復旧するとみんなで風呂にも入っていました。
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(大石アンカーマン)「ここに村民の皆さん80人が?」(門前徹 輪島市議)「のべ人数で80人。1日に10人以上(風呂に)入れていました」
さらに…家の脇には山からの湧き水があり、これを汲んで集会所のトイレを流すのに使っていました。
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この地区は、排水を地中に埋まっている合併処理浄化槽に流すため、下水管の損傷も関係なく水洗トイレが使えていたのです。
(門前徹 輪島市議)「ありがたいことに凍結さえしなければ使えたので、トイレ環境は、よその避難所のように地獄ではなかった」
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孤立しがちな山あいの集落が、実は水に困っていなかった現実。
(門前徹 輪島市議)「田舎でインフラが未整備な分、なんとかなった」(大石アンカーマン)「都市化されていたら、もしかしたらダメだったかもしれない。中山間地のいいところでもあるのかもしれないですね」
東海地方にも同じような地域がありました。愛知県の山あいにある設楽町。そのさらに奥地、裏谷地区では…
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(大石アンカーマン)「川が流れている。小鳥のさえずりも聞こえる」集落は7世帯24人。ここでも水はすべて井戸水と山の湧き水でまかなっています。(裏谷区長・工藤友彦さん)「もともとが水道ではない。井戸ですが(電動ポンプの)電気が止まった場合は井戸が止まるので、もしもダメな場合は川の水を使う」
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(大石アンカーマン)(川の水を飲んで)「おいしい! 孤立しても水で困ることはない?」(裏谷区長・工藤友彦さん)「まず、ないです」
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トイレも合併処理浄化槽で、下水道とは関係なし。上下水道で全世帯が一本化され、災害で全面ストップの恐れがある都会と違い、完全に独立して水を利用できる暮らしです。
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さらに食料も…(大石アンカーマン)「畑がありますね」(裏谷区長・工藤友彦さん)「今はまだ寒い時期だが、これからはキャベツやトマト、春先になれば山菜が出るので、ワラビとかタラの芽など、そういうものを取り集めたりもできる」(大石アンカーマン)「山菜も…食材は外にあるんですね」
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(大石アンカーマン)(地図を見ながら)「『土砂災害防災マップ』これを見ると、がけ崩れ、土石流、地すべりのリスクがありますよ、ということなんですね」
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(裏谷区長・工藤友彦さん)「そのときは(集落にある)ショベルカ―でかき出して、道を広げて、車が通れるようにする」
孤立することを過度に恐れず、常にその時を想定して集落全体で乗り切ることを考えています。
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(裏谷区長・工藤友彦さん)「集落の人たちとつながっているから強みがある。助けあえるから助かる。そこから切り抜けていけるという考えで用意をしています」
(イドセン・安田富雄さん)「こんな感じですね」(大石アンカーマン)「出来上がりました!」
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自宅の庭に井戸を掘っていた名古屋市昭和区の住宅。この日は、家族みんな集まって井戸の完成を見守りました。(大石アンカーマン)「(水が)出た出た!」
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(家族)「すごくうれしいです。トイレを流せる、洗い物もできる。人間食べなくても一週間水があれば生きていけるといいますし」
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飲むことはできませんが、いざという時の水源となります。(施主 廣瀬順造さん)「この地区の人がくみに来られるようにと(掘った)。今回の能登半島地震を見て、誰かがこういうことをやらないと、と思った」(大石アンカーマン)「自助だけでなく、共助」(施主 廣瀬順造さん)「共助も考えた」
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何より大切な「水」。上水道が張り巡らされた都会でもいざという時への備えが静かに広がっています。2024年3月11日放送 CBCテレビ「チャント!」より

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