能登半島地震の被災地では、発災から2か月以上がたった今も断水が続いています。南海トラフが起きた際、人口230万人を抱える名古屋は大丈夫なのか。名古屋市の水対策、その最前線を取材しました。生きるのに欠かせない「水」。能登の震災は、上下水道に頼っている生活がたやすく危機的状況に陥ることを物語っています。
南海トラフ巨大地震 “断水は確実に起きる” 最低でも1人1…の画像はこちら >>
(名古屋市民)「水(が心配)ですよね。このエリアでも(断水が)起きたら大変」「子どももいるので、他人事ではない。名古屋市はちゃんと(対策)してくれているか心配になった」
名古屋市守山区。ここでは、ある重要な工事が行われています。(名古屋市上下水道局・柴田泰臣さん)「川から浄水場へ向かう、導水管の耐震化の工事を行っている。外側にある管が古い管。その中に新しい管を敷設する」木曽川の水を名古屋まで運ぶ「導水管」。その取り換え作業です。
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約100年前に敷設された古い管の中に、大きな地震にも耐えられる最新の管を入れて交換していきます。能登の被災地では、川の水を浄水場まで引く「導水管」、浄水場と水をためておく配水池をつなぐ「送水管」、そこから各家庭に水を運ぶ「配水本管」、こうした重要な水道管が多く破損したことで復旧に時間がかかっているのです。
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石川県珠洲市では、破損個所を探す手間を省くために仮設の管を地上に設置する作業が行われていますが、今もほぼ全域で断水が続いています。主要な水道管の耐震率を見ると、石川県は36.8%。全国平均(41.2%)を大きく下回るのに対し、名古屋市は79.9%。全国でもトップレベルです。
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また、いざというときに備えて、こうした主要な水道管や水道施設を複数化することにも力を入れています。木曽川から水を取り入れる取水口は犬山市と一宮市にある2か所。浄水場は春日井、大治、千種区の3か所。ここを複数の水道管で結んでいて、災害でどこかに損傷が起きても市内全域に水を供給できるようになっています。
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そして、家庭に水を送る「配水管」についても名古屋ならではの取り組みが。(名古屋市上下水道局・岡本三典さん)「どこの管を耐震化していくか、経済的にも時間的にもかかる。一気には工事できないので、優先順位をつけている」名古屋市の地中に張り巡らされた配水管をすべてつなげると、実に約8400キロ。名古屋からアメリカのサンフランシスコまで届く距離です。このすべての耐震化にはまだ30年以上かかる見込みですが、病院や避難所となる小中学校など災害時、水が必要になる施設への配水管については今年度中に耐震化を終える予定です。
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耐震化に使われるのが「ダクタイル鉄管」というもの。管自体が頑丈なうえ接続部分がある程度動くため揺れにも強く、過去震度7の地震でも被害はありませんでした。
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しかし、今回の能登半島地震では、輪島市内2か所で耐震管が外れているのが確認されたのです。
「耐震管は被害がでない」という“地震対策の大前提を揺るがす事態”に専門家は。
(金沢大学・宮島昌克名誉教授)「耐震管は、震度7の地震動で被害がないと言っても万能ではない。非常に大きな斜面崩壊で道路・管路ごと流された。限界を超えていたのだろう」名古屋市は、南海トラフ巨大地震の発災直後、市内の約3割にあたる35万7000世帯で断水が起こると想定していますが、これも耐震管は「被害ゼロ」という前提の数字。もし耐震管が破損すれば、その数はさらに膨れ上がることになります。(金沢大学・宮島昌克名誉教授)「想定通りに地震は起こってくれない。あまり想定に頼るのではなく、最低限の備えはどこでもしておくべき。名古屋市は準備周到に(地震対策を)行っているが、断水は確実に起きます」
最も大事なのが「飲み水」の備蓄。
名古屋市は最低でも1人あたり1日3リットルを3日分、計9リットルの飲料水を備蓄するよう呼びかけています。
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(名古屋市上下水道局・浦部高広さん)「まずは“自助”というところで自分や家族、親族などの命が守られるように備えておくことが一番大事」この地方でも必ず起きる大地震。そして、必ず起きる断水。行政の対策には限界がある中、まずは一人一人が備えるしかありません。
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