訪問看護師の現実と展望とは?職場環境改善が鍵になる

訪問看護師は高齢化社会において重要な役割を果たしているにもかかわらず、業務の過酷さや人手不足、教育体制の不備など解決すべき問題が存在しています。
訪問看護師は、高齢者や重症度、医療依存度の高い患者の訪問看護に携わることが多く、これが身体的負担となっています。特に、在宅での看護では、入浴介助や体位変換など、身体的に負担の大きい作業を1人で行う場合が少なくありません。
さらに、オンコール当番制度により、夜間や休日に急な呼び出しに応じる必要があることも、身体的負担の一因となっています。中には代休が保障されていない事業所もあり、このような労働環境は訪問看護師の身体的疲労を増大させる原因となっています。
訪問看護師は一日に訪問する患者の数が多いほど、移動距離も多くなります。地域によっては公共交通機関の利用が困難で、自動車での移動が必須となる場合もありますが、駐車場の確保や交通渋滞など、移動に関わるストレスも無視できません。また、看取り対応や専門知識が求められる状況に直面した際、身体的な負担だけでなく、精神的な負担にもなるでしょう。
訪問看護師の現実と展望とは?職場環境改善が鍵になるの画像はこちら >>このような状況に事業所側が対処するには、訪問件数の適正化、オンコール体制の見直し、適切な休息の確保、移動手段の改善など、身体的負担を軽減するための具体的な対策が求められます。
訪問看護師がオンコール勤務を行う際の実態には、多様な側面があります。オンコール勤務は訪問看護ステーションによって異なるものの、一般的には月に4~8回程度担当することが多いです。
緊急訪問の際には、様々な状況に対応する必要があり、例えば膀胱留置カテーテルの入れ替えや、夜間に転倒してしまった利用者さんの対応などが挙げられます。これらの対応には、利用者さんの安全を確保し、迅速かつ適切な医療措置を施すための専門知識と技術が必要とされます。
オンコール勤務の体力的な負担や心理的な負担があることから、多くの職場ではオンコール手当が支給され、緊急時には時間数に応じた割増賃金が支払われます。ただし、オンコール勤務は所定労働時間には含まれないため、その有無や手当の支給については、転職を検討する際に事前に確認しておくことが重要です。
訪問看護師は、医師の指示に従い、患者の自宅を訪問して看護サービスを提供する役割を担っています。患者の自宅での生活を支援し、その人らしい生活を送ることができるように援助します。
これには、患者の健康状態の観察、医療処置、薬の管理、家族への教育や相談などが含まれます。訪問看護師は多くの場合、1人で患者の自宅に訪問し、主治医からの指示に基づいて看護を行うため、自律した判断力や、事前に医師の指示を仰いでおくなどの先読みする力が求められます。
他職種との連携も訪問看護師の重要な業務の一つ。例えば、ケアマネジャーや訪問介護員との協働があります。看護師はケアマネジャーが立てたケアプランに沿って看護サービスを提供し、訪問介護員は日常生活の支援を主に行います。医療行為に重点を置いたケアは看護師の役目であるとともに、ケアマネジャーや訪問介護員に対して、患者の医療状態や看護の必要性についての情報を提供し、患者の総合的なケアを提供することも求められるのです。
また、訪問看護師は、単に医療行為を提供するだけではなく、患者やその家族が地域で安心して生活できるように支援する役割もあります。これには、他の医療・福祉の専門職との協働や、患者の生活環境や心理状態に対する配慮が含まれます。訪問看護師として働く上での精神的な負担も大きいため、自己管理と他職種との協力が不可欠です。
訪問看護の現場においては教育体制の不備に直面することも少なくありません。これは、訪問看護ステーションの急増によるものが大きいでしょう。急速な拡大によって、教育体制が追いつかない状況を生んでいます。
例えば、臨床経験が豊富な看護師であっても、訪問看護の特殊な環境や業務には戸惑うことが多いです。これが教育体制の不備をより一層際立たせることもあり、事業所によっては教育期間が十分ではない、あるいは一貫性がないことも問題視されるべきでしょう。
教育期間が短いために、看護師が自信を持って業務に就けない、または必要なスキルや知識が身についていないことは離職につながりかねません。事業所間での教育期間のばらつきは、訪問看護師が持つスキルの不均一化を招き、結果として患者へのケアの質に影響を与えかねないでしょう。教育体制の整備は、訪問看護師に必要な知識とスキルを提供し、業務の質を向上させるために不可欠です。
スキルや経験の不足も訪問看護師の働き方に大きく影響しています。訪問看護師の中には、自身のスキルや経験に対して不安を感じている人もいるでしょう。
この不安は、1人で訪問業務を開始するタイミングが早すぎるためである場合も多いです。初めての訪問で複雑なケアが求められた場合、十分な支援や指導がなければ、看護師にとっては大きな負担につながります。独り立ちをした後も、管理者や先輩看護師からのサポートが持続的に提供されることが事業所側には求められます。
訪問看護師の教育体制とスキル不足の問題に対する改善策として、事業所内でのサポート体制や教育体制の再検討が必要です。
例えば、新人訪問看護師に対する同行訪問を増やすことで、実際の業務を体験しながら学べる機会を提供することが効果的です。また、管理者や指導者による継続的な支援体制の構築も重要です。これにより、看護師は業務に必要な知識やスキルを段階的に習得し、自信を持って訪問看護業務を遂行できるようになります。
さらに、教育プログラムの標準化を図ることで、事業所間でのスキルの不均一化を解消し、看護師の質の向上を図ることができます。これらの取り組みは、訪問看護師のスキルとモチベーションの向上に繋がり、離職率の低下にも寄与するでしょう。
求職者側も教育体制をしっかりと確認してから入社することをおすすめします。
解決しなければならない課題はありますが、2025年問題として知られる超高齢社会の到来に伴い、在宅医療の需要はますます高まっています。体制整備が必要な面はあるものの、訪問看護師への需要もより一層増加していきます。
訪問看護師の需要増加に伴い、業界や政府もさまざまな対策を講じています。訪問看護ステーションの機能強化や専門性の高い看護師への評価向上が進められており、看護職員の適正配置や地域医療構想の推進も図られています。
また、新たな診療報酬改定を通じて訪問看護の評価を充実させる取り組みも行われており、訪問看護師の働きがいや報酬の面でも改善が見込まれます。これらの政策や取り組みは、訪問看護師が直面するさまざまな課題に対処し、より良い労働環境を提供することを目指しています。
訪問看護師の役割の重要性が高まる中、男性看護師の増加や職場の多様性の推進も進んでいます。これは、訪問看護の現場で新たな視点やアプローチをもたらし、在宅医療の質の向上に寄与するでしょう。
また、訪問看護師としてのキャリアパスや専門性の追求にも注目が集まっており、看護師自身が自分のキャリアを積極的に形成し、専門的な知識やスキルを深める機会が増えています。
身体的・精神的に負担となる部分はありますが、在宅医療を支える訪問看護師の仕事は非常にやりがいがあり、社会的な貢献度も高いです。さらなる需要の高まりも予想され、看護師にとって新たな機会を提供し、業界のさらなる発展を促していくでしょう。

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