「横流しされた腕時計を持ち主が取り戻すのは難しい」トケマッチ騒動を弁護士が解説

3月12日、警視庁が高級腕時計のシェアリングサービス「トケマッチ」の運営会社「ネオリバース」元社員の永田大輔容疑者(38)を業務上横領容疑で指名手配したと発表した。これは同社元代表の小湊敬済こと福原敬済容疑者(42)に続き2人目の指名手配となる。
福原容疑者と永田容疑者はともに同社が解散した1月末に出国し、アラブ首長国連邦のドバイに向かったと見られている。警視庁は国際手配の手続きを進める方針だ。
トケマッチは高級腕時計の持ち主と、それを借りたい人を仲介するサービスだが、突如解散を発表し、多数の腕時計が返却されないままとなっている。警視庁によると、トケマッチをめぐっては現在までに業務上横領などの疑いで33都道府県・173件の被害届を受理しているという。
「永田容疑者は顧客から預かったロレックスを都内の古物商に170万円で売却した疑いで警視庁に指名手配されました。被害者たちが結成したグループの調査によると、現時点で866本、金額にして18億円以上の腕時計が未返却だそうです。さらに、同調査ではサービス開始から1年ほどで、すでに顧客の時計がオークションサイトなどに売り出されていたといいます。昨年11月以降は腕時計を預かるだけ預かって、レンタルの実績はなかったそうですし、解散は計画的で詐欺だととられても仕方がないでしょう」(全国紙社会部記者)
商取引に詳しい弁護士は、横流しされた腕時計がオークションサイトなどで第三者に購入された場合、元の所有者が商品を取り戻すことは一般的には難しいと語る。
「第三者がオークションサイトなどで腕時計を購入した場合、それが盗品である可能性を当該第三者が認識していたといったような特別の事情がない限り、基本的にはその腕時計は当該第三者の所有物になります。このような場合、元の所有者が腕時計を取り戻すことは非常に難しいでしょう。腕時計のような動産は、転々流通性(不特定の人への譲渡が繰り返される性質)が高いため、新たに取引関係に入った第三者が法律上保護される傾向にあります。これは取引のたびに商品がどういう流通経路かを確認する必要がでてきてしまうと、円滑に取引が行われなくなるためです」
さらに、同弁護士によると今回のケースでは、腕時計が「盗品」扱いとならない可能性が高いこともポイントだという。
「盗品であれば、一定の要件を満たせば返還請求をすることができる場合があります。しかし、トケマッチの腕時計は盗まれたわけではなく、預けた所有者の意思に基づいてトケマッチに引き渡されているため、盗品には該当ないと解釈される可能性が高く、返還請求は難しいでしょう。そうすると、元の所有者としては運営会社やその役員等を訴え損害賠償を請求するしか手段はありません。もっとも、当該運営会社や役員等に十分な資産がない場合には、当該請求により被害が弁償できる可能性は低くなります」
被害規模の大きさが徐々に明らかになってきたトケマッチ騒動。預かった腕時計を無断で売却するという悪質な犯罪行為の早急な全容解明が求められている。

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