「男が泣いてはいけない」という風習はいつ根付いたのだろうか。「男らしさ」の強要がとがめられている現代でも、男性が人前で涙を見せることに抵抗を感じる人はいる。
本作「コットンテール」は亡き妻の遺言をかなえるべく、夫と息子家族がイギリスへ渡るストーリーだ。最愛の妻がいなくなり、ただ息をするために生きている。そんな空虚な様子に耐えきれなかった息子は、たびたび父親を責める。哀傷に暮れる父親はただでさえ苦しんでいるのに、と思うが、父親は一度も心情を口にしていないのだ。それどころか、涙ひとつ見せない父親への怒りも当然だ。
旅先で出会った人々を通し、己を開示する大切さを学んでいく父親。イギリスの美しい情景で父親の内面を演出する構成は見事であり、映画的に見るか、登場人物に感情移入して見るかで、感想が分かれるだろう。(スターシアターズ・玉城愛鈴)
◇シネマQで上映中【スターシアターズ・玉城愛鈴の映画コレ見た?】コットンテール…の画像はこちら >>